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黒狐の少女と優しい少年  作者: 龍美邦彦
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ヤマタノオロチ

宗一は夜中にうなされる、周りからも嫌なその空気がただよいだす。

(許さん…許さんぞ…あの男!…)

宗一の中で何かが叫ぶ。

(あの男ってだれや!…俺は誰なん!…)

宗一も夢の中で叫ぶ。暗い中からなにやら蠢く大きい何か。それは神々があの世で浄化していたが浄化しきれず悩んでいた魂、宇迦之御魂神が父である須佐之男命が策を練り殺した龍。所説では本当は川であった、または賊だったなど色々あるが、かの龍の魂は存在はしていた。

(我は大蛇…八岐大蛇!)

夜中の11時に半次郎は空気がおかしいことに気づきノックする。

「宗一殿!大丈夫か!?」

(宗一…?俺は…我は…)





天空はアパートの近くにいた。こっこのアパートだ。

(彼女を連れて行くかどうか…結界のことも気にしている様子でしたしこのことはあの神使にはきづかれているでしょうね)

「なーに人のアパートの前で一人思ってんだ?わざわざあたしの霊位まで下げてまるで呼ぶように思いやがって」

「おやおや?なんのことやら?」

「とぼけんなよ天空様よー…」

その神使は今は見習いを育てるためアパートの管理人になった女神使だ。

「こんばんわ、因幡さん」

「ったくうちの子どこに連れて行くって?」

「いえ…この状況どうしたものかと…ほら他の子も気づき始めてますよ?」

「うーん…危ねえとこには連れて行かせたくねぇんだがなぁ…」

「まああなたが嫌ならば私一人でどうにかしますが」

アパートの見習いたちが続々と現れる。

こっこが初めに出てきて。

「因幡さん…なにこれ気持ち悪い…それに天空様?」

「なんだよこの空気…って人がこんなときに?だれですか因幡さん?」

「うー…怖いなぁ…」

因幡はみんなが出てきて少し面倒くさそうにタバコを吸う。

「あぁーこの方は土神の一柱で天空って方だ、一応挨拶しとけ」

みんな人にしか見えない人化の術に驚き挨拶する。

見習いの一人が疑問をぶつける。

「神様なら出雲にいるんじゃないんですか?」

天空は簡単に答える。

「一日だけですが会いに行きましたよ?仲間程度にだけはね」

こっこは天空が夕方の結界に今の状況で何が起きてるのか聞こうとしたが。天空は先に心を読んで答えた。

「宇迦之御魂神が八岐大蛇の魂を宗一君の魂と融合させました」

こっこや見習いどころか因幡まで驚く。

「はぁ!?あんなバケモンなんでいまごろ?!それガチかよ!?…ったく」

こっこは宇迦之御魂神がなぜそんなことしたのか真意がわからず天空に問う。

「なんでそんなことを…」

「知れたこと…宗一君ならあの魂も飲み込み成長すると踏んでのこと」

「っでその宗一って子、いまヤベーんじゃねぇのか?」

「えぇ、危ないですよ?」

「あんたのお気に入りなんだろ?いいのかよ?放っといて?」

「こっこさん、見たいとはおもいませんか?人が真に成長する瞬間を?」

「なんで私の本当の名…いえそんなことはもう知ってたんですね?それよりソウ君は大丈夫…なわけないですよね?私はどうすれば?!」

「あの龍のことです、暴れるでしょうね、内側から宗一君を飲み込もうとするでしょう」

「助けに行かないと!」

「ええ、私も行くところでした、一緒に行きますか?」

因幡が一応止めに入る。

「こっこ…もしかしたらかなり危ないぞ?」

「わかってます!ですけど今日お母様と約束したんです!でもそれよりもソウ君が!」

混乱しているこっこに因幡がやさしく頭をなでる。

「しゃあない、この神様は怪しいからあたしも行ってやる、だが危ないと思ったら即引き戻すからな?

?」

「はい!因幡さん!」

「ふっふっふ…」

天空はこんな時でも笑っていた。

(こういうときに笑いが出る…信用がおけない…か…清明が言うはずだな)

約1000年前のことを思い出す。




「天空はほんと信用できへんなぁ…」


ある時清明が吐いた言葉であった。




宗一は何もわからない白昼夢のような感覚で周りをみた。

「なんなん…気持ちわる…なんか寒いし…」

何か聞こえる気がする、宗一殿!と湊半次郎が叫んでいる。空気を感じ日輪や棗、春奈も近くにいた。皆が叫んでいる。棗に至っては宗一様なんて様付けで呼んでいる。

(夢にしてはリアルやなぁ…棗ちゃん…様ってなんなん…)





鶴美の霊は宇迦之御魂神が見えなかった。こっこのことは知っていたが何をしたのかはわからなかった。何かされたのは日輪に知らせていて危険視はしていたがこれは想像の範疇を超えていた。




「宗一様になにが起きたのですか?日輪お母様?」

棗が日輪に聞いたが日輪にもわからなかった。

「宗一!」

宗一は半身を起こしていた。意識があるようでない、それどころか宗一ではないなにかになっていた。

「どうしたん…おか…ぐぅ…なんか気持ち悪い夢やな…」

「夢じゃないわよ!宗一!」

「はぁ…はぁ…夢…じゃ…な…い…?」

いまだに信じられないような感じの宗一にみんなが困惑する。



他の人から見た宗一からは魂から漏れ出す霊力が形を成して後ろの腰あたりから八つの尻尾のようになり首からは八つの異形の首が伸びているように見える。電気がついていない分余計に怖く見える。



