表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/45

第3話:いじめっ子出現

「え……? だ、誰?」

「は、はあ!? なんだよ、それ! 俺様のこと覚えてねえのかよ!」


 三人組は腕を組んで私を睨みつける。

 中でも、真ん中にいる男児は顔を赤くしてめっちゃ怒っていた。

 黒系のくるっとした髪に濃い青色の瞳。

 ウールっぽいジャケットと半ズボンを着ているから、きっと良いところのお坊ちゃんなのだろう。

 だがしかし……こんな子私の知り合いにいたっけ。

 まったくわからん……い、いや。

 プンスカしている様子を見たら、この男の子が誰か思い出した。


「ジャ、ジャック……」

「なんだよ、覚えてんじゃねえか!」


 いきなり男児は、ぱああ! っと笑顔になった。

 そう、こいつはジャック。

 私と同じ5歳の男児で、町の有力商人グリードン家の一人息子だ。

 何かと理由をつけては、私をイジメてくる嫌なヤツだった。

 記憶が戻る前の私は気弱な性格もあり、ずるずると言いなりになっていたらしい。


「ジャック様のお顔を忘れるとは良い度胸だな!」

「死刑になってもおかしくないんだぞ!」


 ルーとしての記憶をさらっても、左右の男児は特に覚えていなかった。

 ひとまず、取り巻きA、取り巻きBとしておこう。


「ほら、見ろよ。帝都で流行っているおもちゃだぞ。羨ましいだろ~。まぁ、お前みたいな貧乏人には絶対に買えないだろうけどな」

「あ、いや、別に……」


 ジャックはドヤ顔で女の子の人形を見せびらかしてくる。

 見たところタオル地のような素材らしい。

 ふんわりした青いドレスを着ていた。

 

「ほらほら~、ちょっとくらいなら触ってもいいんだぞ~。ちょっとくらいならなぁ」

「私は人形はそんなに好きじゃなくて」


 断っているのに、ジャックはグイグイ人形を押しつけてきた。

 女の子の顔が頬っぺたにめり込む。

 いや、まぁ、確かに肌触りは良いのだけど。

 な、なんなんだ、こいつは。

 いらないって言ってるのに。


「お子ちゃまなルーちゃんは、欲しくなってきちゃったかなぁ? ま、まぁ、どうしてもって言うんならあげてもいいぞ」

「欲しくないから……」

「俺様の家にはもっとたくさんの人形があるんだぞ~。服だって赤とか緑とかあるんだぞ~。うちに来たら好きなだけ遊べるだろうな~。一応言っておくが、別に、俺様はお前のことが好きなわけじゃないからなっ」


 しつこいなぁ。

 私は前世でも女の子っぽい趣味はなかった。

 宝石とか服もいらなかったし。

 それほど錬金術に魅せられていたのだ。

 私の生きがいは錬金術しかない。


「だから、別に興味ないの!」

「……!?」


 あまりにもしつこいので、つい怒鳴ってしまった。

 途端にジャックはスン……と静かになる。

 ああ、良かった。

 この手のタイプには強めに言わないとダメなのだ。


「ル、ルーちゃん? せっかくだから遊んでもらったらどうかしら?」

「そ、そうだぞ。お友達とは仲良くしないとな」


 さっきから父母はそわそわしている。

 な、なんで?

 ……あっ!

 そうだった、コモン家(特に父)はジャック両親にいびられていたんだ。

 この街の商売を仕切っているグルードン一家のせいで、うちの店には良い品が入ってこない。

 

「お、怒ったな!? 俺様を怒っていいヤツなんか一人もいないんだぞっ!」


 突然、ジャックはべそべそ泣き出した。

 え?

 ど、どうした?


