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私と殿下が2学年に上がり新入生が入って来た。その中に王太子殿下が側近の高位貴族とは別に、お気に入りの美麗な子爵令息を常に側に置いていたが、その彼の妹も入学してきた。
妹も兄に似てとても美しく可憐で、殿下は直ぐに兄と共に側に置くようになっていった。殿下が初めて私以外、自分から側に置く女性で、私にとっても初めて脅威と感じる相手だった。子爵令嬢は兄と違って遠慮も思慮も浅い、ただの恋愛思考のお花畑令嬢だった。
油断ならないと感じた。たかが子爵令嬢だが。半年もすると彼女は殿下の側近の高位貴族の一部にも支持されるようになったのだ。これは早々に手を打たないといけないかもしれないと感じた。
しばらくタイミングを見計らっているうちに神殿に上がったソフィーナとアイリーンから連絡が入った。神殿も予期せぬ事態が起こっているらしい。
今はそれどころではないのだけれど。思わず2人に子爵令嬢の愚痴を送ってしまったわ。
私達が最終学年に上がる頃、何度かの神殿での事態の報告を受けて再度思案する……いや待て。神殿での事態は悪いことでは無い。むしろチャンスなのでは！？
私は関わる人物達を思い浮かべて、作りかけのパズルのようにピースを当てはめる。そして、これだ！と思い直ぐに行動を起こす。私の次代の王妃として能力を活かすところだ。
邪魔が入る可能性もある。決して表に知らせずに動いてみせなければと私は父を通して筆頭侯爵家当主に面会したい旨、早馬を出した。
筆頭侯爵家の王都の屋敷は、初めて訪れるが全体的に屋根も壁も黒く威圧感があり重々しい。筆頭侯爵家当主のベルオットは王都に滞在していたようで意外にも直ぐに会ってくれた。
侯爵家の応接室に通されると彼はすでにソファに腰掛け私を待っていた。私は彼に礼を取ると彼は立ち上がりスマートにソファまでエスコートしてくれた。
オッサンのクセにやるではないか。こちらを年下と侮る雰囲気もない。
ソファに腰掛け「この度は急にも関わらず…」と言うと彼に手で制されて「王太子殿下の婚約者殿が、この私などに何のご用かな？」と単刀直入に聞いてきた。彼の行為は本来無礼であるはずなのだが、それを感じさせない威圧感だ。
初めて彼とは相見えるが、なるほど筆頭侯爵家当主だ小物ではない。私は背中に嫌な汗を感じるが次期王妃として彼を制さなければならない。
負けられない戦いだ。
