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水色のベルと緑色のベル  作者: 朱井笑美


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 聖女教育が始まって1年と半年が過ぎた。秋の中頃、王太子の婚約者から連絡が来た。筆頭侯爵家当主のベルオットはソフィーナの実家の公爵家を訪問していた。

応接室に通され公爵家当主と対面しているところであった。


 ソフィーナの父、公爵家当主はベルオットの訪問を苦々しく思った。ベルオットの方が爵位は下だが、年上だし何代にも渡って筆頭を名乗るだけある。そして何よりヤツは若い頃から食えない性格をしていて父も彼を毛嫌いしていた。お陰で公爵は彼のことが、かなり苦手だった。

 しかし侯爵ごときに負ける訳にはいかない。「何の用だ?」公爵は早く終わらせたくて単刀直入に聞く。


「お宅の令嬢のことだ。いや先に愚かな令息のことかな」ベルオットも勿体ぶるつもりはない。次の予定もあるのだ手短に終わらせないといけなかった。


 公爵家には息子と娘が1人ずついる。令嬢と言ったらソフィーナの事だろうが息子もか?公爵にとってソフィーナは息子よりも優秀で、王太子の婚約者の座を絶対に勝ち取らせたかった。

 そうすれば多少頼りない息子が跡を継いでも、ゆくゆくは王妃になる妹がいれば公爵家は安泰だと思ったのだ。

 それが王太子にはすでに好きな人がいるから、婚約者候補から降りたいと言い出したのだ。そんなこと絶対許せるはずがない。まだ頑張れるはずだ王太子の気を自分に向けろと叱咤し、できなければ他所の年寄りの王族に嫁がせるぞと脅した。妻もそれに同調した。


 もう1人の候補であった侯爵令嬢はすでに辞退したのだから、あと一歩のところだった。しかし無理だったのだろう婚約者は別の公爵令嬢に決まりそうだった。

 そんな時にソフィーナは「聖女になりたい」と言ってきたのだ。

なんとタイミングよく聖女の交代があると言うではないか。王妃でなくとも聖女でも十分だ。公爵は絶対に聖女にならなければ今度こそ許さないとソフィーナに言い聞かせた。


 その頃、息子は王太子殿下の側近として学院に通っていた。毎日順調そうで安心していたが、息子の侍従がどうも息子が最近浮かれていると言うのだ。それは一緒にいる殿下もそうで、どうやら今年の1学年に入学してきた新入生の中に飛び切り美しい令嬢がいるらしい。殿下もその令嬢を気に入り側に置いているそうだ。


 公爵は一瞬顔を顰めたが殿下も一緒であるなら、まだそんなに気にすることではないかと考えた。何より自分の娘を蹴落とした公爵令嬢がきっと嫉妬しているに違いないと。

 そちらの方が愉快だと思ったのだ。憎っくき生意気な公爵令嬢が!母親が王妃の親友でさえなければ!


 公爵は侍従に引き続き息子の動向を見張るよう指示し、特に問題視しなかった。息子が最高学年になり、ソフィーナは聖女候補として神殿に上がって1年になる。

 公爵はすでにソフィーナが聖女に決まったようなもんだろうと、ご機嫌で息子の事を気にかけていなかったが、息子はすでに美しい令嬢の虜になろうとしていた。

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