だんだん気がはっきりしてくるが内側からはっきりと聞こえてくる声がする、それは日輪や棗たちにも聞こえていた。


『スサノオを出せ!喰いちぎってやる!!』


咆哮のように聞こえてくる声にみんなが疑問に思う。

「あの姿…まさかとは思うが…」

「湊さんなんなの?!宗一は?…え?お義母様?」


『ヤマタノオロチ…』


「嘘…?そんな…なんで?あの子が生まれた後はそんなものはなかったのに!?」

「日輪殿!もし美鶴殿の憶測が正しければ…かの龍は水神の一柱ともいわれているものですぞ?!そんな力がここでさらに高まればこの家どころか周りに被害が出ますぞ!?」

「私は逃げません!あの子は私たちの子なんですから!」

「春奈!あれを!」

棗は春奈に命令し取り出したのは弓矢だった。

「それは?まさかそれを宗一に?!」

「もしあの異形の存在がもし八岐大蛇ならばこの雷上動のレプリカでは相手になりませんが…これに札を付けて放てばどうにか…」


いまだに動かない宗一と霊体の尾や首はまだ伸びようとしていた。

しかし部屋の中はいっぱいになっておりもうすぐ壊れようとしていた。


「実態にまで影響するほど…早くお嬢様!?」

「わかってる!!」

「お願い、誰か!!」



一瞬一本の霊体の首が日輪達を薙ぎ払おうとしていたら激しい音ともに守られていた。


「遅くなって申し訳ない日輪さん」

「ソウ君!」

天空が間一髪で日輪達を丸い結界で守っていた。その中にこっこもいた。

「あなたは麗良ちゃん?なんで?」

「それよりソウ君が?!ソウ君!!」


棗は一瞬ではあるが天空に守られている間に集中して札付きの矢を宗一本人ではなく霊体の首の一本を狙って撃とうとしていた。棗が弓に霊力を込めると矢と札にも力が注がれていく。光が収束し棗から矢が放たれる。


閃光のように光輝き放たれる矢は狙っていた首ではないが一本に当たっていた。

「宗一様!!今魔封じの矢を撃ちました!!なんとか!…」

もう神に祈るしかないが神と言われる存在は今二柱しかこの場にいなかった。

天空はもう神化状態であり一応人の姿ではあった。

「宗一君眼を覚ましなさい!」

魔封じの矢が少しでも聞いているのか天空の声に反応する宗一。

「て…く…せ…あぁぁぁぁぁああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

霊体の龍と宗一が内側で反発しあう。

(貴様は我だ!従え!)

「だ…まれ…」

(お前が)「お…れ…」(に従ぇぇぇぇえええ)「ぇぇぇえええ!」

「ふむ…内面はしっかりしているようです。今あの龍を制御しようとしています」

「あれで?内面が?!」

こっこは一応説明する。

「天空様位になれば心が読めるようになるんです!内面がしっかししているということはまだ飲み込まれてないんですよね?」

「はい…大丈夫、彼の力はこんなものじゃないですから」

「宗一様は何の力ももってないのでは??!!」

棗の言葉に半次郎も知っていることを言う。

「宗一殿は力が無かったと聞いておりますが違うのですか?日輪殿?!」

日輪は願うしかなかった。半次郎の言葉も聞こえないほど宗一を見つめ集中する。

『(どうにか…あれなら…!)』

美鶴が憑依して閃いてすぐに倉庫に走り急ぐ。戻って来た時布に撒かれた長い物を持っていた。

「これならどうにかできるかも!」

「それは?もしや!」

日輪は封じの紙を破り布から薙刀を取り出す。

「それは!無天!…それならば!しかし危険じゃ!日輪殿!」


「私の息子です!あの龍の首を何本か切ればなんとかなるかもしれない!…」

天空はこうなることも予測していたようだった。

「湊さんにお嬢さん方は外に出たほうが良い。私はこのまま日輪さんを守ります」

「日輪さん貸してください」

こっこが決意した眼で日輪に語り掛ける。

「ダメこれは私の役「私の恩人で名づけ親なんです!」」

「え?…どういうこと?」

「私本当の人間じゃないんです…説明はあとでします!恩人の母親を危険にさらしたくはありません!私の母親でも同じことをするはずです!お願いします!…」

こっこが何者かはわからないがその眼力は日輪に負けていなかった。しかし日輪は断った。

「私があなたの母親ならあなたの事守るために自分の身を危険にさらすはずよ?ありがとうねレイラちゃん…」

日輪は天空と一緒に宗一のもとへ行こうとする。その間も首や尾は暴れもう天井はなく星が見えていた。

天空が本気を出す。宗一を空中へと移動させる。天空も日輪を連れて空へ連れて行く。

「宗一君!君の力はそんなものか!?」

宗一に語り掛ける天空と薙刀で首を斬ろうとする日輪。しかし首は日輪の腕力では斬れなかった。

棗たちはもう一発弓矢の準備をしており、こっこは叫ぶ。

「因幡さん!お願いします日輪さんの力になりたいんです!」



外で傍観していた因幡はタバコをコンクリに潰して。

「しゃーねーなー…」

因幡は一瞬で移動してこっこの目の前に現れる。

棗たちも存在に気づくが因幡はこっこを連れて天空と日輪の所まで一気に飛んでいく。

「奥さん、あたしらも手ぇ貸すから一気に行くぞ?」

二人が加勢に来る。この中で一番力のある因幡が中心となり無天の先を握り首にグイグイ傷を付けて行く。

「こりゃ人の力じゃ斬れねえじゃねぇか!この…!野郎ぉ!こっこぉ!もっと力だせ!」

「はい!!」

因幡とこっこと日輪が全力を出して

やっと首の半分に刃を食い込ませる。苦しむように首の先の口が吠える。






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