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黒狐の少女と優しい少年  作者: 龍美邦彦
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奇跡とキレる宗一

神々はかの地から見ていた。別にその場にいないからと言って、見えないわけではないのだ。

「はたしてできるかな?あの子に」

「我らが施した人の子だ心配あるまい、あの土神もいることだし」

「確かに、あの時は神の力を封じられていたから酒で倒したが、神力を使えばあの土神なら事足りるだろうに、人の子が好きすぎるだろう」

「それだけ人の成長を近くで視たいのだろう、卑しいやつめ」

須佐之男命と軍神建御雷神は酒を酌み交わしながら語っていた。

「父上、本当にできるのですか?あの宝剣が?」

宇迦之御魂神が訪ねると。

「ふむ…前例がないとはいえお前には見えぬか?」

須佐之男命に宇迦之御魂神は答える。

「そうではなくあの人の子が生きながらえそれを手にできるかどうかです」

「それは見ていればわかる。今はこれを肴に一杯やる。それだけだ」

宇迦之御魂神は暴れん坊だったはずの父が随分と大人しくなったと思うのであった。






(いい…カ…ゲンに飲まれろおオオオォ!!!!)


(お前が…俺に…飲まれろおオオオォオ!)


内面では必死に二つの精神が一つの魂を奪い合っていた。どちらかが自分の心に飲まれる闘いをしていた。人の精神でありながら水神の八岐大蛇の精神と互角で戦えていたのは霊力が自分の心に寄っていたのが大きい。しかし龍もなかなか折れてはくれなかった。


(すごいな!宗一君!さすが私の見込んだ人の子!)

「丸聞こえだぞこの…糞土神ぃぃぃぃいいい!」

踏ん張っている因幡に聞こえており。

「すまないね、ちょっと興奮してて漏れていたよ」

「てめぇが本気だせば一瞬で終わることだろうにぃぃい!」

こっこも日輪も力が限界に来ており会話は聞こえていなかった。



棗たちは矢の準備ができたが日輪達を狙わないように端っこの首に狙いを定める。

「お嬢様!早く!」

春奈が慌てるが。

「弓道でこんな角度無いわよ!」

苛立ちを見せるが集中に徹する棗。

「…」

半次郎は主の邪魔にならぬように無言で事を見ていた。


集中して弓が光り出し弓へと力がまた注がれる上空を狙う棗は集中力MAXだった。

また放たれる一筋の光が、外れたのだった…。


「嘘…」

「…マジですか?…」

「…」

全員が絶句する。棗が呆然としていると半次郎がすぐに呼びかける。

「こんなこともあろうかと!」

「あんたそんなキャラだったっけ?」

「悠長なこと言っておられますか?!お嬢様!次の札はもう用意しておりましたぞ!春奈!」

「は!ハイ!あ…もう最後の矢です…」

「なんで三本しか持ってきてないのよ!」

棗がまくしたてるが。春奈も言い返す。

「こんな状況になるなんて思わないですよぉ!」

「そりゃそうじゃな…」

「もういいから早く頂戴!」

「ハイ!」

すぐに矢の先端に札を付ける春奈。

これに託す半次郎。

また集中する棗だった。





「次は当たりますよ?」

「なぁぁぁあにぃぃぃぃがあああだああああ????!!!!」

もはや因幡だけの力で首一本が斬られようとしていた。

こっこも最後の力を振り絞る。日輪はもう虫の息だったが少し…ほんの少しだが力を込める。

「こっこおおぉ!思い切り蹴りつけろぉぉおおお!」

こっこは因幡に少し力をもらっており空中移動を少しできるようになっている。因幡が最後の力を収束させるがまだ及ばないと悟りこっこに命令する。

「あたしもぉぉおお…ラスパだぁあああ!」

ラストスパートを叫ぶ因幡。

「はい!」

こっこはすぐ反応して全力で薙刀の先の峰を蹴り上げる。

そして頭が一つ落ちるのだった。

「がぁあああ…もう無理…はあ…はあ…奥さん…あとは…はぁ…この神様に」

「でも…はぁ…宗一が!…はぁ…」

「もう任せるからな!この土神ぃ!こっこぉ!一旦奥さんと一緒に降りるぞ!」

こっこはこれ以上は因幡にも危険が及ぶと感じ日輪を説得し。一旦空中から降りることにする。

「がんばれー!ソウくーん!」

「宗一!!!」

三人は棗たちのもとに戻る。


棗は日輪達がいた場所が丁度真ん中だったのでこれを見逃さず集中する。

「もう外しませんわ!!」

「…」

「…」

棗の集中力を欠かせないように無言で見つめる従者の二人。

矢に最後の霊力を込め棗は頭のどの部分にでもあたるように狙う。

一筋の光は天空の予想というより予知に近いもので必中すると察していてその通りに矢が首の一つに当たる。


「やりましたわ!」

「あとは精神にどう影響するかですな」

「よく頑張りましたお嬢様!」

後は土神と宗一のだけになった。



と思っていたら先ほど外した矢が落ちて首の一つに当たったのだった。

「え…?今なんか…」

「ふむ…奇跡とは妙な時に起こるものですなぁ!」

「ある意味占いより当たりましたね!」

「嬉しいのか自分ではわからないわ…とにかく宗一様!がんばれー!」



(ぐおぉぉぉぉおおお!)

(往生際わるいぞぉぉぉぉおおおお!!!この腐れ龍がぁぁぁああああ!)

精神の闘いはもうあと少しだったが決め手に欠けていたが。一つの首が斬れたことと二つの魔封じの矢が追加されたことによりさらに大蛇は劣勢になる。

(我はぁぁぁぁぁあああ!!!!敗けぬぅぅぅう!)

最後の力を振り絞る大蛇の精神だがやっと精神と霊力が追い付いてきたのもあり宗一は今できるありったけの力でヤマタノオロチの精神を自分の中に飲み込み上げる。

(「俺ん中で暴れんなぁぁぁあああああああああああ!!!!」)

最後にいつも怒らない宗一がもう冷静を隠さないほどの言葉で内面と外面で叫ぶ。

そして最後に龍の精神は悟る。

(我が…また…いや…今度は人の魂に…飲まれるのか…)

そしてまばゆい青い光が収束して首と尾の霊体は消えたのだった。勝利したのは宗一だった。





天空が宗一を空中で抱っこして囁く。

「見事です、宗一君。そして初めてみましたよ…人が自分で作り出した奇跡という物を!やはり人と言うのは楽しい存在です!」

満足したのか天空はすぐに日輪達のもとへ宗一を連れて行く。



ちょっとした後の話を書いたあとまだ話続きます。

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