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命の輝くこの星で  作者: 天敵サボり
入学式
16/17

二人の行く道



 もう何度も聞いた試験を終える号令。だが今までとは違い、友の人生が大きく変わる試験が終わった事も意味する。モニターで常に確認し続け結果はもうすでに分かっている、それでも未だに冷めない闘志が悟と雛からひしひしと感じる。


 結果───悟19匹───雛20匹


 二人共に戦い方は違えど近しい記録となった。

悟は前半で大胆な作戦を取り、なりふり構わず戦い続け消耗し、あそこまで追い詰められたのにもかかわらず、一度距離を取り、少し回復してから少しでも、と記録を伸ばした。

 それとは対照的に雛は、前半であまり大きく動かずに少しづつ確実に倒していった、そして試験終盤にて能力の調整を終えたのであろう、常に一撃で、けれど必要最低限のエネルギーで、途中で止まることも休むこともなく動き続け、ほんの少し悟を上回った。




「すごい!ちゃんと二人ともやりきった!」

「あぁ、ここまでやれれば上出来だろう。後はもうほかの受験生次第だ」

「やっぱりあのお二人も強いんですね……私少し自信がなくなっちゃいます……特に雛さんなんか最後の数分で10匹以上倒してましたし……」

「いや、あれは雛なりの作戦だし、あれ以外に記録を伸ばす方法がなかっただろうな。それに多分戦えば二宮に軍配は上がると思うぞ」

「そう……ですかね……」




 条件次第で勝敗は分かれるが、基本的な能力は二宮がかなり上回ってる。雛が勝つにはかなり厳しいだろうな。

 それから少ししてモニターから雛と悟の姿が消え会場を後にする。ケガを負った生徒は一度治療を受けてからこのモニタールームに戻ってくるため、悟は少し時間がかかるだろう。

 星人の体はちょっとやそっとじゃケガを負わないとはいえ、相手がビーストなら普通にケガをする。そういう時のためにありとあらゆる回復手段が存在する。

 最も代表的なのは、他の星人からエネルギーをもらい肉体を修復する事だろう。自分自身のエネルギーで回復しようとすると、一度エネルギーを治癒力に変換し、怪我した場所に送り届けるイメージなのだが、変換する時の効率がすこぶる悪く、人によって個人差があれど、かすり傷治すのに薪10キロから20キロ分を燃焼させるぐらいのエネルギーが必要で、大怪我をすれば自分で治し切るのはかなり難しいだろう。

 ただ他人から分け与えられたエネルギーはわざわざ治癒力に変換せずとも、肉体が勝手に修復していく様に出来ている。そのため、体の修復には基本他の星人の力を借りる事になる。

 悟のケガ自体はそこまで大きなものではないので、もしかしたらすぐに戻ってこれるかもしれないな。

 そんな事を考えているとモニタールームの扉が開かれた。




「あ!二人とも戻ってきたよ!いこ!」

「そうだな」




 軽い治療を終えたのだろう悟とかなり疲れが見える雛が戻ってきた。もうすでに次の試験は始まっているがそれよりも大事なことがある。先に試験に挑んだ戦友を労わなければ。




「おつかれ!」

「二人ともお疲れ様!すごかったよ!」

「悟大丈夫か?」

「あの!二人ともすごかったです!」

「あははは……ありがと!」

「まだ痛みはあるがとりあえずはもう大丈夫だ!」




 疲れの溜まってる雛が返事をし、それに続き悟が体の無事を伝える。

 とりあえず二人とも大きな怪我をすることも無く終われて良かった。試験結果も十分すぎる記録が出た、多くの生徒が一桁の討伐数の中、二人は20匹倒せている、これで問答無用で落とされる様な事はないだろう。




「とりあえず俺達はやりきれた!雛に負けたのは少し……いや、かなり悔しいが、それでもやれる事は精一杯やれた、悔いはない!」

「私もちゃんと出し切れて終われた。これで無理だったとしても後悔はないね」

「そして次はお前達だ!頑張ってくれ!!」

「まぁフーとナツは大丈夫だと思うけど」

「あぁ、全力でやるさ」

「まかせろ!」

「私も二人に負けないぐらい頑張ります!」

「後悔だけはしないようにするわ!」




 各々が悟達の激励に応える。まだ試験は終わっていない、俺達はこれからが本番なのだ。

 それから試験はつつがなく続いていき風兎番が近づく、それに伴い風兎の集中が増していく。

 風兎と俺は5人の中で最も付き合いが長く、常に二人一緒に居たので親友と言える存在だ。もちろん真面目も雛も悟も大事な友達だが、それ以上に風兎の存在は俺を大きく成長させてくれた。

 俺は強い、多分この場にいる生徒の中で頭一つ二つ抜いて強い自信がある。そんな俺がより強くなろうと思えたのは風兎が近くにいて、ライバルとして後ろから追いかけ続けてくれたおかげだ。




「ふーくんの番、もうそろそろだね」

「あぁ、そうだな」

「風兎!お前なら絶対に大丈夫だ!自信持って、全力をぶつけてこい!」

「そうね!ふーが無理だったら私たち二人は絶対に受からないもんね」

「悔しいがそうなるな」

「大丈夫だ、お前達の分も頑張るさ」

「…………お前さては緊張してるな」

「…………そんな事ない」

「何年一緒にいると思ってるんだ分からないわけないだろ」




 風兎は本人が察しいいくせに感情が表に出づらいため周りから察してもらう事が出来ない。俺も出会った当初はそれですごく苦労した記憶がある。

 それでもこれだけ長くいれば嫌でも多少は何考えてるか分かるようになる、そして今の感情も反応をみれば簡単に分かる。

 風兎がめちゃくちゃ緊張している。別に上がり症でも何でもないのだが、昔から自分に自信を持つのが苦手なようで、一人で何かをする事を怖がる節がある。

 ビースト退治に慣れるようにと母から無理やり実戦をやらされた時に、風兎も一緒に参加させられていたのだが、風兎がビースト討伐を始まるまでにすごい時間がかかった。そこまでレベルも高くなく非星人でも装備をしっかりしていれば全然勝てるような相手。取るに足らない相手、それなのに緊張からか風兎はほんの少しだがケガを負った。

 当時の時点でも余裕であしらえたはずの相手に攻撃をもらってしまい、緊張からくる強張りがどれだけ重荷になるかが良くわかった。

 そんなここに来るまでにも言ったが、そんなくだらないことで失敗してほしくない。




「なぁ、風兎……お前は俺の自慢の親友だ!だからすげー結果を出して俺の友達はすごいんだぞって、強いんだぞって言わせてくれ!そんなくだらない事のために頑張るぐらいわけないだろ?」

「……ハハ!そうだな、少し緊張してたけど大丈夫!そんなに何度も励まされるほど俺は弱いくない。お前のくだらないプライドのために頑張ってくるか!」

「よし!その意気だがんばれ!」

「風兎さん!頑張ってください!」

「ふーくん肩の力抜いて、あんまり考えすぎずに頑張れ!」

「今1位の水斗くんの記録、絶対に抜いちゃってね!約束だよ」

「雛、あんまり重荷になること言うなよ……まぁお前なら出来ると信じてるけど!」

「……よし!!行ってくるか」




 それぞれから激励をもらい、少ししてから教官が次の生徒達を呼びに来る。その中に風兎の名前もあった。

 これから風兎の試験が始まる。絶対はないがあいつならやってくれると信じてる。

 そうして風兎は会場をあとにした



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