第24話:お家の修理
「じゃあ、お父たまとお母たまは後ろの方に下がっててね。これからお家を治すから」
「まさか自分の娘に自宅を修理してもらう日がくるなんてな……うっうっ」
「ルーちゃんったら知らない間に立派になって……うっうっ」
〔おとんもおかんもめっちゃ泣くやん〕
〔大号泣……〕
私たちはお家の前に集合していた。
いよいよ、お家の修理の日がやってきたのだ。
改めて見ると、自宅は外も中も大変にくたびれている。
<コモン家宅>:Dランク。レンガ造りの小さな家。野ざらしにされ、安く売られていたのをスモーリーとワイズが購入。それ以来、日々修繕を繰り返してきた。コモン家の思い出がたくさん詰まっている。
私を5年間も守り育ててくれた家。
本当にありがとう。
壁をそっと撫でると、今までの思い出が湧き上がった。
優しい父母にたっぷり愛情をもらって貧しいけど幸せな生活を送り、突然前世の記憶が戻ったんだよね。
それからは日々の生活でも錬金術を使うようになって、リリスが生まれて、ディーガードが生まれて……。
今ではすっかり家族も増えた。
「お父たま、お母たま。お家の間取りは出来上がった?」
修理と改築をする上で、父母の意見は一番尊重したい。
一応、私も改築案を考えてはいたけど、やっぱり両親の好みに合わせたい。
というより、そうするべきだろう。
そんな風に思っていたら、二人は「ああ、そのことなんだが……」と顔を見合わせた。
「ルーは自分の思い通りに造れるんだろう? だから、ルーの好きなように直せばいいさ」
「スモーリーと相談したんだけど、私もそれが良いと思うわ。いつもルーちゃんの世話になってばかりだから」
「お父たま、お母たま……ありがとう……」
だったら、なおさら良い家にしないとね。
気合が入るよ、これは。
素材は事前にディーガードとリリスが用意してくれた。
ボンヘイ山から採ってきた木材に石、ハトガラスの羽……。
この辺りで手に入るような素材は、彼女らがあらかた集めてくれたのだ。
それぞれ、父母の背丈くらいの高さに積まれている。
〔ルー、材料はこれくらいで足りるかいな?〕
〔無問題……?〕
「うん、十分過ぎるくらいだよ。準備してくれてありがとうね」
みんなの温かい気持ちを胸に錬成陣を描く。
これからも、家族全員が幸せに暮らせるような家になりますように……。
魔力と一緒に願いを込める。
「<アルケミー>!」
家全体が白っぽい光に包まれ、素材たちと溶け合っていく。
長年の疲れが取り除かれ、今こそ新しく生まれ変わるのだ。
お家も喜んでくれてるのかな。
やがて、光は徐々に弱くなっていき、新しいお家が姿を現した。
濃いブルーグリーンの三角屋根に小さく伸びた煙突。
家族が増えたので二階建て構造とした。
我ながら思った以上に素晴らしいお家に進化してくれたと思う。
<うるとら・コモン家宅>:Sランク。ルーの錬金術により改築されたコモン家。庶民にはなかなか買えない二階建て。濃いブルーグリーンの三角屋根が目印。ルーの魔力で覆われており、ドラゴンの襲来を受けても壊れないほど頑強。
「な、なんて素晴らしい家なんだ……まるで宮殿のようじゃないか……!」
「この人生で二階建ての家に住めるなんて……もう嬉しくてどうにかなっちゃいそうだわ……!」
〔さすがはルーやな! こんなんルーにしか造られへんで! それ、お祝いの踊りや!〕
〔大讃美……〕
父母は感動して泣き出しちゃった。
リリスはなんか見たことないダンスを踊っているし、ディーガードは天高く拳を突き上げている。
「ねえ、みんな。お家の中入ってみて。内装もちょっと工夫してみたから」
「〔はーい……うわぁ……!」」
玄関をくぐるや否や、みんなは感嘆の声を上げた。
まず目に入ってくるのは広いリビング。
床は板張りにして、見た目も雰囲気も温かくした。
ここで食事や日々の楽しいお喋りをするのだ。
「キッチンもグレードアップしたよ。お母たまが少しでもお料理しやすいように」
「ルーちゃんっ……!」
かまどはレンガ造り。
素材の石を粒子にする過程で、一気にレンガにまで加工してしまった。
その方が効率いいからね。
術式通りにうまくいったみたい。
火にかけるところも3つに増やした。
もっと必要だったら、その都度また錬金術を使いましょう。
「お父たまとお母たまのお部屋も、前よりもっと広くしといた」
両親の寝室は、以前の2倍程だ。
ベッドは天蓋付きにグレードアップ。
中身だって藁から羽毛にしたからふわっふわだ。
父母もぷにぷに触っては喜んでいる。
「素晴らしい寝室だよ、ルー! なんて柔らかいんだ」
「藁が痛くて夜に起きてしまうこともなくなるのねぇ。ありがとう、ルーちゃん!」
嬉しそうな様子の父母を見ていると、こちらまで嬉しくなるね。
錬金術は人の役に立ってこそ……だ。
「これでもっと愛を深められるよ……ワイズ……」
「スモーリー……」
と、思っていたら、いきなり空気が変わった。
ひしっと抱き着く父母。
〔おとんとおかんは本当に嬉しそうやぁ~〕
〔尊し……〕
「二人ともちょっとこっちに」
兄弟が出来かねぬ雰囲気に、慌ててリリスたちを別の部屋に連れていく。
〔そない慌ててどうしたん、ルー?〕
「あ、あのね! リリスとディーガードの部屋も造ったの!」
〔わてらの部屋ぁ!? ほんまかいな!〕
〔予想外……〕
自室の横に、彼女らの小さなお部屋を造っておいた。
一応二人のベッドも用意はしてある。
「気に入ってくれたかな……?」
〔ありがとう、ルー。嬉しいで! でもな……わて、いつもルーと一緒にいたいねん!〕
〔右に同じ……〕
リリスとディーガードにギュッと抱きしめられる。
どうやら、まだまだ同じ部屋で住みそうだ。
「私も二人と一緒にいたいな」
ということで、彼らの部屋は簡単な保管庫として使うことになった。
〔ルーの部屋はどないしたん?〕
「ああ、私のお部屋は……」
自分の部屋だけは特に変えてない。
今までの日々を想うと、もう少しこのままで過ごしたかった。
このこじんまりとした部屋で過ごしてきたからこそ、前世の記憶を取り戻せたような気がする。
また成長したら模様替えでもしようと思う。
すっかり豪華になった食事を終えて、父母に頬ずりされていると就寝時間になった。
「「おやすみ、ルー(ちゃん)」」
「おやすみなさい、お父たま、お母たま」
父母を寝室に見送り、私もベッドに入る。
リリスの私の枕の端っこに頭を乗せていた。
〔家は大きゅうなっても、ルーは小っちゃいなぁ〕
「リリスも小さいじゃん」
〔わてが言いたかったのは、そういうことじゃないねん。あんなぁ…………んぁぁ~〕
リリスは毛布にくるまるとすぐに眠ってしまう。
いつの間にか、壁際のディーガードも目から光が消えていた。
二人を見ながら私も目を閉じる。
これからもみんなで幸せに暮らしていきたいな……。
そう思っていたら、知らないうちに私も寝ていた。
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