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私は肝を据えて負けじと彼の冷たい水色の瞳を睨み、声を絞り出す。「侯爵様、私に力を貸して下さい」少しばかりの間があり「ふむ。見返りは何かな?」侯爵の目は私を小娘とバカにしていない。
私はその目に力を得て告げる「侯爵様に公爵と侯爵家、両家を差し上げます。更にあなたが愛する子爵家を伯爵家に陞爵させます」
侯爵はわずかに目を見開く。私からの見返りは彼にとって不足であったか?!侯爵は考える素振りを見せながら「私には別の侯爵家に婿入りした弟もいるし、これ以上権力には興味は無いが…」と呟く。
ダメだったか?!私は手を握り込む。私の計画は侯爵の協力無しには成し得ない。1人でやり遂げるには流石の私にも荷が大きい。
「しかし、ご令嬢の計画には興味がある。聞いてから決めてもいいかな?もちろん他言はしないと筆頭侯爵家の名にかけて誓おう。私に何をして欲しいのかな?」と侯爵はニヤリと口の端を上げる。
私はいつの間にか用意されたお茶に、ひとまず口をつけて背中の汗を引かせる。一体いつお茶が出されたのか?気付かないほど自分は緊張していたのだろう。しかし聞いて貰えるなら自信があった。
1つ目は現在1学年に在学している侯爵の姪ララベルをどうにかしたい。公爵家から余っている男爵位を提供する。だから彼女を穏便に殿下から遠避けるため、婿候補の伯爵令息次男の交渉の助力をお願いしたいと伝えた。
彼は公爵家の傘下の令息だが現在は隣国で侯爵家三男の補佐官をしている。伯爵家からはすでに手紙を送らせているが、侯爵の口添えがあったら、すぐさま帰国して来るだろう。
2つ目はソフィーナの為だ。まずはソフィーナの兄の公爵令息を排除したい。彼はそもそも能無しだ。今、ララベルに率先して傾倒しているのも彼だ。家の力で仕方なく王太子の側近になっているが、今後、王太子が国王になった際には邪魔になる。それを伯爵令息がこちらに来るまでの間、ララベルを使って罠に嵌め排除したいのだ。
問題は次だ。ソフィーナはライオットに恋をしている。ソフィーナと結婚してライオットに公爵家を継いで欲しい。自分と殿下の後ろ盾に公爵になったライオットとソフィーナがいるのは心強い。ライオットは殿下の覚えもめでたい。殿下が国王に即位した後には彼はいずれ近衛騎士団、団長になるだろう。
そのライオットが入婿なら問題は無いはずだが公爵はきっと自分に反発する。公爵への交渉をライオットの同意の後、侯爵様にお願いしたい。
ここで侯爵から質問が入る。「公爵令嬢は今、聖女に一番近い候補者では?」想定内の質問だ。マレシアナは鼻で笑う「本当に今、誰が一番近いのかはすでに侯爵様はご存知なのでは?」侯爵は「ふむ」と頷き「3つ目は?」と先を促してきた。
チッ狸が!と心で思うが、今はそれは重要ではない。マレシアナは気を取り直してプレゼンを再開する。




