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「ご令嬢、これら全てが叶ったら、我が侯爵家は権力を持ち過ぎるのではないか?王家はそれを許せるのかな?」「侯爵様は先程、自分は権力に興味はないと仰せでしたが?それは行使することも入ると思っておりましたが」狸は裏で暗躍はすれども表立って権力に興味が無いのは本当のことだ。
「しかし息子達はどうか分からんぞ」「少なくともライオット卿は、私の知る彼は権力には全く興味が無さそうに思えます。三男様が姫君との関係に積極的でらっしゃらないのも、この国から出るおつもりがないのと、やはり権力にそう興味をお持ちでないのでは?」
侯爵家の者は能力はあるのに、ほどほどを好む。そういう一族なんだとマレシアナは思っている。でなければすでに筆頭公爵家、もしくは宰相になっているはずだ。
「ふむ。気に入ったぞご令嬢。良いだろう、力を貸そう。まあ聞くところ私はそんなに出番は無さそうだしな。もし全てが叶ったら見返りはともかく、令嬢あなたが王妃になった時、侯爵家は全面的にあなたを支持しよう」
とんでもない見返りをもらえるのはこっちの方だ!
マレシアナはこの国の裏を牛耳る最大権力者の協力だけではなく、王妃になった時の支持まで勝ち取ったのだ。俄然、成功させねばならないだろう。マレシアナは立ち上がり侯爵に最高の礼を取る。
侯爵は「久しぶりに愉快だった。ところでご令嬢、王女殿下の肖像画を観て帰らぬか?」と誘ってきた。侯爵家の王女殿下の肖像画とは、恐らく彼の祖母にあたる“絶世の美女”と謳われた姫君のことだろう。光栄なことだ。「ぜひ!」とマレシアナは快諾した。
侯爵家に嫁いだ姫君の肖像画はとても素晴らしい物だった。領地の本邸には、もっとたくさんあるのだそうだが、恐らく夫となった侯爵にも大変愛されていたのだろう。
マレシアナが感動の眼差しで絵を観ていると、侯爵が「私の名はこの姫から取られたのだよ。彼女の名はオリベル、私はベルオットだ。私が女性だったらオリベルだっただろう。令嬢もご存知だろうが、私の兄弟は全員男ばかりの5人でね、誰も“オリベル”をもらえなかったよ」と言って笑った。
そういえば姫君とベルオットの容姿は似ているかもしれない。年齢と性別の違いで気付かなかった。肖像画の中の姫君は少女のように若い。
「我が一族以外にも王女の名の一部を戴いた者を知っているかい?」マレシアナは一瞬考える。7代前の聖女様が王家の姫君だった。 彼女は任期を終えた後も結婚せず王家に戻り、確か離宮で暮らしていた。3年程前に亡くなられてマレシアナも葬儀に出た。その方はオリベル殿下の妹君だ。しかしお名前はカテリーナ様とおっしゃったはず。
そのカテリーナ様が哀れと思い庇護し、ご自身の離宮に招いたのが側妃様と第一王子殿下だ。
まさかカテリーナ様が第一王子殿下の名付け親だったか?




