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水色のベルと緑色のベル  作者: 朱井笑美


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 俺は殿下を連れているという理由で護衛対象は、ほぼソフィーナ嬢中心となった。ソフィーナ嬢が一番身分が高く、殿下への対応も弁えてらっしゃるからだ。

 それでも伯爵令嬢達は気もそぞろで、なかなか思うように魔法を扱えなかった。浄化魔法の練習は、弱い瘴気を入れた10センチ程のボールに魔法を当て、ボールごと瘴気を消滅させるのだが。おっと沢山あるボールの一つがコースから出たようだ。

 殿下が気付き対処しようとしていたが、マリベル嬢が何事も無かったかのように消してしまった。「ああやはり彼女は規格外だな」と思っていると、殿下が自分の仕事をマリベル嬢にさせてしまったと思ったのだろう。マリベル嬢に声を掛けているが、それ見る伯爵令嬢達の形相がまた怖い。睨むべきは瘴気ボールの方だぞ!

ほらマリベル嬢がまたドン引きしている。


 そしてまた時が少し経ち王弟殿下の結婚と臣籍降下、第一王子殿下の臣籍降下と王位継承権の返還が発表された。伯爵令嬢達は目に見えて落ち込んだが、それが良かったのか吹っ切って、浄化魔法が使えるようになっていった。

 いやぁ危なかったよ。もう少しで聖女候補を降ろされるところだったんだから。それからは全員が順調に障壁魔法や回復魔法を覚え、使えるようになっていった。

相変わらずマリベル嬢中心で自主練習しているが。


 その頃には殿下、いやラント様も護衛の仕事に慣れてきて周囲にも溶け込み始めた。爺も「最近ラント君も眩しいわ」って目を細めてたから、恐らくもう存在を消さなくてもいいと自分を出し始めることができるようになったのだろう。俺も世話係りとして嬉しい限りだ。


 ある日、とうとうラント様も気付いたようだ。マリベル嬢が普通ではないことを。彼は特段変わった素振りは見せないが、目がちょいちょいマリベル嬢を見ている。

 まあ可愛いしライオットじゃないけど、見ていて飽きないよね。俺も次は何をしでかすかってつい見ちゃうもんね。でも少し経つとラント様の視線は見ているから彼女を追っているに変わった気がする。ライオットには秘密だな。だって俺はちゃんとマリベル嬢に男共を近付けてないもんな。

 ラント様は予定よりも早く地方神殿への異動を希望された。

自分の力を試したいんだな。早く男を上げたいんだろう。これは案外本気かな。


 ラント様の異動は益々伯爵令嬢達をガッカリさせたが逆に聖女としての成長に繋がった。今は他の独身騎士を気にする余裕もないほど必死に魔法を練習している。これまでの遅れを取り戻すかのように。

 これは誰が聖女になってもおかしくはないな。最後は女神様のお告げで決まるそうだ。きっと次代の聖女の御代も安泰だろう。


 聖女候補達が安定して人に回復魔法を施せるようになった頃、ラント様も独り立ちしたし、俺は少し余裕ができて久しぶりに伯爵家の実家に帰った。

 夕食後に父が珍しく一杯やろうと言ってきた。母は「最近ずっとこの調子なんだから〜」と言いながらも秘蔵のお酒を出してくれたが、父に何か良いことでもあったのだろうか?

 兄は首を傾げるが、父は「親友が帰って来たんだよ」と言って、これまた珍しいほどご機嫌だった。俺が久しぶりに帰ってきたせいか、深酒をした父は「良かった、良かったよ、本当に良かった〜」と何度も何度も泣きながら言っていて、途中で母に回収されていった。

父は飲むと泣き上戸になるんだな。


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