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水色のベルと緑色のベル  作者: 朱井笑美


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 臨時の教師は20代前半くらいの伯爵家の次男で、淡い栗色の髪にアメジストの瞳の色気ある美男子だった。本職は外交官の補佐官らしいけど、外交関係の文官はソフトで見た目が良い人が多いらしい。

 彼は外国語の臨時教師ということだったが、下級生のダンスの授業やマナーの授業にも現れ、その甘いマスクとスマートな所作で、あっという間に女生徒達を虜にした。


 だからララベルとの接点を作るのもとても簡単だった。僕が何かをしなくても2人で過ごす時間が増えてきた。僕がすることは殿下の側近を2人に近付けないようにすることだけだった。

 

 ただ一つ不安がある。伯爵令息は妹を本気にさせた後、役目を終えた彼は妹を捨てて隣国に戻ってしまうのだろうか?それはそれで胸が痛む。きっと希望を胸に学院に入学してきた妹はショックを受けるだろう。いくら殿下や家を守る為とはいえ僕のことも恨むかもしれない。


 妹と臨時教師との仲が深まるにつれ、ご機嫌になっていく公爵令嬢の横で、僕が憂えた顔をしていたのだろう。令嬢が「妹と伯爵令息の今後が気になる?」と聞いてきた。

 僕は内心ギクっとした。覚悟を決めて妹を嵌めたはずだ。どうなるとしても今更どうすることもできない。僕は「いえ」と本心ではない返事をした。


 令嬢はフッと笑い「安心してもいいわ。彼は案外、妹さんのことに本気なようよ。私も、元々、殿下の側から排除できたらそれで良かったの。本当なら本人から自発的に離れて欲しかったけれど。私も残念な結末を望んでいるわけじゃあないわ」と仰った。

 僕は「ご配慮ありがとうございます」と言うだけで精一杯だった。


 殿下はここ最近、1年後に臣籍降下する王弟殿下の公務の引き継ぎが忙しく学院に来ていない。そのせいもあって僕は今、公爵令嬢と行動を共にしている。同じ企みを共有する仲だというのもあるが、令嬢の友人達からは「ベル君って私達の中にいても違和感ないのよね〜」が理由みたいだ。

 他の男性達からしても僕が令嬢達の中にいても“侍らせてる”とならないらしい。多分、男として見られてないんだな。でも令嬢の側にいる男は僕だけではない、騎士家の彼も今は令嬢の護衛として控えている。


 そんな中「ララベルが妊娠した」その一報を受けたのは令嬢のサロンでのことだ。しかも学院内で貧血を起こして発覚したのだ。これはもう僕としても放置できない。


 幸い公爵令嬢が直ぐに緘口令を敷いてくれた。僕は直ぐに学院の医務室に行こうとして止められた。

 ララベルはすでに学院から移送されていたからだ。

「子爵令嬢は伯爵令息の実家に移したわ。二人がそれを望んだの。残念だけど妹さんは学院を退学することになると思うわ」僕はそれを聞いて脱力した。

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