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水色のベルと緑色のベル  作者: 朱井笑美


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 彼女は一度、俺の実家の伯爵家に身を寄せ、安定期に入り医者からの許可を得て、隣国に渡る予定だ。

 驚いたことに俺の上司まで帰国してきていた。

 「彼女の親族にも説明しないとだろ?」と言って。

 俺は「お手数おかけします」と言って上司に全てお任せしておいた。


 噂に聞いたが俺の上司も子爵家の兄妹達を溺愛しているらしい。だからか俺の後始末のはずなのに、何故だかウキウキしている気がする。外交官殿のあんな姿、初めて見たかもしれない。

 だから俺は彼の大切な従姉妹を妊娠させたことに、最初は怒られるか殴られるか覚悟をしていたが、

 「僕、本気になって欲しいって言っていたよね?」と言われてしまった。それで良かったってこと?


 でもこれが“水色”なら違ったんだろうなと後に思った。水色は聖女様になっていた。しかも並みいる高位貴族令嬢を押し退けて侍女から聖女になったって訳が分からない。

 水色ってそんなに凄いのか?!

「マリィは生き神のようなお祖母様の秘蔵っ子だからね」って俺の妻は笑って言った。


 妻が臨月に入る頃、俺の上司が母国に本帰国を決めた。あ〜この国の令嬢達が王女殿下を筆頭に荒れるだろうな。

 俺は後任の外交官への引き継ぎと補佐の為に、まだしばらくはこの国に残る。妻はすっかりこの国にも慣れて領事館の侍従や侍女に言葉を習い、あっという間に適応していた。

「女性は強いな」と最初はそう思っていただけだったが、この時、俺は彼女の能力を見逃していたのだ。


 その後、新しい外交官は派遣されず、結婚し男爵位を賜わったお陰で俺が新しく外交官に任命される事になった。その忙しさのせいで臨月の彼女にあまり構うことができなかったが、俺の母が張り切って手伝いに来てくれ、彼女は無事に俺そっくりの男子を産んだ。

 母も俺もちょっと妖精2世の誕生を望んだのだが、期待はあっけなく裏切られた。

 まあまだ妻は17歳だ。これからも機会はある。5人は要らんがな。


 子育てに少し慣れた頃、彼女は外交官の妻としてできる事を学びたいと言ってきた。勉強は不得意だと聞いていたので、隣で笑っていれば良いくらいに思っていたが、まずは今いる隣国の言葉だけでなく歴史、文化、政治、王族や貴族のことなどを学んでもらったが、恐ろしいほどのスピードで記憶していった。つまり興味のある事には能力が凄く高いのだ。

 子爵令嬢以上の作法も身に付いていたし、美しいのに不思議と同性に嫌われない。そう言えば学院でも殿下や高位貴族の側にいたにも関わらず、令嬢の友達も多かった。


 ララベルは俺にとって思わぬ拾い物だったのかもしれない。

 それから彼女は俺の横で見事に外交官夫人としての力を発揮し始めた。

 お陰で俺の評価も上がる事になった。

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