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黒狐の少女と優しい少年  作者: 龍美邦彦
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島野雛子の思い出

島野雛子14歳、身長138cmの小柄な女の子。

宗一と美奈に出会ったのは幼稚園入園から。

小さいころから臆病でよく絵を描くことをしていた。外で遊ぶのは苦手だった。

入園当時の宗一はあまり人を寄せ付けない性格であった。いつも遊ぶ時間は寝てたり時々木のアスレチックで一人で遊ぶぼっちだった。雛子はあまり気が合わない感じがしていた。

ある日雛子がにゃんえもんというとある子供に人気のアニメのキャラクターを描いていた。

ある少年達が雛子の絵を見てからかう。

「これなにー?」

「えっと…にゃん…えも…ん」

「にゃんえもんじゃないよこんなの」

「にゃんえもんだもん…」

「違うよなーなぁ」

他の子に伝わっていきちょっと注目されだす。こういう空気が一番苦手である雛子。

その時の宗一はまだ注意したりはしない存在だった。

ただ散々いわれて言い返せない雛子が泣き始めて先生が少年たちを諭すがまだわかりにくい年である。

グスグス泣いている雛子に近付くのは宗一であった。他の子同様に言われるんだろうかと思い恐怖していたら。

ハンカチを渡して。

「…絵の描き方教えて…」

「え…小暮君?でも私…下手で…さっきも…」

「うちのおかんがいってた。人と比べることほど無駄なことはないって。だから絵の描き方おしえて」

雛子はハンカチで涙を拭き宗一の顔を見た。いつもムッとしている宗一ではなく何故かちょっと恥ずかしそうな顔をした宗一。何気ないけど優しい声だった。それから絵を習いに宗一は雛子と遊ぶようになる。

いつの間にか自然と仲良くなっていき宗君と雛ちゃんと呼ぶ間になっていった。その中に美奈も加わっていく。なんてことない園児のほのぼのとした日常だ。


ある日ドッジボールを組でやっていた。

雛子はこういう遊びが苦手だった。相手側に保育士の女先生を取られ絶望していた。大人に勝てるわけないと思っていた雛子。宗一と美奈が同じグループだったのがちょっとした救いだった。


始まると園児優先に考える先生ほとんど逃げにまわる。相手側は強気でボールを他の園児にあてていく。

雛子も逃げる。しかしふと見ると5対6と接戦していて先生は時々ボールを投げていた。そして雛子が逃げている最中にこけそうになる瞬間宗一が羽交い絞めな形ではあるがなんとか支えてくれたのだった。

「宗君ありがとう!」

「大丈夫?」

「うん!」

雛子は単純にうれしかった。

そして終盤になると美奈がアウトになり外野へいく。残ったのは宗一と雛子、相手側は先生と2人の園児。かなり危ない状況だった。

先生がボールを持って軽くではあっても大人の力で投げる。外野に渡す先生、そのあと外野から狙われる雛子。

「あうっ!」

もう逃げられないと思ったときだった。

宗一が前にでてボールを腕に当てられる。

「よっしゃー!」

と喜ぶ園児しかしボールは空に上がっていて宗一はギリギリキャッチする。

「あっぶね…」

キャッチされた園児は。

「うそー!」

とファインプレーの宗一にびっくりしていた。

宗一は美奈みて頷く、美奈も頷く。

宗一は目線を園児に向けて投げる、がボールは斜めの外野へと飛んでいた。いわゆるフェイントだ。そして運動神経が良い美奈にボールがわたり横から先生を狙う。先生はびっくりしていたがなんとか先生はキャッチする。

