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 神殿の正門は民衆に開放されているので、それ以外の用事は裏門に回る。私が乗った馬車もそこに到着し門番の兵士が身分証と用件を確認する。ちなみに神殿の建物を警護するのは兵士で、神殿の中や人物を警護するのが聖騎士なので表に聖騎士がいることはあまりない。


 私が聖女候補の侍女であることが判ると中に通され、担当の神官に説明を受ける。神官は女性でも侍女の仕事はしないので、聖女様が代わる度に侍女も採用される。神官は貴族出身であっても自分のことは自分でするのが当たり前の生活だ。しかし食事は食堂で出るので料理はしなくていいし、庭師や下働きの人達は別にいるので、最低限の身の回りのことと薬草園の手入れくらいだ。聖女の侍女も同じ。


 聖女様だけが複数の侍女がいて至れり尽くせりなのだが、それも当然のことだ。聖女様は聖女としての仕事に専念して頂かなくてはならない。私達が普通に生活できているのは全て聖女様と女神様のお陰なのだ。感謝しかない。


 侍女が複数なのは聖女様を24時間100%バックアップする体制のためだ。しかし侍女にも休みはあるし、きちんとシフトを回してくれるらしい。その代わり深夜、早朝勤務ありで聖女様に呼ばれたら直ぐに駆けつけるのだ。全く外界と遮断されるのかと思いきや、そんなことはなく休みの日の外出も認められるのだそうだ。ただし聖女候補の侍女である期間は、ほぼ無休で外出は制限される。頑張れ私。せめて相性の良い聖女候補の侍女になれるといいのだけど。


 侍女がどの聖女候補の担当になるのかは、なんとくじ引きなのだとか。不公平感も少ないからと説明を受けた。大体、侍女も聖女候補も今のところ誰が選ばれたのか分からないようになっている。建前上はね。

 でも侯爵家の情報ではもう数名は判っている。公爵令嬢が1名、侯爵令嬢が2名、その3名は確実らしい。あとは伯爵家だったかな。結局、権力なのかしらねーと思ったわ。まあ明日には全員揃うから判るのだけれど。


 昨日のうちに無事に全員揃ったようで聖女候補と侍女の顔合わせが始まった。聖女候補は情報通りの3名と伯爵令嬢2名と意外なことに子爵令嬢1名だった。全員高位貴族から選ばれると思っていたから、思わず聖女候補の子爵令嬢をマジマジと見つめてしまったら目が合った。令嬢は栗毛色の髪にヘイゼルの瞳の可愛い子で、マリベルにニッコリ笑ってくれた。わーとっても良い子そう。


 他の候補者達はさすが高位貴族だからか、お決まりの微笑を崩さないまま。うん、これは侍女になってみるまで全く分からないという感じだった。

 くじ引きの結果、私は子爵令嬢の担当侍女になった。とてもラッキー。神官様の案内で2人で部屋に移動する。この後は部屋の整理と昼食を挟んで今後の聖女教育の流れなどの説明があるのだとか。その間、私たちも侍女として聖女候補のスケジュールと仕事内容の説明を受ける。


 聖女候補の部屋の隣が私の部屋で、廊下に出なくても中からも移動ができるように内扉がある。聖女候補の部屋にはバスタブを備えた洗面所がありベッドルームと応接室のある作りで、私の部屋はベッドルームに小さな洗面所があるだけだ。侍女のお風呂は神殿の共同浴場を使うことになっている。簡易キッチンも共同であるが、これは聖女候補だけで使うもので、料理するというよりはお茶を用意する場所という感じだ。


 私は荷物整理をさっさと済ませて聖女候補の部屋を覗く。さすが子爵令嬢だ、すでに自分のことはできるようで、荷物も私より少し多いくらい。もう少しで彼女も終わりそうだった。それでも一応声は掛けておく。

「聖女候補様、私は終わりましたのでお手伝い致しましょうか?」

 令嬢は先程のようにニコッと笑って「もう終わるから。それより昼食までお話ししましょう」と誘って下さった。「でしたらお茶を淹れますね」と私は持参した湯沸かしポットに水を入れ魔法でお湯を沸かす。わざわざ共同キッチンに行かなくてもいいように。 

 砂糖やミルク等がまだ揃ってなかったので、今日は甘い香りのハーブティーを用意する。


 お茶がちょうど飲み頃になった時、令嬢は応接室に現れて私が入れた紅茶を飲んで一息つかれた。「お茶がとても美味しいわね、香りも良いし。そう言えばあなたも子爵家の出身だったわね。私達、同じ身分だし候補と侍女ではあるけれど友達のように接してくれると嬉しいわ」と気さくな感じで仰って下さった。


 お茶が美味しいのは侯爵家で茶葉もポットも持たせてくれたからですよ。と心の中で思いながら「では2人きりの時はお言葉に甘えます」と伝え、その後はお互いの自己紹介を少しした。子爵令嬢の名前はココット様と仰って、私と違ってかなりのお金持ちの令嬢だ。

 「成金なのよー」と言いながらも自分が選ばれたのは高位貴族だけでは民への心象が悪いのと、子爵家の多額の寄付金のせいじゃないかな、と笑って暴露された。はっきり言って彼女とは気が合いそうだ。

 

 私は幸先の良いスタートに早速、女神様に感謝した。

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