神社とこっこと神様と猫助
宗一は秘密がバレた日、周りを警戒しながら一人神社によった。
「こっこーいないのか?」
昨日はたまたまだったのだろうか、黒い狐は現れない。宗一は神社の近くの木のベンチに座りちょっと待ってみる。すると黒い狐は現れた。足元にすり寄ってくる。
「こっこ!おう可愛いなぁ」
野良ではあるがなつかれるとやはり可愛く感じる宗一。鞄からタッパを出してこっこの前でふたを開ける。
「狐と言えば油揚げかなってな、味はあんまり保証しないが食ってくれ。約束だからな」
こっこは油揚げを見て宗一の顔を見た後タッパに口を入れ油揚げを食べだす。食事中だが頭をなでる宗一。
「おいしいか?まあいいや」
しゃがんでなでながら一人事を言う。
「流石に野良の狐を飼うわけにはいかないけど…お前さんここに住んでんのか?」
油揚げをを食べ終えまた腹を見せてなでさせるこっこ。
「やべぇ、毎日なでてやりてぇ…可愛いなぁ」
野良ゆえに懐くこっこが可愛くてたまらない宗一。ふと思いだす黒狐麗良のこと。
「そういや今日転校生がきたんだけど普通に可愛かったなあ、でもなんか不思議な感じでさ、俺とはなんか波長があいそうにねぇな」
宗一は令嬢のような綺麗すぎる麗良のことを不思議と感じ、あのタイプは多分あんまり素を表にださないタイプだなと思っている。
「まぁお前がいれば今はいいんだけどな、ていうかお前に話したことがみんなにバレたんだけどなんかしってるか?ってな…動物になにかできるわけでもないのに」
宗一はこっこをひょいともち腕にすっぽり覆うように抱きかかえる。こっこは逃げる様子もなくおとなしくしている。
「お前ほんとに俺に心開いてんのな。あぁなんか可愛いなぁ…」
こっこは抱きかかえられていたがふと何事か思いぴょんと宗一の腕から逃げる。
「やっぱりまだ早かったかな…まぁいいや、またな!」
そんな神社のやり取りをして家に帰る。
家には母はもういなかった。仕事に行ったのだろう。宗一は基本真面目で優しいというよりやおいという性格があっている。確かに優しい、しかし押しに弱かったり長いものには巻かれろ的な性格であり。自分自身そんな性格は嫌らしい。
中学生というものは流れに任せて生きるみたいなとこがあり、しょうがないものなのである。
その流れを感覚的にはあるものの乗りこなせなせない自分も嫌で思春期の負のスパイラルである。
ふと思い出す神社の様子。おもむろにスマホで神社を検索する。しかしここらへんに神社はないと検索にでる。そんなはずない。あの神社は宗一が小さいころからあった神社だ。ネットが拾いきれていない神社かと思った宗一。
(そういや神社の名前も知らなかったな。まいっか)
適当に今日の勉強を復習していたところ。友達の一人からメッセージがくる。
友達A『よっす今大丈夫?』
宗一『大丈夫だけど?なに?』
友達A『お前最近いつも帰り道でいなくなるけどどこ行ってんの?』
どうやら友達Aは宗一が神社に入る瞬間を見たらしい。
宗一『あぁ…別にいなくなってないけど神社あるじゃん?あそこ』
友達A『え?神社?なんか面白いことでもあんの?ってかなんて神社?』
宗一『あそこだよ歩道橋の近くの階段のある神社だよ』
友達A『?そんなとこある?』
宗一は友達が知らないわけないと思い込んでいた。なぜならその道は友達Aとも近くを歩いたことのある場所だからだ。
宗一『ほら鳥居あるじゃん紅い』
友達A『ねぇよそんなとこ?俺はお前が草むらに入っていくのをみたんだけど…』
宗一はだんだんと悪寒がしてくる。何かが可笑しい。自分だけ知ってる神社?そんなはず…しかしネットにも載ってない神社。
宗一は友達Aが嘘を言うような奴ではないのは知っている。ならばあの神社って何?という疑問が浮かぶ。
宗一は意を決して。
宗一『あ。ちょっと用事ができたから9時過ぎたらもう寝てるとおもってな』
友達A『わかった、じゃ』
宗一は着替えて歩道橋あたりに行くことにした。距離的に5分もかからない近い場所だが警察署の支所が近くにあるので気を付けて行く。
街灯は一応あり、すごく暗いわけではなかった。というより夜に出かけるというのは真面目な宗一からしたらあんまりいい思いのするものではなかった。そして鳥居のある階段の前に着く。
「なんだやっぱりあんじゃん」
ふと声に出る。安堵した。自分は間違ってなかった。写真で神社を撮ろうとしてスマホのカメラを使う。しかし写ったのは坂のある草むらだった。
宗一は再び震えた。
(えぇ…!ここあんじゃん!階段も鳥居も!な…これって怪異現象ってやつ?こっわ!)
