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第4話:回復ポーションで誤魔化す

 記憶が戻ったのだから知識もちゃんとある。

 私は今幼女なわけだけど、別に何の問題もなかった。

 というか、錬金術はそこまで難しくない。

 素材に合わせて錬成陣をちゃちゃっと描けばいいだけだ。

 錬成陣がしっかり描けていれば魔力も全然使わないし、低ランクの素材でも良い物ができる。

 国のみんなは、その“ちゃちゃっと”が難しいとか言っていたけど。

 私なんかにもできるんだから、きっとみんなもできたはずだ。

 さて、問題は素材があるかどうか。


「お父たま、お母たま! お水ちょうだい! 薬草も!」

「わ、わかった! 傷を消毒するんだな! さすがルーだ、賢いな!」

「今すぐ持ってくるわ! ちょっと待っててね! やっぱりルーちゃんは頭がいいわ!」


 こんな状況でもさりげなく私を褒めてくれるのが、父母のすごいところだった。

 おっと、いけない。

 一番大事な物を頼むのを忘れていた。


「あと炭かチョークも持ってきて!」

「「す、炭……? チョーク……? ど、どうして」」

「いいから早く!」

「「は、はい!」」


 父母はダッと駆け出すと、どこからかすぐに素材を持ってきてくれた。


「ほら、ルー! 水と薬草を持ってきたぞ!」

「チョークも買ってきたわ! これでなんとかなる!?」

「ありが……! とうございます……」


 だが、素材を見た瞬間に力が抜けてしまった。



 <噴水広場の水>:Gランク。かろうじて飲める。不純物多め。常用はおすすめしない。

 

 <使い古されたガラスの小瓶>:Gランク。以前は透明度の高いガラスだったがくすんでいる。飲食物の保管はおすすめしない。


 <薬草モドキ草>:Gランク。薬草になりきれなかった草。あともうちょっと頑張れば完全な薬草になれた。



 ぐぬぅ……マジか。

 予想以上に悪い素材だ。

 Gランクなんて初めて見たぞ。

 というか、傷を治すって言っているのに、これをチョイスしてくるセンスはすごいな。

 

「よし、さっそく水で洗って傷に薬草をすり込もう! やり方はよくわからないけど、力いっぱい擦れば治りそうだな!」

「いいえ、たしか薬草を水に入れて飲ませるのよ! よく覚えてないけど、なんかそんなような感じだった気がするわ!」

「しなくていいから!」


 放っておくと事態が悪化しそうなので慌てて止めた。

 父母の手から素材を回収する。

 Gランクだろうがなんだろが、今は大切な素材だ。

 変な使い方をされる前にさっさと錬成しよう。

 チョークで道に錬成陣をガガッ! と描きまくる。

 途端に父母がそわそわしだした。

 

「ル、ルーちゃん? 落書きはしない方がいいんじゃないかしら? 後で町長さんに怒られちゃうから……」

「そ、そうだぞ。ルーの絵は宮殿に献上されるくらい上手いのは知っているんだがな……」

「これ落書きじゃないよ。錬成陣なんだから。それに錬金術が終わったらちゃんと消えるの」

「「れ、錬成……陣……? しかも、錬金術って……」」


 ポカンとする父母を横目に錬成陣を描いていく。

 世の中の色んな物質は小さな粒でできている。

 素材が違えば、それを構成している粒も違う。

 粒の並び方だとか種類だとかを見極めるのがポイント。

 つまり、錬金術は素材に合った錬成陣を描くことが大事だ。

 あっという間に、この素材たち専用の錬成陣ができた。

 後は真ん中に水と薬草を置いて、と。


「それっ! <アルケミー>!」


 錬成陣がぱああっ! と輝き、素材が光に包まれた。

 すぐさまバラバラにされ小さな粒になる。

 粒同士が新しく組み合わさったり、潰れてくっつきあったりして、まったく別の物質に変わっていく。

 うん、いつも通りの錬金術だ。

 でもブランクなのか幼女だからか、前世よりはゆっくりだ。

 まぁ、そのあたりはいずれ元に戻るかな。

 見守っていたら、父母が震える声で話してきた。


「ル、ルーちゃん。あなたはさっきから何をやっているのかしら? いつ魔法が使えるようになったの? もしかして、天才なの!?」

「お父たまもこんな魔法は見たことない! ルーは天才なんだー!」

「いや、これは魔法じゃなくて錬金術……」

「「天才だー!!」」


 最初は震えてたのに、最後の方はハイテンションになっていた。

 二人は手を取り合って大喜びだ。

 もしかして、ジャックのことなんかどうでも良くなってない?

