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マリベルは全てが終わって放心していた。まだ白い聖女のローブを着たまま佇んでいる。ローブは金の刺繍の縁取りと水色のレースがとてもオシャレで可愛い聖女の正装だ。
裾が引きずるほど長いので一人で歩きにくいのが難点だが、聖女の正装がこんなにオシャレで良いのだろうかと思ってしまう。
ちなみにこの衣装はマリベル専用だ。毎回、聖女が代わる度に正装も変わっているそうだ。
なんでも神殿の衣装の担当者に衣装の案が降りてくるのだから、気にするなと言われてしまった。それも神託って言っていいのかな?
それにしても、まだ歓声で耳でわんわんしている。
そもそも継承式までは良かったのだ。両親や兄妹、知り合いがいるのが見えたが緊張もなく、決められた儀式を無事に終えることができた。
しかし終わった後に広場でのお披露目のため、テラスに移動する時に来て下さったエスコートの聖騎士様がラント様だったのだ。
一瞬で、ラント様と別れた時に触れられた、おでこの感触を思い出して極度に緊張してしまった。うきゃ〜!!
「ほらっ皆!聖女様が固まっているうちに脱がすわよ」周りで侍女達が忙しそうに立ち回っていた。この後、王族に挨拶だって。
聖女のお披露目から翌日、子爵領に帰るという両親と兄妹に面会できた。ルト兄には昨日会えた。
「もう帰ってしまわれるのですか?」「お祖母様と爺様が心配だからな。会えて良かったよ。立派だった。これからも元気で。じゃあな」「……… 」「えー父もう帰っちゃうの?まだ王都で遊びたい」
「ほら早く行かないとリリの令嬢が剥げてきてるから」「そっそれはたいへんですねー」
「まあっマリベルも剥げてきているの?」「いえ、あなたがたのせいですよ」「姉ちゃん。さっきから棒読みー」ほんの10分ほどの面会だった。早えー。父達、領地が好き過ぎじゃない?
そして伯父が描かせた絵だと言って自分の肖像画をもらった。最近流行りの画家らしいけど抽象画だった。私こんなとこに、目、付いてないよね?
《オマケ》
俺達は昨日から揉めている。誰が新聖女様のエスコートをするのかでだ。まあ揉めていると言っても爺か俺かだが。しかし、なぜ、ここでライオットが名乗り出てんだよ!!お前は近衛だろ。それに結婚するんだろ!婚約者怒んないの?えっ?許しを得てるって!?そりゃソフィーナ嬢は反対しないだろうさ。
でもダメだから。ここ神殿だからね。神殿行事は聖騎士のテリトリーだからって「爺!ライオットにアカンベーはないぞ!品格だ品格!一体何年、いや何十年、聖騎士やってんだよ」
「あ、大神官様、えっあ、ああそうですか。入場は聖女様と。テラス移動と退場はラント様で決まりだって」
「泣くなよ爺、女神様のご希望だって。ってライオットも泣かないでよー!!」




