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発見
何にも縛られず街をゆく野良猫が俺は好きだ。俺の中で自由の象徴と言ってもいい。猫がたまっているところでただそれらをぼんやりと見つめていながらそう思っていた。心地良さのせいか自分がいつの間にか寝ていたことに気がついた。ほんの10分程度だがより一層穏やかな気持ちになった自分がいた。
だがあることに気がついてその気持ちはどんよりと曇り始めた。
1匹の猫が他のねこによって虐げられているのだ。
人事だと思えなかった俺はすぐに仲裁に入った。
その猫は歩けそうにもなく、生死の狭間に揺れているといった感じだ。ただの学生の俺に対処法がわかるわけも、病院に連れていくお金があるはずもない。ただ俺は奇跡を願った。タオルで猫を巻いて、餌をポイ捨てしておいた。何も与えた訳じゃない。
こんな状況でも日は変わらず和やかな気分を演出していた。
おおよそ1時間ほどしたころ、その猫は目を開けた。起きたのかと思えばすぐに置いてあった餌を食べ始めた。俺はほっと息を漏らした。その猫はその場を立ち去ろうと動きはじめた。去り際にこちらに一瞥をやった。黒と茶の毛で、その瞳は赤い眼をしていた。