 錬成の様子を見て、周りの人たちもざわざわ……とどよめいている。


「お、おい、見ろよ。草とか水が分解? されているぞ。あんな光景見たことない」

「まさか、あれは錬金術か……? あ、ありえない……どうしてあんな女の子が」

「き、奇跡の所業じゃないか。生きているうちに拝めることができるなんて……」


 ずいぶんと大げさな感じもするけど。

 まぁ、無理もないか。

 錬金術を使える幼女なんて前世でもいなかったし。

 そういえば、ルーとして生きてきても、錬金術を使っている人を見たことなかった。

 この国では錬金術があまり発達していないのかな?

 今度調べてみよう。

 そんなことを考えていたら、錬金術も終わった。

 薬草モドキの草と決してキレイだと言えない水は消え、代わりに小瓶に入った緑の液体がポツンと置かれていた。



<錬金魔道具・回復ぽーしょんE>:Eランク。家庭用の回復ポーション。すり傷や小さな打撲程度なら十分治せる。ちょっとだけ肌がツヤる効果もある。



「やった! できた!」


 思わずガッツポーズした。

 上手くいった!

 素材は死んでたけど、錬成陣のクオリティで巻き返したぞ。

 ランクを2つもすっ飛ばした錬金魔道具ができた。

 おまけに素材も節約できたらしく、ポーションは2個できている。

 いやぁ、この感じは久しぶり。

 懐かしいなぁ。


「おいおいおい。ホントに錬金魔道具ができちまったぞ。俺、ポーションなんて初めて見たよ。実在したんだなぁ」

「マジか……これはヤバいぞ。あの子は本当に天才なんだな。俺のああいう子どもがほしいよ」

「すっげ! いや、すっげ!」


 町民たちのどよめきはさらに大きくなる。

 なんか思ったより大事になってきた気がするけど、まぁ仕方がない。

 まずはジャックの怪我をさっさと治してしまおう。

 いや、待って。

 父母大丈夫?

 さっきからやけに静かだ。

 まさか、卒倒してるんじゃ……。

 チラッと父母を見る。

 目が点になって佇んでいた。

 よし、今のうちだ。


「ジャック、ケガさせちゃってごめんなさいね。お詫びに回復ポーションを造ったわ。これを振りかければすぐに治るわよ」

「はあ!? か、回復ポーションってなんだよ! いらねえよ、そんなの! 変な物を持ってくるんじゃねえ!」


 ポーションを持ってきたら猛烈に拒否された。

 なんでそんなに嫌がるの?

 回復ポーションなんて一般的な物だし。

 グリーンな色もキレイでしょうよ。

 素材はアレだったけど物は良いんだから。


「まぁまぁ、ちゃんとケガは治るんだから、少し使ってみよ」

「そんな気持ち悪い水で治るわけないだろ! 痛いの痛いの飛んでいけしないと治らねえだろうが! 早く痛いの痛いの飛んでいけをやれ!」

「い、痛いの痛いの飛んでいけ?」

「僕がケガしたときは、いつもママので治るんだ!」


 ジャックは泣きながら怒っていた。

 いや、痛いの痛いの飛んでいけって……。

 さすがは5歳男児といったところか。

 やってもいいけど、それよりポーションの効果を確かめたい。

 生まれ変わって初めての錬金魔道具ですからね。

 これは楽しみですよぉ。


「ほ、ほら、ちょっと振りかけるだけだから」

「いやだ! 痛いの痛いの飛んでいけにしろ!」


 ぐぬぅ……もたもたしているとジャックの両親が来てしまう。

 しょうがない。


「痛いの飛んでいけしてあげるから早くそこに座って!」

「うぇ……?」

「ほら、早く!」


 ジャックを力強く地面に座らせる。

 

「痛いの痛いの飛んでいけ~!」


 いけ~! と同時にポーションを振りかけた。

 慌ててやったので、ジャックのズボンにも少しだけ引っかけちゃった。

 しかし、<回復ぽーしょんE>を振りかけると、ジャックのすり傷はあっという間に消えてしまった。

 ついでに肌もツヤツヤになっている。


「ウ、ウソ……ほんとに僕の傷が治った……」

「「うちの子、天才……」」


 耐えかねたように、父母が卒倒した。

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