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水色のベルと緑色のベル  作者: 朱井笑美


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《王女、元聖女カテリーナの手記と王国史抜粋》①

 私の父は真紅の髪に青い瞳のそれはそれは美しい男性だった。それ故に彼は非常に令嬢方の衆目を集めていた。

 しかも王太子という身分に、高位貴族の令嬢が常に彼の婚約者の座を激しく競い合っていたという。

 しかし彼はプライドも高い王子であった。妻には普通の女性を選びたくないと、当時、美しく賢いと評判であった東の隣国の王女を選んだ。


 二人の結婚は順調で、国王に即位した後も王妃との間に二人の王子に恵まれ誰が見ても順風満帆だと思われていた。

 しかし国王は年を経ても美貌が衰えるどころか三十路を手前に、益々、男盛りの魅力的な男性となっていた。それ故、王妃がいても寄ってくる女性は一向に減らなかった。


 王妃も負けじと出産後、美貌を磨き美しさを保っていたが、国王はとうとう王妃の目を盗み、浮気を繰り返していった。

 多少の摘み食いは仕方ないと王妃は目を瞑っていたが、彼の女遊びは止まず、女性達も競って彼の愛人になりたがった。


 そんな時、王妃は北の隣国の王子がとても美しいのだという評判を聞いた。

 淡い黄金の髪に透き通るような水色の瞳をした、麗しい王子なのだという。

 王妃は国王の即位10周年の記念の式典に彼を呼んでみようと手紙を送った。

 北の王子とのやり取りは、王妃の疲れた心を癒した。そして彼はそんな彼女を言葉巧みに自分に気を持たせるよう誘導した。


 式典で出会った二人は当然のように結ばれてしまった。王妃も夫の浮気に疲れ自暴自棄であったのかもしれない。そして王妃の浮気は彼女の妊娠で発覚した。

 すでに国王とは1年以上の関係が無かったからだ。しかし彼女は開き直った。

 彼が浮気しているのに、なぜ自分はダメなのか!どうせ国王にも2、3人の隠し子だっているのだろうと!


 国王は初めて高過ぎるプライドに傷を受けた。彼は子供ができないよう上手く遊んでいた為、隠し子などいなかったのに、王妃は別の男性の子を身籠ったのだ。彼は直ぐに離婚を決意し、王妃を国に帰そうとしたが、それこそが北の隣国の狙いであった。


 北の隣国の王子は自国の下にある両隣の国を仲違いさせ争わせることが目的だった。

 両国の間に亀裂を入れる訳にはいかないと、立ち上がったのは前国王だった。そして東の隣国の国王も同じ気持ちであり、二人の離婚を許さなかった。

 しかも世論は王妃に同情する形で動いていたのもあった。前国王は王妃のお腹の子供も自国の王族であると宣言し王妃との仲を回復させなければ、第一王子に国王の座を譲り渡すよう、満場一致で議会に承認させた。


 それは国王が産まれて初めて知る挫折だった。

 そうして産まれた王女は北の隣国の王子に似て、淡い金髪に水色の瞳のとても美しい王女だった。

 名前を前国王によってオリベルと名付けられた。

 そしてその後、一旦復縁した国王夫妻の元に産まれたのが私だった。


 父も母も復縁したものの、一度、破綻した仲が戻ることは無かった。謂わゆる私の誕生は国王夫妻の国内と諸外国に向けたパフォーマンスだったのだ。


 父も母も私と姉には一切の興味も愛情も示さなかった。しかし私と姉は二人、手を取り合って仲良く生きていった。

 兄二人も私達に同情し両親の代わりに可愛がってくれ、寂しいことなど何もなかった。

 姉は成長するにつれ、益々美しくなり絶世の美女などと言われるようになったが、その立場は複雑であった。


 この国の王女であるのに、この国の血を引いていないのだ。

 いくら美しくても王女として他国に嫁がせるわけにもいかず、国内の貴族と結婚するしかなかったが、真っ当な高位貴族は曰く付きの王女を娶ることに及び腰であった。

 そして私も姉と同じような立場と見られ、私まで腫れ物の王女扱いをされていた。


 そんな時、この国の筆頭侯爵家の当主が姉に結婚を申し込んだ。

 彼は姉をずっと前に見初めて以来、独身を貫いていた若者だった。

 彼の独身の理由がオリベル王女の成長を待っていた為だと知った社交界には激震が走った。

 しかし彼はそれをものともしないほど強固な権力を築いており、オリベル王女が嫁いでも揺るがないほどの家門だった。


 そうして姉は16歳で侯爵家に嫁いでいった。姉は侯爵に守られ、とても幸せそうだった。

 私は姉の幸せそうな姿に安堵し、自分はちょうど聖女の交代時期に遭い15歳で聖女候補となるため神殿に入った。

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