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命の輝くこの星で  作者: 天敵サボり
入学式
12/17

雛と悟




 ビーストとの戦闘を終え、朝日水斗がモニタールームに戻ってくる。

 記録36体、今までの受験生とは明らかにレベルの違う強さと結果を残し、しかも他の人が取らない作戦を実施して大きな怪我を負うことなくやりきった。

 試験中わざとスラウスに叫ばせた後、奴らは多方面から駆けつけた。最初は2体3体とやってきたが中盤には周りに10体以上集まっていた、流石にそうなれば攻撃を食らっていたが、それでも致命傷には至らない。それは彼の技量とシンプルに体の硬さがあったからだ。普通の受験生ならこうはいかない。

 数的不利でだいぶ劣勢に見えたが彼の自衛能力とタフさが、より一層際立っていた。更に攻撃面では終盤で見せた大技、シンプルな水による質量攻撃。通常、操作範囲を出れば操作性を失うが、それは放った場合であり、生成した水同士が繋がっていれば操作できる人も居る。そして大量に生み出した水を大きく巻き上げながら、渦を作り数体のスラウスは脚が地面から離れ、ただただ濁流に飲まれづつけ、そして絶命した。

 ダブルの才能が見せた、生成能力は圧倒的。そしてある程度一掃し一対一で見せた攻撃。

 超高密度に圧縮された火のエネルギー弾。通常、密度を上げようとしたエネルギーは反発し圧縮を拒む、それを操作性で無理やり小さくしていくことで着弾した時の反動が大きく威力が増す。

 彼の操作技術はかなりレベルが高く高密度のエネルギー圧縮によりスラウスは跡形もなくなった。

 二つの属性を操る事を許された才能とそれに付随する生成能力、それらを無駄にすることのない様に磨かれた操作性、すべてにおいて高水準。




「すごかったな……」

「風兎から見てもそう思うんだ」

「ふーくんは今みたいな立ち回り出来る?」

「出来る、と言うか俺も似たような立ち回りの予定だしな」

「「!!?」」

「へー風兎も真正面から全部相手にする感じなのか」

「夏火ならまだしも、風兎もできるのか?」

「まぁ、出来るかどうかで言われれば出来る」




 今回の記録により俺達三人はより一層気合が入る。

俺はこの記録に負けないつもりだが二人にとっては超えられるか不安だろう、二人とも今年のトップを目指してる訳だし、それに俺に追いつきたい思いもあるのだろう。

逆に雛や悟は少し自信が無さそうに見える、ここまでの最高記録は、もしかしたら二人とも超えられるかもしれなかったが、36体は実力的に難しい。二宮は、この記録に圧倒されているのか言葉が出ないようだ。




「それにしても少し鬱陶しいな」

「そうねある程度は覚悟していたけれどもね」




 俺達の近くでちょっとした人だかりが出来ている。その人だかりの話し声や内容がにかなり気が散ってしまい少し鬱陶しくなってきたのだ。主に女性の受験生が多く、その中心にいるのが今話題の人物、朝日水斗だ。




「朝日くんさっきはすごかったね!!私びっくりしちゃった」

「私も〜まさか水斗くんがダブルで、しかもあんなに強いなんて」

「さっきの烈教官相手に質問してる姿もすごくかっこよかったよ」

「あはははは……はぁ〜どうも」




 そう、モニタールームに戻ってきたばっかりの朝日水斗に女子達が駆け付けていたのだ。理由は単純、玉の輿である。

 今の時代いつ何時ビーストが現れるか分からない、もちろん国の管理により星人達が出来る限り最速で駆け付けるがそれでも被害者が出る事はよくある事だ。怪我人だけで済めばいいが死者が出る事もあるそんな危険な星になったのだ。

 もし自分が最初の被害者だったら?もし近くに誰も居らず自分だけが狙われる状況なら?ここに居る人達は少なからず力を有している、それでも自分よりも強いビーストが現れた時は?

