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01 ナコルは冒険者として頑張ります!

「ようナコル!今日も元気に初級ダンジョンか?相変わらず弱っちいな」

「はい!頑張ってレベルを上げて、早く強い冒険者になってみせます!」

新米冒険者ナコルは先輩冒険者ベイブの少しバカにするような言葉にも元気に挨拶をして笑顔を見せていた。


「まあ精々死なねーように頑張んなー。まああんなダンジョンで死ぬ方が間抜けだけどなー、まあお前は死にそうだけどな!」

「はい!絶対に死なないように慎重にですね!ありがとうございます!」

ナコルの頭をぐりぐりとして最後には後ろに弾き飛ばすようにしたベイブは、一瞬何かにおびえるように体を震わせすぐにナコルを倒れないように支えた。


そして無言でその場を後にした。

「ベイブ先輩!ありがとうございました!」と元気に手を振るナコルに見送られながら……


そしてベイブが少し離れた先で、目の前に立つ女性を震えながらも窺っている。


「おい……ナコちゃんに何してくれてんの?」

「い、いやな、先輩として死んじゃわない様にと心配でな、アドバイスぉ”ぉ”ぉ”ぉ”ぶ!」

なぜかくの字に体がひしゃげ嗚咽を漏らすベイブ。


「アドバイスなら仕方ねーな。だが今後、ナコちゃんへのタッチはソフトにな。つーか気安くふれるな!分かったか!」

「ふぁぃ……」

ベイブの腹痛が回復するまで1週間かかったという事実はまた別の話……


「はーそれにしても今日のナコちゃん……マジ天使レベルマックスだわ!」

建物の影から『視力強化』スキルを使って一点を見つめているこの女性、冒険者アンネである。


彼女はS級ランクの冒険者であり、この街では最強の女騎士である。そして周りからもてはやされる我儘ボディの持ち主であり、赤髪の戦天使レッドバトルエンジェルと言われる冒険者であった。

本来であればこのような初心者しかいない始まりの街『ファストランド』は彼女が居てよい場所ではないのだ。


本来であれば彼女しかこなせないはずの依頼をこなし、忙しい毎日を送っているはずの彼女が、数週間前にたまたま休暇で訪れたこの街に、なぜか定住して居続けている。


それは誰にも分からない謎である。

本当に誰にも分からないとんでもない謎だったら謎なのだ!絶対に謎だぞ?


「あっ!こんなことはしてられない!ナコちゃんが行っちゃう!」

アンネは足取り軽く走り出す。


そして初級ダンジョンの前で壁に寄りかかりしばし休憩を取るのだ。


「あっアンネお姉ちゃん!」

「お、おお。ナコルの僕ちゃんか。今日も元気がいいな!頑張ってるか?」

壁によしかかり腕を胸の前で組みながら冷静を装いそう話しかけるアンナ。その口元はだらしなく緩んでいる。


「うん!今日もね、頑張ってレベル上げするんだ!」

「そうか。まあほどほどに頑張れよ……それより、腰の剣は中々にあってるじゃないか!」

アンネにそう言われ、腰に差している新米とは思えないほどの豪華な剣を褒められ、ナコルは嬉しそうに左手でその剣を撫でる。


その剣は王都の最上級ダンジョンの深部で見つかるドラゴンソードというレアな武器であった。その特性により持ち主の防御力を著しく高めてくれる伝説級のレアな奴であった。


「ありがとうございます!これ、なんと昨日発見した宝箱に入ってたんです!」

「そうかそうか。良かったな。ナコルは運も良いんだな。感心感心」

何が感心なのか分からないがその言葉にナコルは「えへへ」と笑って鼻下をこすって照れていた。


「ふぐっ!」

「ど、どうしたのお姉ちゃん!」

突然胸を押さえて苦痛に顔を歪ませるアンネに心配そうに声を掛けるナコル。


「だ、大丈夫だ。ちょっと古傷がな」

「そうなんだ!痛いの痛いの飛んでけー!」

ナコルはアンネが押さえている胸を撫でると不思議な呪文を唱えた。


それに反応するようにアンネは「ふぎゅぐみょ!」と奇声を上げたが、その顔はだらしなく緩んでいた。


「ナコリュのおかげで良くなったよ。お前は治癒師の才能もあるのかもな、ありがとう」

「えへへ!でも僕は冒険者として頑張るんだ。じゃあ、お姉ちゃんも無理しないでね。行ってきまーす!」

元気に手をふりダンジョンの中に入っていくナコル。そしてそれを見送るアンネはまだだらしない顔を戻す気は無いようだ。


「ナ、ナコちゃんが……私のおっぱ……おっぱ……ふぎゅん!」

恍惚の表情を浮かべながらしばし動けぬアンネ。入り口の警備員は「またかよ……」と言いつつため息をついてそれを見守っていた。

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