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水色のベルと緑色のベル  作者: 朱井笑美


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55

 夜が明ける前に侯爵邸に着いた。リリベルはまだ眠そうだが窓から侯爵邸を見て「わー黒い!」と言っている。リリベルは侯爵領の屋敷しか見てないから王都の屋敷は初めてだな。

 侯爵領の屋敷に比べ王都の屋敷は土地の関係で縦に高い。そして壁も屋根も黒いのだ。

 通称“腹黒屋敷”と呼ばれている。筆頭侯爵家になる前から建っている屋敷のはずだが、その頃から先祖は真っ黒だったのか?俺も少し寝起きの思考だったのかもしれない。

 久しぶりに見る変わらない屋敷にどうでもいいことを考えてしまった。


 馬車から降りると、まだ朝日も登っていないというのに長兄が出迎えてくれた。

「やあ。よく来たねベル達」兄はリリベルの頭を撫で、クララベルを軽く抱擁し、俺をきつく抱き締める。

「あははっ。相変わらず伯父様はお父様が大好きなんだから」リリベルが楽しそうに言う。

 その時「父上」と呼ばれる。ベルナルドだ。声変わりしている。それに背もずいぶん伸びた。瞳の色のせいで自分に似ていたかと思っていたがクララベルにも似てきたな。

 

 久しぶりの我が子の頼もしい成長ぶりに顔が綻ぶ。クララベルも「まあまあまあ!と言ってベルナルドを抱き締めて涙ぐんでいる」まだ2年ぐらいしか離れていないが、この時期の子供は成長が著しく激しい。もう10年近く会ってなかったような成長ぶりだ。


 「とりあえずベルナルド、父上達を客室に案内して差し上げろ。風呂を用意してあるから、湯に浸かって休むといい。朝食は少し遅めに用意するよ。ではまたな」と言って兄は去って行く。

 

 ベルナルドが「父上、案内します」と言って先を進む。

「あの父上…」ベルナルドが歩きながら何か言いにくそうにしている。「どうしたんだい?」息子の発言をゆっくり待つ。

 「実はこの屋敷の父上が使ってらした部屋を僕が今使っているんです」「そうか、構わないよ」

 

 息子は使用人として侯爵家に入ったはずだが大事にされているようだと嬉しくなる。


 聖女の継承式が始まる。開始時間までに参加者は全員席に着くかホールに入り切っていなければならない。

 式の厳かな雰囲気を守るために途中での入退室は禁止だ。

大神殿の大きなホールは人々で埋め尽くされている。外も人で一杯だ。式の後も広場でお披露目があるから、皆、ひと目、新聖女を見ようと集まっている。

 

 ここまで来るのも大変だった。入口は神殿の裏口を使うので大丈夫だったが、神殿までの道のりが人、人、人でどこまで行っても人の海だった。

 リリベルはこんなに大勢の人を見たことがなかったのだろう。もうずっと目を白黒させている。

 俺も初めてだ。多分、ここにいる人達もそうじゃないかな。

2時間前に侯爵家を出たのにギリギリだ。空いていたら馬車で30分の距離なのに。

 

 周囲を見渡すとかなり代替わりしているが、錚々たる面子だ。

ん?公爵家の席にライオットがいるぞ。外務大臣の侯爵家にはエリオット?兄のやつ、また勢力を拡げたのか。王家はよく許してくれるな。

 ベルトルトは今回は王太子の側に控えているのが見えた。

遠目だがベルトルトもしっかり成長が見られる。ララベルのせいで、一皮剥けたんだろう。

 大神殿の鐘が鳴り響き儀式が始まる。騒ついていたホールが一瞬で静まり返る。

 まず大神官達が入場してきて、その後ろを現聖女に手を引かれ新聖女が入場する。

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