宗一は何か嫌な感じがしながらも階段を上っていく。もはや頭は汗をかいて秋の少し寒い風で本当に変な汗をかいてる感じがした。
そして目にするのは。
いつもの落ち着いた神社である。しかも街灯もある。
「流石に街灯もあるんだし人の手が入ってないわけないよな」
もう一回写真を撮った。しかし写ったのは。
「ってなにもねぇじゃん!街灯は?えぇ…ちょっとまてよ…引き返せるよな?」
階段の下を見ると歩道になっている。一応引き返せそうではあった。安堵する宗一。
「だれ?」
ふと聞こえる女性のような声。
ビクっとなる宗一。こんな怪異的なところに人間がいるわけ…あった。
街灯に照らされていたのは転校生の黒狐麗良さんだった。
「え?くろこさん?こんな時間になんで?」
麗良は黒いジーンズに長袖の灰色のパーカーを着ていた。なぜか庶民的である。
「小暮宗一君じゃない。名前覚えてくれたんだありがとうね。でも小暮君もこんな時間ここで何してるの?」
「いや…ちょっと散歩しに来て…」
「そう…で、言いたいことがあるんでしょ?」
「え?」
「ネットで調べたんじゃない?ここのこと」
なぜか麗良もここの怪異について知っていそうだった。
「えぇっと…ここ写真写んないんだけどなにか…」
「写真ね…写らないわよ?ここは別次元の場所と重ねてるから」
「…はぁ…そうなんですね…普通にかえれるんですよね?」
「階段降りたらいつもの世界よ?って結構柔軟性あるわね。怖くないの?」
「いや怖いかっていったら怖いけどなんかくろこさんがいるしまぁ怪異ってやつなのはなんかわかるし、あ!これって呪いとかってあるの?」
「別に呪われないわよ一応ここ神社なんだから、神様が呪うとすればそれは儀式的によるものだろうけどね」
何故か浸透しているが疑問に思ったことをいう。
「くろこさんってここら辺に引っ越してきたの?」
黒狐麗良は笑顔で答える。
「そうね、一応近くにあるわ、私一応ここの神様の神使の見習いだもの」
「ちょっとまった…」
後ろを向いてしゃがんで悩む宗一。
(えぇ…ちょっとまて神使って人間じゃなれないよね…)
「くろこさん質問!」
「何?」
「ここって携帯使える?」
「使えるけど神様たちは余り電波は好まないわね一応大丈夫だけど」
「ありがとう」
そして神使について調べる。
「ここって稲荷様の神社?」
「そうね」
「ていうことは黒狐さんて…狐?っなわけ「そうだけど?」そうですかぁ…」
「ちなみに麗良は偽名ってしってるわよね?」
「知らんです…はい」
「貴方がつけてくれたでしょ?」
「もしかして…こっこ?」
ここまでくると必然的というか当てなければ何故かくろこさんに悪い気がした。
「ごめん今日は帰るね「まぁ待ってよ!」」
腕をつかむくろこ。
「私の頭とかお腹とかあんなに可愛いってなでてくれたのに、そんなに急に怯えなくてもいいじゃない」
「いえいえあれは動物愛護的精神であってまさか同級生…って…こっこって呼んでいいの?」
「別に良いわよ?というか麗良は私の母の名前使わせてもらっただけで本当はわたし名無しなの」
「???名前無いの?でもお母さんがあるじゃん?」
「母も人間に付けてもらったらしいわ、なんでも洋風文化が入って来た時に付けられたみたいだけど。わたしはこっこって名前の方がなんか温かみがあって好きだな」
「じゃぁこっこ…ちゃん?」
「じゃあわたしも宗一だからソウ君?いっ君?」
「ソウ君でお願いします…」
「じゃあソウ君ちょっと今お金ある?」
「え?一応あるけど…どしたの?」
「何円でもいいからお賽銭してみてよ」