先生は雛子のことを考え宗一をまず狙う。

「いくよー小暮くん!」

宗一は力を抜き膝と腰をリラックスさせる。

子供からしたら驚異的な大人の軽い一撃を宗一は柔軟に体を下げキャッチする。

美奈を見て頷く宗一をみてもう一回来ると思った先生は用心する。他の園児も緊張していた。

今度は園児の方を向いてまっすぐ投げるフェイントをして先生のひざ下を狙ったのだった。園児のボールと言えど宗一のボールは他の園児よりひと際早く先生のひざ下に向かっていく。さすがに園児の体格からフェイントとひざ下を狙われて足を上げてよけようとする先生だが間に合わずほんのちょっとヒットして外野にボールが渡る。美奈は唖然としている園児1人を狙う。あてられた園児もアウトになり2対1になる。

「すごいねー!小暮君!あっはっは!」

先生は負けても逆に関心させられていた。

最後の一人は逃げている雛子を狙う。

「おらー!」

しかしまた立ちはだかりキャッチする宗一。

「やっべー!」

後ろへ避難する園児に全力で投げる宗一。園児はギリギリ避けるが美奈が後ろに控えていた。美奈が投げて最後の園児もあてられる。ゲーム終了だった。

MVPの宗一はみんなの人気者になった。みんなが宗一をすごいと称えていた。そんな宗一を見て何故か自分に腹が立った。自分はなにもできなかった。いつもおっとりしている雛子は家族以外で初めて腹が立っていた。自分に対してだ。しかし何ができるかわからないまだ園児の雛子はむしゃくしゃしてその後絵を描いていた。宗一がみんなに遊ぼうと呼ばれていた。


何故か悲しい気がする雛子、でも宗一は。

「俺はいいよ、ちょっと他のことしたい」

と言い雛子に。

「雛ちゃん絵描こ?」

「やだ…宗君外で遊んで」

身勝手な言い方だった。宗一を否定したのだった。

「じゃあ俺もやだ。雛ちゃんと遊びたい」

「宗君とじゃ…」

泣き出してしまった。理不尽な言い方をしたのは自分なのに、自分と宗一とでは子供ながらにつり合いができないと思い込んでしまったのだ。

先生が来て話を聞く。

「だって…ヒック…宗君のが…ヒック…すごいんだもん…」

先生は宗一と雛子を合わせて言う。

「雛子ちゃんは小暮君のことが嫌いなの?」

首を横に振る雛子。

「違う!ヒック…好き!」

「なら小暮君は雛ちゃんのこと嫌い?」

「好きだよ」

園児ならでは好きの思いで言った両方である。

「なら雛ちゃんはなにが小暮君の嫌なのかな?」

「一人占め…ヒック…してる…わたしが…ヒック悪い…ヒックのに…」

宗一は雛子の感情を悟ったのか。

「気にしちゃだめ、雛ちゃん」

「うん…ごめん…ヒック」

「雛ちゃん?小暮君はね?お母さんがいつもまっくらな夜にお仕事で帰ったら夜の為に休んで遊べないの、だから小暮君と遊んでくれるかな?」


「へ?お父さんは?」

言い方に悩む先生に宗一から口を出す。

「うち、お父さんに会えることが少ないんよ」

寂しそうにうつむく宗一。

「そーなんだ…」

何かわからないけど寂しい思いをしているのはわかった雛子。

「ごめんね…宗君…」

「なんかごめんね雛ちゃん」

「はい二人とも仲直りの握手しよ?」

先生は握手をした二人にほっとして。また机に戻って二人をみていると、絵を描いて遊びだすのを見て安堵した。


雛子の絵をからかう園児に。

「じゃあお手本みせてよ」

と宗一が言って一時組では絵を描くブームがあった。




その後二人は卒園して近くの小学校に入る。小学校前日に。宗君と同じクラスが良い!と駄々をこねて泣き両親を困らせたりもした。想いが通じたのか同じクラスになれて雛子はうれしかった。遊び時間になると雛子も気の合う友達ができていった。が宗一は何故か一人また浮いていた。宗一は噂で武道を習っていて、中々友達ができないでいた。美奈は時々話しかけるが何故か素っ気無かったの。


雛子はなんとか宗一のイメージを変えようとみんなに幼稚園のことを教えるが。まだ小さいゆえに氷のような眼の宗一に似合わな過ぎてあんまり周りは信じていなかった。


そんなとき宗一が休憩時間にクラスからでて行ったときだった。宗一がいじめにあっていたのだ。

(なんで?)

