表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒狐の少女と優しい少年  作者: 龍美邦彦
16/27

日輪と天空

了解とスタンプを送った日輪は店の中なので顔には出さず心で安堵していた。

(お義母様の封印は18年は持つはずだけど何か最近胸騒ぎがするわ…本当の事は17歳くらいになってからと思ってたけど早めにした方がいいかもしれない)

日輪は義母の封印が早まっているのに気づいていなかった。

ドアの音がなり。

「いらっしゃい、あ!天空さん!」

「どうもこんばんわ、ママさん」

「適当に座ってね、いつものブラックでいいかしら?」

「はい、それで」

天空は宗一を送った後その足で日輪の店に寄ったのだ。

日輪がコーヒーを作って少しのお菓子を入れお盆に乗せて店のお手伝いさんに持って行かせる。

「どうぞ」

お手伝いさんは手際よくお盆のコーヒーとお菓子を渡す。

「どうも」

色んな人が歌っている中カウンターに座った天空は日輪に言う。みんな歌を聞いたり世間話をするおじちゃんおばちゃんで天空のことも知っているので特に話や歌が止まることはない。

「ママさん。宗一君の封印持ってあと数か月ですよ」

日輪は驚く。いつもはみんなに混ざり演歌を歌い適当に過ごす人で帰るときも適当な人が封印のことを知っていたなんて、しかもこんな身近にいたとは。日輪は返す。

「いつも宗一がお世話になります。で、なんでそのことを?」

「私もそっちに近い者なもんで、いままで黙っててすいません。あなた方がそういう人たちと関わりたくないと思って黙っていました。ただ近くても全然違うものということだけはしっておいてください、私は味方ですので」

お菓子をすこし食べてブラックのコーヒーを少し飲む。

「協会には属してないということでいいんですか?」

日輪の顔はいつも通りだが声に力が入っていた。

「はい、協会などには属しておりません」

「そうですか…で…何故封印が早まってるんですか?」

「彼の闘争心が魂に呼応して鎖を解こうとしてます」

「闘争心?!…それは天空さんでどうにかなりませんか?」

「大会に出るまでなら大丈夫でしょうが…なにぶん私はあの力を使って使役してほしい身なので申し訳ない」

使役という言葉を聞いて謎が浮く日輪。彼はある日この市にやってきて人のように老けて行っている。確かに50歳くらいと見越している日輪、しかしそれは人であるが故の前提。もし式神などの類、かなり強い霊的存在なら話は別になってくる。

「あなたは人なんですか?」

「私は人が好きな人を守りし者です、人の皮を被った人でない者です多分あなたが考えているより高い存在ですよ」

それを聞いて日輪は顔を崩さず話す。

「もしあなたを宗一が使役したらどうなりますか?」

「協会が感づくはずでしょう。なにせホコリを被せてなんとか騙せましたが元がダイヤモンドの原石ですからね」

「そこまでしってるんですね…お願いします。もし協会が来たら宗一を守ってくれませんか?」

またコーヒーを少し飲む天空に願い出る日輪。

「ママさん、彼をあの世界にいれるなら協力します。もし協会が来ても私を使役すれば追い払うこともできます。私…いや他にも彼ならば使役されたいと願う者は修羅神仏ならばいくらでいるでしょう。私の名でわかりませんか?」

