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水色のベルと緑色のベル  作者: 朱井笑美


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 すでに侯爵家を引き継いだ兄に子爵家への婚約を依頼するため、ベルを連れて侯爵領の領主邸に帰ると、兄が悪魔かという形相で待ち構えていた。

 しかし僕たちを見た途端、真顔に戻り黙り込んでしまった。

 僕は兄に「勝った!」と思った。

義姉も「やだー天使が妖精を連れて来たわ。どうしよう!!」と大興奮だった。


 僕たちは学院を卒業後、最後に王宮の舞踏会で婚約者同士としてデビューした後、子爵家の領地で、ささやかな結婚式を挙げた。


 結婚式に来てくれた長兄は、ベルの母に挨拶されて絶句していた。

 兄が母に連れられて初めてお茶会デビューした時に、当時、社交界で皆が憧れていた“鉄壁の淑女”がそこにいたからだ。

 別の侯爵家に婿入りしていた次兄も来てくれ、兄の様子に笑いを堪えていた。義母のお陰でベルはきちんとした貴族令嬢に育ったのだろう。


 義母の存在は兄に対してもかなり頼りになった。

これからは、しっかり親孝行をさせてもらおうと思う。

もちろんベルのことも大事にする。

 下の兄達からは結婚式に行けなくて申し訳ないとのお詫びと共に、“兄から逃れたお祝い”の言葉と、たくさんの祝いの品が贈られて来た。特に3番目の兄のクマの等身大の剥製には困ったが、後に子供達が体当たりして遊ぶ良いオモチャになった。


 いつしか僕もあっという間に5人の父親になっていた。

産ませた僕が言うのも何だけど、あんなにか弱そうなのに5人も産んで、ベルは本当に凄いと思う。特に上の3人は年子なんだよ。

確実に計画失敗でしょ。

 自分は一人っ子だから家族が多いのは嬉しいと毎日、子供たちの相手に忙しそうだが幸せに笑っている。

もちろん僕も手伝っているよ。


 ベルは本当は一人っ子ではなかったのだが、義母は「忘れている方が幸せだから」と兄の存在を伝えていない。

 義母の日課の神殿詣では、ただ義母が信心深いだけなのだろうとベルは思っている。いつしか次女のマリベルが義母の真相に気付いた。

 この子は外見だけでなく全てが僕に似ている。

 でもマリベルは義母のお陰で僕のように腹に黒い物は抱えず、とても清い心を持っている。

 自分で決めて真っ直ぐ進む姿は皆を魅了しているのだろう。

また侯爵家が色々うるさいようだ。


 4番目も兄に取られ5番目の三女だけが、まだ手元に残っている。リリベルはクララベルによく似ている。性格も優しく、自分を弁えていて、ある程度賢い。

 きっと学院に進んでもララベルのようにはならないだろう。しかし進学まで時間もあることだし、しっかり教育しておかないと、またマリベルに心配をかけてしまう。


 長兄から、そういえば手紙が来ていたな。どうやら今度はマリベル絡みのようだ。兄はあの子を溺愛しているから何よりも優先して動くだろう。

 それにあの子は強い子だ。「お任せします」と返信しておいた。


 それより今は3番目の兄の手紙の内容の方が嬉しい。

やっと好きな人と結ばれたそうだ。

兄の20年越しに近い初恋の成就に涙が出た。

 僕は、まだこれからも幸せになれる予感にワクワクし、最愛の妻の額にお休みのキスをして眠りについた。

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