「パパに言いつけて、お前の店をもっともっと貧乏にしてやる! これも全部お前のせいだ!」

「あんたねぇ……」


 齢5歳にして立場を利用するなんて……。

 とことん性根の腐ったガキだな。

 ジャックの一挙手一投足に、父母は冷や汗をかいてドギマギしている。


「お前のクッションなんかこうしてやる! 俺様に怒ったバツだ!」

「あっ、こら!」


 ジャックは私のオジサンクッションを奪い取る。

 そして、ビリビリに破り捨ててしまった。

 オジサンの破片がパラパラと地面に落ちる。

 おまけに、風に吹かれてどこかへ飛んで行っちゃった。


「お、お前が悪いんだぞ! お前が俺様の人形をもらわないからこうなったんだ!」

「だから、私は人形に興味がなくて……それより、何してくれたの!」

「うるさい! 全てお前が悪いんだ! 俺様は何も悪くない!」

「……」

 

 ジャックはめちゃくちゃワガママだ。

 一人っ子だから、心底甘やかされているのかもしれない。

 クッションを破かれ、父母の心までビリビリにされた気持ちになった。


「親が貧乏だから、お前の心も貧乏になるんだよ!」


 私のことはいくらバカにされてもいいが父母のことは許せん。

 もう気弱なルーではない。

 何と言っても一度殺されているからね。

 怖い物なんか何もないのだ。


「なんてことするのっ。お父たまとお母たまに貰った大切なプレゼントなのよっ。謝りなさいっ」

「お、俺様に逆らうなぁ! クソッ、お前の金なし親にはこうしてやる!」

「あっ、こら!」


 ジャックは父母に物を投げまくる。

 どこに持っていたんだというくらい、次から次へと物を投げてくる。


「あっ、痛っ!」

「ワイズ!」


 止める間もなく、母が怪我をしてしまった。

 手からちょっと出血している。

 私はすかさずジャックに飛びかかった。

 力の限り、その動きを止める。


「ジャック、いい加減にしなさいよ! お母たまケガしちゃったじゃん!」

「うるさい! お前のせいだ! ルーが俺様の言う通りにしないからだぞ!」


 ジャックはわあわあ暴れまくる。

 

「俺様の言う通りにしないヤツはこうだ!」

「うわっ! ちょっとやめて!」

「「ルーちゃん!」」


 ジャックは両手を振り回して私の頭を叩きまくる。

 

「やめてって言ってるでしょ!」


 耐えかねてドンッ! と押しのける。

 もうホントにご勘弁願いたかった。

 ジャックはフラフラとバランスを崩す。

 かと思ったら、こつんっと壁に軽く頭をぶつけた。


「ねえ、もうやめましょうよ。ケガすると危ないから」


 手を差し伸べたけど、ジャックはポカン……としている。

 ん?

 なんだか、目がうるうるしているような……まさかこれって!?


「う……」


 そこにいる全員がごくりと唾を飲み込む。


「うわああああ!!」


 ジャックは大声で泣き出した。

 ボロボロと大粒の涙が零れまくる。

 え。

 さっきまでめっちゃ強気だったじゃんよ。


「な、泣かないでよ。ごめんって」

「ああああああ!」


 謝ろうとしたけど、ジャックが腕を振り回して近寄れない。

 しかも、思いっきり壁に手を当て、小さな擦り傷を作ってしまった。


「お前のせいだああああ! うわああああ!」

「いや、ちょっ」


 そ、それも私のせいなの?


「なんだ、なんだ? 何の騒ぎだ?」

「男の子が泣いているぞ。喧嘩でもしたのかな」

「泣き声を聞くにかなり痛そうだ。すごい大声じゃないか」


 四方八方からどんどん人が集まってくる。

 片や、ジャックは女の子の人形を握りしめて泣いていた。

 こ、これ、完全に私が悪いヤツみたいじゃん。

 ジャックから突っかかってきたのに。

 ぐぬぅ……どうする。


「ああ、どうしましょう、あなた……! ルーちゃんがすごく強くなっちゃったわ!」

「ルーに突き飛ばされるなんて大変名誉なことだ! そのことをわかりやすく伝えられる言い方を考えよう!」


 父母がうろたえまくっている中、前世の記憶が戻った頭で必死に考える。

 必ずこの状況を打破できるアイデアがあるはずだ。

 懸命に考え込んでいると、一つの案が浮かんできた。

 そ、そうだ!

 錬金術ならどうにかできるんじゃないの!?

 回復ポーションを作るのよ!

お忙しい中読んでくれて本当にありがとうございます

少しでも面白いと思っていただけたら、ぜひ評価とブックマークをお願いします!


評価は下にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけたら本当に嬉しいです!

ブックマークもポチッと押せば超簡単にできます。


どうぞ応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