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水色のベルと緑色のベル  作者: 朱井笑美


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 ソフィーナの婚約が整ってから少し、妻が、

「あの子が知らない間に進めるのは気が咎めるけど、戻ってきた時に少しでも準備が進んでいた方がいいわよね」

と婚姻の準備をし始めた。

 婚姻の衣装は自分で決めたいだろうからと、夫婦の部屋や侯爵令息を迎える準備をしている。

 息子には「ソフィーナとその夫が公爵家を継ぐ」と伝えると、むしろどこか安心したのか少しずつ部屋から出てくるようになったが、まだどこか元気がない。

 

 以前の私なら息子を叱咤しただろうが後継の問題が解決したからだろうか、妻と一緒に静かに息子を見守ることにした。


 そんな冬のある日、婚約者の侯爵令息から挨拶に来ると連絡があった。手紙には「遅くなって申し訳ない」とあったが、どうせ狸が息子に知らせず先に進めたんだろうと思った。

 

 令息は王太子殿下の後ろにいるのを何度も見かけたが、侯爵にはあまり似ていないが殿下の後ろで何かないかと睨みを効かせ威圧を放っている姿がヤツそっくりだと思っていた。

 

 やはり、うちにも睨みを効かせて来るのだろうか?ヤツの息子だし。と少し緊張して待っていたが、やって来た男は低姿勢で第一声が「お義父さんって呼んでいいですか?」だった。


 妻が横で堪え切れず「フフッ」と小さく笑う。

 私も緊張が解けて「あっああ、よろしく頼むよ」と握手をしていた。

 それから結婚について少し話したが、残りはソフィーナが婚約者候補として王城に上がっていた頃の話になった。

 ソフィーナは最初は彼に対して兄と慕うように甘えていたのだという。それからも王太子殿下と接するよりも他の令嬢と親交を深めたり、彼と接することの方が多かったのだと聞いた。


 私達はソフィーナが優秀だったから、より厳しくし、ほとんど甘えさせてこなかったなと思った。

 だから甘えさせてくれる年上の存在に自然と憧れたのだろう。

妻が「あの子が帰って来たら一緒に謝りましょう?」と言った。

「そうだな」と私は応え、私達は夫婦で幼少の頃からソフィーナに可哀想なことをしたと反省した。


 令息が帰る前に、驚いたことに息子が自室から急に出てきて、

挨拶もそこそこ、「ライオット卿!ララベル嬢は元気だろうか?」と聞いてきた。

 私と妻は「今だに何という事を!」と蒼白になったが、令息は気にした様子はなく、「ああ元気にしているよ。隣国で結婚して夏を迎える前には母親になるだろう」と言った。

 

 息子は少し肩を落として、

「そうか彼女は幸せなんだな。それなら良かった…」と段々と声を小さくしながら言った。そこまで令嬢が好きだったのだろうか?と私が思っていると、令息は、

「ララベルには2人妹がいる。1人は聖女になるからダメだが、もう1人はララベルによく似た緑色のベルだ」と言った。


 息子は瞬時に顔を上げて「その妹君はどこに?」と聞いた。

「リリベルは子爵領に居るよ。まだ12歳だからな。会ってみたいなら叔父に連絡するが?」と言った。


 「ぜひ!ぜひお願いしたい。ライオット卿!」

 「君の恋路を応援する訳じゃないぞ、自分でリリベルに好かれてくるんだぞ」と令息は言った。

 「頑張るよ!今度こそ」息子は目をキラキラさせて奮起していた。

 私と妻は顔を見合わせて、どうしたものかと考えたが、先に妻が「いいんじゃないですか?あの子がやる気に戻ってくれたのだから」とそう言った。

 

 そうして息子は春になると同時に公爵家を出て、娘と入れ替わりで子爵領に行くことが決まった。

 よく先方が許してくれたなと思ったが、表向きは療養ということだ。

 場所は子爵領とは口が裂けても言えない。バレたら他の貴族から何と言われることか。

 

 私もちょっと羨ましいと思ってしまった。

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