財布を見ると千円札4枚にいつも持ってるが使わない古いオリンピックの時に発行された5百円に小銭が少し。
「一応宇迦様はね、五穀豊穣、商売繁昌、家内安全、諸願成就の神様なの」
「宇迦様ってさっき調べた宇迦之御霊神って神様のこと?」
「そうね」
「一応通じてんの?神様にここ?普通の人には見えないんでしょ?」
「ここはちょっとだけ異例な場所で神様はみえないけど一応ご利益はあるわよ」
「へぇ…まぁそういうなら特別な感じするしこの500円でも入れるか」
といい500円投じる。カラカラと木の音が鳴って小さい鈴を鳴らす、そのあと二回おじぎをして次に二回拍手をして最後に一礼する。そのあとでお祈りをする。
でも思い出すのは猫助のことだった。あんないきなりなことが起きないように、宗一は。
(自分と良い縁を持った生きている者すべてが健康長寿しますように、あとおかんがもっと幸せになりますように)
こっこは少し横から顔をみる。祈りを見透かしているように。
「おわったよ?」
「ねぇソウ君。ここに来て小さいころのこと何か思い出さない?」
「え?…どうだったかな…あんまりおもいださないや。ごめん」
「いや、いいんだよ」
すると祠が光り出す。
「え!?…なに?!どうしたの?!まさか記念5百円が気に障って…祟りか!?」
「私も初めてだけど多分大丈夫だよ、多分ね…」
「多分って怖いなあこっこちゃんさぁ…」
『やはり君は綺麗だな少年、名前をもらえてよかったな、こっこ』
「宇迦様?!ははぁ!」
土下座をするこっこちゃんとなにかわからずとりあえず真似をする宗一。
『どうだこっこ、この少年の心は』
「はいとても美しゅうございます自分より周りのことを祈るその気持ちまさに純白の心であります」
「え…お祈りこっこちゃんにも聞こえてたの?」
『そうかしこまるな。面を上げよ』
「はい、では」
こっこは顔を上げる、宗一も顔を上げる。そこには外人もうらやむほどの美しい綺麗な眼、鼻が整っていて長い髪で髪飾りも立派な物だった服装は綺麗な着物を着ていた。
『そう見とれるな小暮宗一』
「え…ええ…とても美しいです…って名前覚えられてるよ僕(小声でこっこに言う)」
『ふふ…ありがとう』
「あの宇迦之御霊神様がいらっしゃられるということはなにか不遜なことでもしてしまったんでしょうか俺…じゃなくて私は」
『猫の最後をみたな?』
少し顔を伏せる宗一
「ごめんなさいあのまま放置してしまいました」
『ふむ…ならば問おう…あの猫は最後楽しんで死んだか…その後放置された猫はそなたを恨んでいるか』
「なんか問題が複雑ですね。でも言えるのは俺はあの猫についてなにも知らなかった。寿命があるならもっと自由にさせてやったほうがよかったんだじゃないか…とかエサおいしくなかったかなとか…線香くらいコンビニでも売ってるし少し立ててやればよかったかなって…」
宗一の目に涙が流れる。
「ソウ君…」
「だってそうだろ!命があんなに儚いものって思ったの初めてだったから、でももっと不憫な動物はいるけれど…いるんだけれど…」
それは日本の保健所のことなど一応知っている宗一。
『と、もうしておるぞ、猫助』
「へ?」
そこにはあの日の猫助がいた。
『この者はな、少々頑固ものでな、あまり言葉を発するのは好かんらしい、だが一言だけ言いたいことがあるらしい、小暮宗一にな』
猫は聞こえるか聞こえないかわからない声で。
「久々に良い飯にありつけておいしかった、ありがとな」
「うぅ…ふぅぅぅう」
頭を地面につけ涙をなるべく誰にも見せないようにするが。うれしかった。
『猫助、以上で心残りは無いな?』
