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古木の下で  作者: ひろ
3/6

羽瑠の呟き

                       ☆彡羽瑠の呟き☆彡


「ん・・・」

腕の中で、甘い吐息を吐きながら身じろぐ姿に目が醒める。

ゆっくりと覚醒する意識の中、腕の中の愛しい姿を確認した。

今日は土曜日で、俺も愛しいこいつも講義はなく、昨晩から甘い一時を楽しんでいた。

今でも信じられない。こいつが、四季が俺の恋人になってくれるなんて・・・。

2年間、それなりにモーションを掛けていたつもりだけれど、にぶちんの四季は一向に気づかなかったらしい。



出会ったのは、初めてのゼミ。

講堂の中、1人で座っていた四季を確認した時、息が止まるかと思った。

色素の薄い肌と髪、目鼻立ちもすっきりとしていて、周りにいる同級達も遠巻きに四季を見つめている。

1輪の花。まさにそんな感じで、凛とした佇まいなのに何処か可憐なその容姿に息を飲んだ。

そうして俺は四季の虜になってしまった。

彼が通学してくる時間を見計らい、声を掛ける。

四季は不審ながらも必ず挨拶を返してくれた。

そうして観察をしていた時、ある事に気付いたのだ。四季が何時も1人でいる事を。

1輪の花、という例えはどうやら大袈裟ではなくて、その容姿故に他人を遠ざけてしまうらしい。それから、この天然でとんちんかんな性格も災いしている。

明らかに四季狙いで話しかけている奴もそれなりにいたが、やっぱりにぶちんが災いしているらしく、相手の気持ちに気づいていない様子だった。


ある昼時だった。

四季を観察しだして3カ月がたっていたと思う。

相変わらず1人でいる四季に一学年上の先輩、もう名前など忘れてしまったがその人が声を掛け、四季を連れ出している所を発見したのだ。あまりにも不審な姿に、後をついていったのだ。

人通りの少ない学園の裏通りに2人はいた。

先輩が何かを言っているが四季の反応が無い。尚更不審に思い近付いてみると、どうやら先輩は凄く、それは物凄く怒っていたのだ。

「お前、いい加減にしろよ?!」

そんな言葉に、自分が言われている訳でもないのに驚いてしまう。

「なんとか言えよ!」

更に続けられた言葉に、四季は眉を顰めた。

「・・・あなたの言っている意味が解らないのですが」

眉は顰められたまま、憮然と告げた言葉に先輩は更に声を荒げる。

「俺と付き合ってくれって言ってるだろ?!」

・・・それ、怒鳴って言う言葉??

初めにそう思ってしまった。先輩は俺の方に背中を向けていた為その表情は見えないけれど、きっと真っ赤になりながらの言葉だったのだと思う。

しかし四季はやっぱり眉を顰めたまま、言い放ったのだ。

「ですから、僕は何処にも行きません。行きたい所があるのならお1人でどうぞ」

明らかに的外れな答え。後ろ姿にも関わらず、先輩が怒りに震えているのがわかった。

その手が拳を握るのが解り、あぁ、これはやばいな、と思ったのと体が動いたのはほぼ同時で・・・。

「四季!」

俺の声に驚いた先輩は一目散にその場を後にしたのだった。

急に目の前に現れた俺と、消えた先輩に驚いた四季だったけれど、一つ呼吸をし

「・・・なに?各務くん」

当たり前の様に返事をしたのだった。


その時俺は決意したのだ。この天然で危なっかしい四季を1人にしてはいけない。何があっても守るのだ、と。

あれから早2年。

何の進展もないまま過ごしていたけれど、四季の態度があまりにも何も無く、心配するのも迷惑だとあの日に言われた気がして、にぶちんだと知っていたのに伝わらない告白をしてしまったのだ。

即、ダメだとわかる反応で俺は逃げてしまった。1人で落ち込んで、考え過ぎた結果熱を出し・・・もう駄目だと思っていたけれど、その後の展開は本編に書いてあるとおりで・・・。

可憐な容姿とはかけ離れている性格の持ち主で、兎に角にぶちんな四季。

そんな四季が今、俺の腕の中で無防備な姿を晒してくれている。

信頼と、愛情。

両方を感じ、俺は1人でにやりとした。

「は、る?」

いつの間にか、うっすらと目を開けて俺を見つめる姿があった。

「あぁ、ごめん、起こした?」

そう言い形の良いその唇にキスを落とす。四季は戸惑いながらもその口づけに応えた。

「・・・ん・・・」

甘い吐息を吐く四季を目の当たりにし、もうたまらない。

静かに覆い被さると、軽く押し返された。

「そ、そうだ、羽瑠」

困ったような顔で反らそうとする。そんな四季もたまらなくて誤魔化されてやる事にした。

「ん?何?」

そう尋ねると、顔を赤らめながら俺を見た。

「あの、ずっと聞こうと思ってたんだけど・・・」

言いよどむ四季を辛抱強く待つ。

「・・・須藤くん、って、羽瑠の、何?」

その質問に絶句する。すっと視線を反らす四季に苦笑を覚えた。

「何って、どういう事?」

笑いを含んだ言葉に、眉間に皺を寄せながらも何かを思案しているような顔で俺を見る。

「あの日・・・彼が僕に向けた刃は明らかに敵意で、羽瑠の事、好きなんだなぁ~っていうのはわかったんだけど・・・」

あぁ、そうとったか、と苦笑が零れた。確かに秋葵の態度は誤解を招く要素がふんだんに鏤められていた気はする。しかし、それはまぁ、なんだ・・・。

「秋葵は、幼馴染なんだよ。可愛い弟分みたいなもんで、四季が思っているような感情はあいつにはないよ」

まだじと~っとした視線を投げかける四季に笑顔を向けた。

「俺は、これっぽっちも秋葵にやましい感情は、ない・・・あいつはまぁ、木崎・・・」

「え?何??」

語尾の消え入りそうな言葉に四季はクエスチョンマークを浮かべる。

人の恋路に興味はない、これは又別の物語ってことで、だから、笑顔を浮かべ誤魔化す事にした。

「そんな事より・・・」

さっき誤魔化された事、と耳打ちし、そうすると四季は首まで真っ赤になりうつむく。

そんな反応も可愛く、愛おしく、再び四季に覆いかぶさった。

俺が大学でどんな噂をされているかは、勿論知っている。

犬?

結構じゃないか。

俺としては、まぁ、番犬ってところかな?

自分の魅力に皆目思い至らない、愛しい恋人を守っていく、そんな番犬。

そんな事を思いながら、綺麗な桃色に変化した恋人の肌を堪能した。




                         END

羽瑠の呟き、いががでしたでしょうか?


やっぱり稚拙な文です。


すみません<m(__)m>


羽瑠と四季の物語はこれで終了ですが、本編でちらりと姿を現した秋葵ちゃんの話


が続きます。


そちらも是非読んで頂ければ幸いです・・・

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