日輪は良く考える。義母に習った少しの教えの中にいた。

「天空…とはもしや?!」

「当たりです。ママさん」

「なんで気づかなかったのかしら…今まで」

「そういう風にちょっと知っている人が居たら誤解のような力を与えてましたから」

日輪はもし安倍晴明が使役した十二天将の柱ならばできると可能性は大いにあると思い今になって明かされたことにさらに悩む。

「もし宗一が封印を解いたら貴あなたは味方なんですね?」

「はい。私を一番初めに使っていただけるならなんでもしましょう。なにせ我々に死も老いというものはありませんから」

日輪はもう少し問う。

「あなたの力で封印するというのはできないのですか?」

天空はお菓子を口に含みブラックと一緒に苦く甘い感覚に酔い答える。

「私は使役されたい身なのでそれはしたくありません。ただ封印を待つのは我慢しますが」

日輪はもう一度話の初めに聞いたことを聞く。

「話は戻りますが封印が闘争心であと数か月っていつからだったんですか?」

「封印自体は園児の頃から武道を習って魂が成長していき鶴見さんの魂の一片を使った封印が少しずつ解かれていきました。あと2年と確信したのは小学六年のころです」

「そんな!?魂の一片だなんて!?あれはお義母様の魂をほとんど使ってやっと18年は隠せるものだったのに…」

流石にうなだれる日輪。

「人の力では頑張ったほうでしょうね。彼女の死には私も少し心が痛みますが。彼女なら十二天将を2柱なら使役できたでしょうからね」

「あなたいつから我が家に目を付けていたんですか?」

「清明が亡き後私は私を使役できるもの探しました、しかし書物の卑しいということだけで嫌う物もいれば力無き者が使役しようとすればその身は持たず体に何百という傷をつけました。嫌われ者って結構つらいんですよ?そしてある女性を見つけた。しかし彼女は自分の家系に嫌気がさしある男の嫁になる。協会は彼女の力が欲しいゆえに引き戻そうとするが彼女の力は強かった。そしてある時子供が生まれた。才無き者が生まれ彼女の血は衰えていくと感じ協会は撤退。その後あなたとその子共の間に千年に一人の逸材が生まれる、しかし彼女はその膨大な力を協会が来る前に封印した自らの寿命と引き換えに」

「…」

日輪は話を無言で聞く。

「しかし良かった!私が初めに見つけれて!一応かの神々の世界から私も宗一君のことを感づかれないように隠していましたから。力を少し使ってね」

「まさかそんな時代から動いてたなんて…神々の世界は知りませんが生まれる前に神々は気づくのでは?」

日輪の疑問に天空は答える。

「よく子供は作るものと勘違いしている馬鹿が多い。子供は天からの授かりものです。滑稽で醜い人はその授かりを放棄することもありますがね。本当に真面目に生きている人間ならばちゃんと天からの恩恵を授かるのに不真面目で醜い男は己が欲を満たすために女性とまぐわい本当の天からの施しをえれないのが現在のこの国…いや世界規模ですがね。その天と言うのはこの世界の天ではなく宇宙の全てであり神々の予想を超えることも時にはあるのです、それが今の宗一君です。お腹にいたときにすでに目を付けていた神もいます。その結果が両手のマスカケ。天下人への挑戦権です。流石に私以上の力を持つ神には看破されてしまいましたがね」

「確かに今の時代はふしだらな女性も多いですね、酷い子なんて小学生とか、高校生も、夫もいるのにSNSで出会ってできちゃう子なんて多いこと、あんなの見るとほんと時代がおかしいんじゃない?っておもいますよ」

少し怒るように言い日輪に笑顔を崩さず天空は。

「時代は変わってしまいましたが本来天の恩恵を授かりたければ真面目に生きろって話ですね。人を守る身からしたら馬鹿な子が多くなってしまい困ってるところです」

いつも温和な天空が少し苛立ったように感じた日輪。

「それで宗一はこの先どうなりますか?」

話を変える。封印が解かれるならばなにかしらせねばならないと思い天空に問う。

心を読める天空は答える。

「もし封印が解かれたとき私を彼に力の使い方を教えさせてくださいできれば一番初めがいいです、彼が自分の力を扱えば協会を追い返すことも可能です。私も加勢します」

「わかりました…封印が解かれたときはよろしくお願いします、ですが無茶だけはやめさせてくださいお願いです、あの人は封印をさらに永らえる道具をさがしているのですが…なかなか見つからず…最近では協会に入らせるかと話し合ってたところです」

本当の事を日輪は天空に言う。実は宗一の父親は別に冒険が目的じゃなく宗一の力を制御する秘宝を求めていたのだ。しかしここに来て頼もしい味方でき少し安心する。

「わかっています。彼の苦悩もあなたの苦しみもちゃんと知っています。安心してください。衰退している陰陽協会でも今だ力を持つものもいます。そして力を高める学校まで作っていますしね」

「あなたが申し出てくれなけば無理やりにでも宗一が連れて行かれるところでした。ありがとうございます」

日輪は本当に感謝していた。

天空は陰陽協会に動いてもらおうかとも思ったがやはり自分の見つけた原石を奪われるのは性に合わなかった。

(やはり私は卑しいのか…清明…)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