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大切にする  作者: BIBI
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エミリー NO.1

僕がエミリーに初めて会ったのは僕が7歳、エミリーは5歳だった

一瞬天使かと思ったほど可愛らしかった

ふわふわのプラチナブロンドの髪とエメラルドグリーンの瞳、小さな唇はピンク、真っ白な肌をしてた


僕の父とエミリーの父上が学生時代からの友人で、エミリーと10歳離れた兄君の貴族学院の入学式から自領へ帰る途中に我が家へ立ち寄ったんだ

本当はエミリーと僕の顔合わせが目的だったんだろう


僕はリッチモンド伯爵家の次男で、エミリーはモーリス伯爵家の長女だ

家格も釣り合うし、父親同士が友人だったこともあった

僕はエミリーを一目見たときから、仲良しになりたいと思ったから、僕が10歳になった時に、婚約が決まって嬉しく仕方なかった


と、言っても領地が遠いこともあって、なかなか会う機会は無かった

それもあって、手紙は頻繁に送ってた

手紙には日常のくだらない事しか書くことがなかったけれど、一所懸命に書いた

1回に10枚は書いた

2回に1回はエミリーも返事をくれた

1枚だけだけど嬉しかった



1年に一度くらいしか会えなかったけれど、エミリーは、会うたびに美しくなっていった

僕と言えば、ブラウンの髪にグレーの瞳、背も低く瘦せていた

婚約はしたけれど、小さいながらに不安もあった


エミリーが10歳になった時にエミリーのご両親が馬車の事故で、亡くなってしまった

エミリーも同乗してたけれど、ご両親が二人してエミリーを庇った事が幸いして、エミリーは重傷を負ったものの、一命を取りとめた


エミリーの兄上は外交官として海外赴任をしてたので、10歳のエミリーを赴任先に引き取るのは難しいことが多くて、我が家で一緒に生活することになった

婚約者でもあるし、将来はこの地で住むことになるからと、僕の両親もエミリーの兄上のセドリックを説得した

本当は悲惨な事故でエミリーが話せなくなったのが一番の原因だった


エミリーは人見知りする子だった

邸に来てからも、なかなか事故の事が忘れられなくて、ちょっとしたことで怖がった

僕は毎日、エミリーに本を読んであげた

物語が悲しい終わり方をすると、首を横に振って俯いてしまうのだ

それで、僕は自分勝手に幸せな終わり方にしてた

毎日、2冊位読んでいたので、子供用の本がなくなってしまい、その内に、自分で作った

それでも、エミリーは段々楽しそうにしてくれた


エミリーは1年後には言葉も戻り、人見知りはするけれど、明るくなっていった

そして、一段と美しくなった

僕は背は少し伸びたけれど、相変わらず瘦せていて、エミリーには相応しくないと思うようになった

それでも、エミリーの事は何があっても大切にしようと思ってた


僕が15歳になった時に王都の学院へ入学することが決まった

それは、もうずっと前から決まってたことだけど、エミリーに会えなくなるのは悲しかった

王都へ出発前に邸から少し離れた丘の大樹の下でエミリーに告白した


「エミリー 僕は何も特別な事はできないし、外見もぱっとしない

 それでも、絶対にエミリーを一生大切にする これだけは誰にも負けないよ

僕が学院を卒業したら結婚してください」


そう言って、エミリーの瞳と同じ色のエメラルドの髪飾りを贈った


「アンリ ありがとう とっても嬉しい 大事にするね

アンリは私には誰よりも特別だよ」


そう言って俯いていた

僕はもう天にも昇る気持ちでエミリーの頬にキスした

2人とも真っ赤になっていた


それからは、長期休みで帰る時しか会えなかったけれど、変わらずに手紙は頻繁に送ってた

僕が10枚、エミリーが2回に一度、1枚は変わらなかった


僕が18歳になり、学院を卒業することになって、両親とエミリーも王都の学院へ来ていた

エミリーのデビュタントがあったのも、大きな理由だ


卒業パーティーでエミリーをエスコートしてダンスをした時の僕の自慢げな様子には周りも驚いてた

全く釣り合ってない美女と一般人だ

背丈だけは学院にいる間にどんどん伸びてエミリーの頭一つ分以上は高くなった


本当に幸せだった


2週間後にエミリーのデビュタントがあった

エミリーは家庭教師について勉強してたので学院には通わずにいた

僕は卒業したら直ぐ結婚したかったけれど、エミリーの兄上が赴任先から王宮に戻り、外務部の高級文官なるので、帰国するまで半年程伸びた

セドリックはとても優秀だと父上が褒めてた


デビュタントの日になった

エミリーはもともと美しいのに、磨きかけられて尚一層美しく輝いていた

その日は父上がエミリーをエスコートした

エメラルドの髪飾りがエミリーの髪を飾ってたのを見たときは喜びを抑えられなかった


エミリーは国王陛下に拝謁して挨拶をした

「国王陛下にご挨拶申し上げます モーリス伯爵が妹エミリーと申します」

通常はここで陛下が頷くだけで終わるはずだったけれど、陛下からお言葉があった


「そなた、王都に住んだことはあるのか」

「ございません」


父上はそれを聞いて困惑していたが、翌日その意味を知ることになった


翌日、陛下から、我が家のタウンハウスに勅命が届いた

エミリーを側妃として王宮に迎える

1週間後に迎えが来ると言う

陛下が王都に住んだことがあるかと聞くのは、側妃にする意味だったのだ

信じられなかった


王妃殿下は3年前に身罷られたが、陛下には3人の側妃がいる

しかも、陛下は御年52歳だ

僕は茫然自失で何も言えなかった

エミリーは父上にその話を聞いて、ただ俯いてた

エミリーを連れて国境を超えようと思って、エミリーの部屋を訪れた

エミリーは何も言わずに僕の手を握って首を横に振っただけだった


それから、出発前日までは慌ただしく過ぎた

エミリーは兄上のセドリックにも手紙を書いた

僕はエミリーに会うのが辛かったし、悲しかった

エミリーから出発前夜に


「お話を聞かせて」

と、言われて部屋を訪ねた

どうして良いか分からない僕をエミリーは抱きしめた

その後は、記憶が飛んでしまったが、僕たちは初めて結ばれた

僕たちは婚約して、結婚も近かったので、理由はなんとでもなると思った


翌日の早朝、エミリーは王家の馬車に乗って行ってしまった

窓から見てたら、エミリーと目が合ったような気がしたけれど、涙でかすんで分からなかった




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