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水色のベルと緑色のベル  作者: 朱井笑美


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 父の実家の公爵家は3人兄妹で、真ん中のマレシアナの母が公爵家を継いでいる。伯母の弟で私の父は侯爵家に婿入りし、父の兄は妹に代わって領地を管理していた。

 父は姉を女神様のように崇拝しているようで、常々自分の姉とマレシアナのことをよく褒めていた。

 私の母は元王女殿下の娘なのにだ。血筋で言えば私の方が良いはずなのだが、入婿の父はどうも実家の公爵家贔屓だった。


 公爵家の人々は紫色の瞳の人が多い。私の父もそうだが私にも弟にもそれは受け継がれず、うちは父以外、全員青色の瞳だ。

 母は「あの人以外、全員青色で良かったわ」と言った。ちなみに王家は青色の瞳が多くて髪は赤毛が多いが王太子殿下は王妃様そっくりの派手な金髪だ。

 母と父は完全に政略結婚だったので夫婦仲はわりと冷めている。だから本当は私が当て馬として殿下の婚約者候補になることは反対していたのだが、実は従姉妹が母にきちんと詫びを入れていた。

 「アイリーンは責任持って私が守りますから」と。

 母は公爵家はあまり好きではなさそうだったが、マレシアナのことは信頼しているようだった。

 「あの年であれはね〜。末恐ろしいわ」と言っていた。


 私の結婚が決まった時、母は飛び上がって喜んでくれた。母は彼の両親が最後に踊った王家の舞踏会に参加していたそうだ。

 今でもあれに勝るカップルは見たことがないと言う。王太子殿下と従姉妹のカップルもなかなかだと思うけどな。

 

 この結婚に父は「子爵だろう?」と苦々しい顔をしていたが、伯爵になると聞いて、渋々承知していた。しかも従姉妹の選んだ伴侶だと聞いて「それは間違いない。殿下のお気に入りの側近なんだってな」と手のひらを返して家族を呆れさせた。


 色々な思惑が重なって整った結婚だけど、従姉妹は母に言っていた通り、ちゃんと責任を果たしてくれたのだ。だから私も彼に対して責任を果たさないといけないだろう。まずは彼にちゃんと伝えないといけない。

 

 「私が望んだんです。私があなたを好きなんです」

アイリーンはハッキリと想いを伝えた。

彼は目を見開いて、そして真っ赤になって俯きながら、

 「ありがとう」って一言そう言った。


 感触は悪くない。これからどんどん距離を縮めていけばいいのだ。とりあえず次のデートの場所を決めよう。マレシアナに言っておかないと。“ちゃんと彼に私との時間を持たせるように”と。

 だって殿下は彼を常に側に置きたがるのだそうだ。殿下に嫉妬してしまうかもしれない。


 王太子とマレシアナは今年に入って直ぐ結婚式を挙げた。春まで待てば?という意見もあったそうだが、聖女の交代と重なるからという理由で早められた。

 もういつ結婚しても大丈夫な2人だったし早くすればいいのにって思っていたから早まって良かった。

 でも私が聖女の教育中だったから結婚式に参加できなかったのは残念だった。きっとソフィーナも思ったはずだ。

 

 従姉妹は「私が2人の結婚式に行くからいいのよ」と言ってくれたが、絶対どちらにも王太子が来ることが間違いないじゃないか!と気付いた。だって殿下にとっても大事な2人じゃない!


 ソフィーナは今年の夏に結婚すると言っていた。ビアンカ嬢は彼が戻ってきたばかりだし、家のゴタゴタを片付けてからだから来年の春辺りと言っていた。だったら自分は来年の夏辺りでいいかな?まだ彼も19歳だし自分も17歳だ。もう少し先でもと思ったが、周囲を見てやはり早い方がいいなと思った。

 なんせ婚約はしても敵が多過ぎる。彼に見惚れる侍女達の顔を見てアイリーンは溜息を吐いた。

 やっぱり彼は殿下の側で守ってもらおう。これ以上の番犬はいないだろう。


 そう決めたアイリーンの行動は早かった。結婚後の新居をどこにするか考えていた母を説き伏せ自分も王城に入ることにした。

 彼と同じ王太子宮だ。ただ自分はマレシアナの侍女としてだ。もちろん父は簡単に許してくれた。元聖女候補だったから試験もほぼ書類だけで決定したし、何よりマレシアナの従姉妹だし祖母は元王女だ。

 

 マレシアナは最初ビックリしていたが喜んでくれた。彼女はまだ発表はされていないが妊娠している。

 聖女教育で培った魔法がきっと役に立つだろう。これで彼に付く虫も見張れるし良いことばかりだ。


 アイリーンは「次はマリベルの番だね!」って、まだ8年後にしか訪れないだろう彼女の平凡な幸せを女神様に祈っておいた。


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