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命の輝くこの星で  作者: 天敵サボり
入学式
14/17

悟と雛3



生まれた時に感じたのは孤独だった。

母は居た、父もいたしなんなら弟も妹もいた、家族と呼べる人は多かったし、友達に困った事もなかった。でも、生まれてから感じていた孤独が無くなることはなかった。

 私は強かった、弟たちと比べても、友達と比べても強かった。更に、同じ星人で年上の人達よりも強かった。

 この差はなんだろう?私に出来たことが弟たちには出来ない。年上の人達に目を付けられても何も思わない。私が普通じゃないから?

 そこで初めて強さが孤独なものなのかもしれないと幼いながらに悟った。

 今思えば『井の中の蛙大海を知らず』このことわざにピッタリの状態だった。それでも孤独を感じ疎外感を思ってしまったら最後、強くあり続けることに恐怖を感じた。この力を誰とも共感できない。誰も隣を歩いてくれない。1人で戦わなくてはいけない。

 ビーストの存在は嫌でも日常に染み込んでくる、そしてそれを倒す存在も目にして、必然的に私の立場も理解させられる。

 他者を思う気持ちはもちろん分かる。だが、当時の私に自ら背負わされた重荷は、私に向けられるすべての気持も、感情も、言葉も、何もかもが他人行儀で無責任な責任だった。せめて一緒に背負ってくれる人が、なんて贅沢は言わないから支えてくれる人が欲しかった。でも、弱い人に私を支えることなど出来ないと突き放したのも自分だった。

 隣で戦えるぐらい強い人が、せめて私が認めて後ろを歩いてくれる人がいれば……

 そんな、幼い傲慢の呪縛。そこに現れたのが私よりももっと傲慢で、私よりも弱かったけど同じぐらいの強さを持ちながら胸を張って歩く、悟が現れた。

 どうせ彼も同じだと、皆と同じ様に私よりも弱く、私が出来ることも彼には出来ず、私の孤独をより大きくしていくのだと思ったが、違った。

 彼はちゃんと強かったのだから。それも私が本気で戦えるぐらいに。 

 もし、この時現れたのがナツやフーだったらすぐに惚れていたかもしれない。でも、私よりも弱い彼が私の孤独を、不安を取っ払った。

 それから、私は一人じゃないと思える様になった。

ずっとひとりぼっちで強くも寂しがり屋の私よりも弱っちい少年が私の孤独を壊してくれたのだ。

 誰よりも先に私に安堵をくれたのだ。これから私が戦う時は彼のような存在が隣に立ってくれると思えた。でも、そんな存在は近くにはいなかったので悟に近くにいてくれるようにと、気を引こうとした。

 結果は意味がなかった。彼の方から、私に近寄ってくれた。それがすごくうれしかった。

 彼が近くに居ると安心できたから。でも、彼は近づくが隣に立つでくれなかった。私に前を歩いて欲しそうだった。でも、彼に会う前と違い、それが心地良くなった。

 それから私は今の様に変わってこれたのだ。




「今思えばあの時に悟に出会えてなくても多分ナツあたりに救われてただろうな〜」




 彼と出会えてから日常の景色が大きく変わった。

私は心の底から笑えるようになったし、弟達に感じていた距離感を感じなくなった。私と同じ様に生きて居るんだと知った。今までは弱く同じ生物だと何処かで認識していなかったのかもしれない。それでも人は大勢いて、得意不得意がある事も彼のおかげでしれた。

 だから、今も思う。




「でも、やっぱり悟と会えたことが運命だよね!」





 そんな事を思いながら私は会場の扉に入る。

ここはまだ一枚目、でも最後のセーフティーゾーンであり最後の覚悟が見える場所。

 昔から別に戦う事は怖くなかった。それよりも怖い事を知っているから。あの孤独に比べたら戦う恐怖など微塵も感じない。




「準備はいいか?」

「ええ、もちろん!いつでも大丈夫ですよ!」




 寡黙そうな教官が短く聞いてきた、それに対して私は二つ返事で返す。

 私にビーストとの戦闘経験はない、もちろん見たこともあるし、目の前で討伐される姿をみたこともある、でもそれはここにきた受験生の大半がそうだろう。それでも足がすくむ者がいる。




「そうか……では間もなく試験開始の合図がある、しばし待て」

「は〜〜い」




 なぜ戦う事を怖がるのだろうか?

私からしたら大切な人を失う方がよっぽど怖い。

それでもしまた1人になってしまったら?

 私は強い。今でもその考えは変わらない。上には上がいることも絶対に辿り着けない領域がある事も知っている。それでも私は強い、強くあれる。

 強さが孤独じゃないと知ったから。




「それでは試験を開始する。武運を祈る!試験開始!!!」

「いってきます!」




 合図と共に開かれた扉、それを確認しゆっくりと会場内に足を踏み入れる。

 いつもと変わらない大地、どこか見覚えがある気がする様な、ありきたりな街並み、そしてその中に感じる日常に忍び込む違和感、個体名スラウスの気配。

 試験開始の前から全開に感覚を研ぎ澄ませ、気配察知を常にし続けた。そのおかげで会場に入る前から何となく居場所が分かっている。




「さってっと行きますか!!」




 扉が閉まるのを確認し後戻りは出来ないくなった事を確認し、勢い良く走り出す。

 向かう先はただ一つ最も近いビーストへ

これから私は全力で狩る!絶対に悟に負けないように!

 恋人だろうと関係ない、それ以前にライバルだから。

 そうして十数秒で目的の場所にたどり着く、そして標的が目視できる位置に居る。




「なるはやでイチゲキ必殺!」





 自分でも物騒な事を言っていることは分かるが最も効率良く、そして危険のない範囲で殺る。

 左手に体内で練り上げたエネルギーを集める、そしてそれを炎へと変換する。たちまち左手に燃え上がる炎が出来上がりそれを脳内のイメージにより弓矢のごとく右手でひく。

 練り上げたエネルギーは十分、今まで映像を観てきた中で何となく強度は想像できているが、それよりも一段階上に威力調整をし炎の矢を向けて放つ。

 まっすぐに飛んだそれは、容易にスラウスの体を貫き背後にある壁までその矢の威力を刻む。




「うん!威力も発射速度も上々!」




 この一連の攻撃を朝日水斗の水弾の発射速度と近しいレベルでやってのけたのだ。威力は劣るものの十秒足らずでスラウスを倒せるだけの威力が出せるのは受験生にしてみればかなり高いレベルと言っていい。




「よし!落ち着いたら次いくよ!」





 そう独り言をつぶやきながら頭の中を整理していく。今回私はなるべく一対一の状況を作り続けないけなければいけない。

 能力の使い方的に、複数に囲まれればジリ貧でリタイアもあり得る。そうなれば合格はまず無い。なら確実かつ安全に一体一体丁寧に狩っていく。

そうして次の獲物へと向かう。

 きっと悟はまだ一体倒すのに時間かかってるんだろうな〜なんて考えながら次の獲物にたどり着く、ここでも同じ様に炎の矢を放ち一撃で倒しきった。そして少し立ち止まる。




「さて、このぐらいで大丈夫かな?調整も終えたし次にいく前にまた貯めておかないと」




 私は2体目を倒した時にさっきよりも威力を下げたその結果、スラウスを倒すだけにとどまり、後ろの壁が破壊されることはなかった。早い段階で計算通りに威力の調整を終える事が出来た。これなら満足のいく結果が出せる。

 そう思いながら、次の標的へ走り出した。







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