雛子は陰から聞いていると。

「お前武道習ってるからって調子乗んなよ?」

「そうでそうで」


5人くらいの違うクラスの子に一方的に殴られていた。

でも宗一は何にも感じないようにふるまう。実際あんまり痛くないからだ。


宗一は思っていた。こんな腕まっすぐにしてパンチしたら俺が前にタイミングよく一歩出るだけでこけるだろうに。


雛子は終わった後これは先生に言わないといけないと思い先生に言いに行こうとする。が宗一の方が早く先生に言いに行ったのに先生は他の生徒に構って宗一の話は聞いていなかった。


(先生!宗君が言ってるよ?!)

心で叫ぶが宗一が言っても耳に入らず宗一は先生を軽蔑のまなざしで後を去る。

こんなことダメだ!と思うが引っ込み思案な雛子どうしていいかわからなかった。そんな感じで小学一年を過ごして。2年生になった6月くらいに宗一はある生徒が突っかかって来たのでちょっとこかしたところを見られて先生に怒られていた。しかも同じ先生にだ。


雛子はどうして宗君だけが…と悲しくなる。

その後だった。

宗一がイライラしていた時一年生の時にいじめをした子と揉め宗一は本物の突きを相手にぶつける。相手は野球クラブのリーダー的な存在だった。だが宗一の前ではガードしかできず先生は後から相手の方だけ宥める。

雛子はどうしていいかわからなかった。美奈に後から一年の時のことを話した。

美奈は。

「それでか…わかった、雛、このことは言わないほうが言いかも、うちの道場の先生に言っておく」

それだけ言う。

(なんで…)

美奈だってわかってるはずなのになんで?そんなことを想っていたらその何日かたった後先生が違う学校に移動になった。

美奈は雛子にいう。

「この地域ではうちの道場の先生とここの校長とか顔が広くて仲良くてさ、先生にいったら、任せなさいっていってたから」


「でも宗君は気づいてないよ?」

「あいつには知らせないほうがいいんだよ…あいつ道場でも先生から直々に指導されてほんとうちの中…いやあたし試合には出るけどあいつより強い奴知んないんだよね、あとから全部が覆ったらなんかそれはそれであいつ一人さらにういちゃうでしょ?」


美奈の道場でも一人の宗一が学校でさらに一人になるのはだめだと思い口をつぐむしかなかった。

それから雛子は宗一を見守ることにした。時には話しかけもした。

「おはよー宗君」

「おはよー雛ちゃん」


小学生ではこのくらいだった。

上級生になると宗一は普通にクラスになじんでいたがはやり友達は少なかった。のちに雛子はクラスは変わったこともあったがいつも宗一を目で追っていた。5,6年の時に杉原健吾と村中雄輔という友達ができほっとしていた。雛子の周りも浮島奈子など健吾とつるんでいていつの間にか6人のグループができていた。


でも何故か友達を想う想いより宗一に対しては何故か特別な感情が芽生えて行った。奈子に今までのことを話すと。

「恋愛対象としてというより母親的視線に近いきがするなぁ…」

「でも宗君みてると胸が苦しくなるよ?」

「じゃあ告白してみてその後考えてみてもいいんじゃない?」

「え…えぇ!…告白は…えの…あの…」

「母性的に始まり異性として見ても好きになっていくってことってあるかもよ?」


中学生になってから奈子の発言はその通りになって行き今では宗一のことを異性としてみている。



そして日曜の朝。昨日のことを思い出し顔を真っ赤にする。耐えきれず昼頃に美奈にだけ報告した。美奈は見られていたからと思い美奈には相談をする。

美奈からは。

「大丈夫。釘は指しといたから」

というメッセージを送られて。

「どういう意味なのぉ…」

と困惑する雛子。

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