「あぁ…こいつ俺の死をみたときに死相がでてたからな…いまはもう大丈夫だ、じゃあ俺はあの世に行かせてもらう」
「へ?死相?」
『気づかなんだか…そなたはあと数日でなにかしらの思いで病になり死ぬところだったのだ』
「そうだよソウ君」
こっこが涙がでそうな目で見つめていた。
『まあ神のお試しというやつではあるが宗一はそのお試しに負けようとしていたのだ。この黒い狐は…』
こっこが口元に人差し指を当て言わないでとジェスチャーする。しょうがないと言葉を変え。
『そんなそなたに少しでも日常へ帰らせようと学び舎の壁に文字をつづらせたのだ…それでもまだ死相は完全に消えて無くてな、この場に参らせたのだ』
こっこの顔を見る宗一、遠くを見つめるこっこ。
「ちょっとこっこちゃん…なんでこっちみないの?」
「ちょっと恥ずかしくて」
「俺の方が恥ずかしいよ!あれ結構いい文章だったからね!」
「じゃあいいじゃない!もしかしたらもてるかもよ?!」
「いいよ別に…」
『あと小暮宗一、そなたに猫助が少し力を与えたいと申していてな、少し目をつむっていた方がいいぞ?』
「え?はいつむりましたけど。うわぁ!」
宗一の周りに風が吹いたが一瞬で去っていった。目を開ける宗一。だが別に何にもない。
『まあこんなことは異例中の異例でな、本来柱が赴くことではないが、久々に心の清らかな人の子をみたのでな、変化に気づかなければそれ気づけばそれというようなもの、その清らかな心をわすれるでないぞ?』
「は…はい!ありがとうございます!」
『こっこ、引き続きこの場の担当を任す』
「はい!仰せつかりました!」
『では私は出雲に参らねばならぬ頃になって来たのでな準備もある、要件はすんだ、ではな小暮宗一、こっこ』
光が天に続くように輝くとその光が一段と増しいつの間にか神様はいなくなっていた。
宗一は改めてこっこをみる。お嬢様のような整った顔で自分とは合わないと思っていたけど案外照れ屋で何気に自分を助けてくれた恩狐?である。
「こっこちゃん、ありがとう」
「ソウ君はこれからもっと優しい人になれるよ」
「俺はそうでもないんよなどちらかというと流されて生きてるし」
「私は優しいソウ君だから助けたかったんだよ?普通道端にいる猫を想って泣いてあげれる人ってすくないよ?」
「まぁずっと優しい人ではいたいかな」
驚くことではあったが黒い狐がこっこで同級生で助けてくれて猫とも会話ができてなんかもういっぱいだった。
「なんかいっぱいで疲れたな、そういや時間ってもう10時じゃん!こっこちゃんはどうするの?」
「へ?私?一応神使見習いとして衣食住は用意してもらってるよ?一応お母さまは立派な神使としてお仕えしてるし頼めばもっといい生活できるけど少しでも立派な神使になるために仲間と力をあわせて生活しなきゃね」
「そっか、もう学校こないの?」
役目を果たしたならもう自分の周りには来ないのかなと思う宗一に対して意地悪な顔をして。
「来てほしい?」
「なんかせっかく仲良く…なれたのかなぁ?俺達って?」
「なれたんじゃない?」
「ならやっぱり来てほしいな」
「わかったわ、学校には行く、けど今度おいしいもの食べさせてね?」
「お金の範囲内でおねがいしますわ…」
「ふふっ!」
そしてこっこと別れ階段を下りいつもの場所に戻ってきた。
「俺には見えてんのな…」
後ろを見ると階段と鳥居があるが他の人には認知されてないらしい。
「早く帰らなきゃ」
走って帰ったがこの時は人も少なくよくみることが無かったので気づいてないが神様からの贈り物は確実に根を生やし始めていたのだった。