 そう、今最も最重要視されるのが金銭でも容姿でもはたまた頭脳でもなく"強さ"なのだ、そしてここは現在の地球において最も発言権が大きく、他の国のほとんどを従えている四大大国(よんだいたいこく)のうちが一つ日本、そしてこの国における一つの世代の頂点を競う人達が集まっているのだ。こういった人が集まる事も不思議じゃない。




「あれがもしかしたら自分にも来るかもしれないと思うと憂鬱だな」

「この中だったら夏火が一番最後だし終わったらすぐに帰る?」

「最後まで見たい気持もあるけどそうしようかな」

「すまんが俺と雛は、二宮さんと風兎の試験を見たら帰ることになる」

「私達来る時もだけど帰るのも時間かかるから」

「そうか……少し寂しくなるな……まぁまだ時間はあるし、また連絡するよ」

「悪いな」

「なになに?ナツくん寂しいの〜?可愛い奴め」




 ムカつく……でも寂しいのはホントだしな。

そんな会話を続けている時でも試験は続いている、最初は雛からだが悟との番号がかなり近いためもしかしたら二人同時に試験を受ける事になるかもしれない。





「そんな雛こそ悟とどうなんだよ〜〜」

「うげ!私の話!?いいよそんなのそれよりも……」

「せっかくだし報告しとくか!俺達付き合う事になった」

「えぇぇ!言っちゃうの?」

「「「お〜〜〜」」」

「あ、えっと〜〜おめでとうございます?」

「ほら〜ヴィナちゃんが困っちゃってるじゃん」

「あぁすまない興味なかったよな」

「いえ!そんな事ないですよ」

「いついつ??いつから?」

「どっちからなんだ?」

「やっとか〜長かったな〜でも、その時期をもっと見たかった気持もある」




 俺が雛に煽られたのでムカつ……気になった事を聞いてみた、この3年間で進展してて欲しい気持ちとそのままの2人を見ていたい気持ちがあったが、ちゃんと進んだようで何より。

 



「付き合い始めたのは1年前ぐらいからだな……実は俺から告白したんだよ」

「うううぅぅぅ!!恥ずかしい……」

「え!さとくんからなの?ちょっと意外かも!」

「雛じゃないのか、確かにそれは意外だな」

「そうか?俺はそうだと思ったけどな」

「まぁ雛との付き合いも長いしこの関係が崩れるのは怖かったけど、それでも誰かに取られたくはなかったからな」

「ちょっともういいでしょ!?この話おしまい」

「私気になりますその話」

「ヴィナちゃんまで……ちぇナツを煽るんじゃなかった」

「よし!じゃあ昔話も込めて俺と雛の馴れ初めからいくか!」




 嬉しそうな悟と引き換えにものすごく恥ずかしそうな雛、これはリベンジ成功か?

 まぁでも二人とも幸せそうで良かった、昔から仲が良かったし、いずれはこうなると思ってたから特に驚きも無いし、むしろ祝ってやるべきだろう。

 まぁ今の恥ずかしいけど嬉しい気持も隠しきれてない雛の顔を見れただけで言った価値があったな。



 そんな会話を続けていたらすぐに時間は過ぎていく、二宮も楽しそうに二人の話を聞いてるし退屈しなそうでよかった、そしてそんな話題の二人の時間がやってくる。




「ここまでだな………これ以降の番号の人達も、もうじき声がかかる準備していくように!!」

「いよいよだね」

「次呼ばれるのは俺たちだな」

「悟私の応援がなくて大丈夫そ?」

「ふ、大丈夫だ!俺に出来ることを目一杯やるだけだ。それに雛も一緒に戦ってると思えれば自然とやる気も出てくる」

「なら大丈夫そうね!」

「お!ノロケか?」

「そんなんじゃない!!」

「冗談だよ」




 今ちょうど二人の前の人達が呼ばれて試験会場に向かっていった。今やってる人達が終われば次に声がかかるのは悟と雛だろう。

 少し前から逆算して分かっていた事だがやっぱり二人とも同時の試験となった。もちろん俺たちも二人の応援をするが、互いの応援がなくても大丈夫か不安だったが、悟と雛にそんな事心配無用だった。

 二人とも頼もしくなっていて、そして二人の関係も成長しいてい本当に嬉しく思う。

 クラスは違うかもしれないがこの2人も受かって二宮さんも受かって、そして俺達も受かって、そしてこの6人で並んでこの学校に通うことが楽しみだ。

 そしてたった今一つの試験が終わった。




「それではこれより呼ばれた者は試験会場に移動してもらう!今井悟!……」

「それじゃあ行ってくる!」

「私も一緒に行こっと!」

「頑張ってください」

「頑張ってね二人とも」

「あんまり気負いすぎるなよ」

「二人とも合格出来るって信じてるからな」

「「みんな!ありがとう!!」」




 こうして二人はモニタールームを後にした。

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