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聖女候補の皆様と侍女達が聖女候補共有の応接室に移動する。
私もビアンカ様の後ろについて応接室に入る。
応接室には、黄金の髪に海のように青い瞳のキラキラの王子様と月の光のように煌めく銀髪にアメジストの瞳を持つクールな令嬢がいらした。しかし、その2人に見惚れる前に2人の後ろに控える男の方がどうも気になった。
私に穴が開きそうですよお兄様。ライオット様は王太子殿下の護衛だったわ。
ソフィーナ様が殿下方に代表してご挨拶をし、ここにいる聖女候補を紹介する。伯爵令嬢二人は「あと2名の候補がおりますのよ」の言葉で片付けられた。お二人は呼ばなくて良かったのかしら?
ソフィーナ様がチラッとライオット様に目をやり、ライオット様の視線の先が私であることに気付くと目を丸くされた。そりゃビックリしますよね。でも普段、完璧淑女のソフィーナ様がそんな顔をされるのも珍しい。
殿下も自分の護衛の視線の先に気付いたのか「もういいライオット好きにしろ」と仰った。
え?殿下、ライオット様を諌めないの?好きにさせていいの?と思っているうちにライオット様は大きな溜め息を吐いて「マリィ、最近どうして手紙をくれないんだ?」と言ってきた。
私はそんな男を無視して、まずは殿下の婚約者の令嬢にお詫びとお礼を申し上げる。
「私の姉が王太子殿下の周囲をお騒がせして申し訳ありません。それなのにソフィーナ様と姉の対処までして頂き本当にありがとうございました」と深くお辞儀をする。
婚約者の令嬢はニコっと笑って「あなたは常識のある方なのね」と皮肉たっぷりで仰った。あーマジで怒らせたのね、あの姉は。
「どんなお言葉でも耐えてみせます!」と拳を握っていると「うちのマリィ泣かせてんじゃねぇぞ!」と殿下の背後から低い声が。
ラララライオットお兄様!?公爵令嬢様ですよ!しかも未来の王妃様!マリベルがギッとライオットを睨むが、殿下が面倒臭そうに
「水色のベルには構わない方がいい」と婚約者様に仰る。
「どういうことですのん?」という顔で固まるマリベルにライオット様が腕を出す。「さあ、おいでマリィ!お兄様の腕の中に」いや行かねーし。場の空気を読んで頂きたい。
そこに「ライオット、何やってんだよ!相変わらずだなぁお前は!」と聖騎士のアドリアン様が呆れた声で仰った。
「結婚決まったんだってな。おめでとうアドリアン」とライオット様も都合の悪いことはスルーだ。
「お知り合いなんですか?」とマリベルが聞くとライオット様は「俺とアドリアンは従兄弟なんだ」と仰った。「え?私とライオット様も従兄弟です」って、つい言ったら、「いやいやマリベルとアドリアンは何も関係無いからね」とライオット様が速攻で言う。
アドリアン様が額に手を当てて「水色のベルが絡むと、とことんポンコツになるんだったな侯爵家は」と溜め息混じりに言った。
殿下が「ライオットの母君が、アドリアンの父君の姉上だ」と教えてくれた。あぁ、母方の方だったのね。うちは母が一人っ子だったから父方しか思い付かなかったわ。
王太子殿下が「叔父上が聖女殿に会いに来ると言うから、我々も聖女候補の様子を見に一緒に来たが、逆に邪魔をしたようで済まなかったな。皆、順調そうで良かった。ソフィーナ嬢も皆も元気でな」と仰って出口に向かう。
婚約者の令嬢もソフィーナ様とアイリーン様に軽く別れを告げ、殿下に続く。そう言えば3人は元王太子妃候補でもあったんだっけ、仲が良かったのねとしんみり見ていると、もう1人しんみりした男が「マリィ!週一で近況を寄越せよ」と言う。いや無理ですから。
アドリアン様に部屋から押し出されるように出るライオット様に、殿下が呆れながら「そうだ私の異母兄が春から聖騎士としてお世話になるよ。宜しく頼むね」と仰って、ライオット様を引きずって去って行かれた。
王太子殿下のオニーサマですか?!と首を傾げるマリベルに、ソフィーナ様は察したのか、「王太子殿下の兄君は側妃様がお産みになった第一王子殿下よ」と静かに仰った。