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黒狐の少女と優しい少年  作者: 龍美邦彦
15/27

現在の力量

遅筆ですいません。18時半から書いていたのですが…


ノンコンタクト空手の組手稽古を宗一と天空が始めようとしていた。他の3人は畳の上で座っていた。

「大丈夫…なのかな?」

雛子が心配そうに宗一を見つめる。

こっこは準備運動をしている宗一から何か嫌な気配がしているのが分かった。

「変なことにならないと良いけどね…」

ケンちゃんも何か異様な感覚が張り詰めているのを肌で感じる。

「本当に変な空気っすね。なんなんすか?これが達人同士だからっすか?」

こっこにとっても天空のことがわからないし宗一も妙な空気を出しているから本当に達人の闘いだからなのかわからなかった。見習いであるがゆえに神社の周りでなら心の声も聴けるが今は外なのでまだその力に目覚めていないこっこからはもどかしかった。天空も宗一の魂から発せられるあの龍の力の一片が漏れているのに気づいた。宗一もどこか違和感があった。力みが抜けないような感覚で。

「でははじめますよ?」

「はい…やりましょうか」

天空はケンちゃんに指示する。

「すいません杉原君3分経ったら教えてください」

「了解っす」

ケンちゃんはスマホのタイマーを使うつもりで待機する。

修練場の赤い畳で囲っている場所に二人が入りお辞儀をした後3分間の組手が始まった。構えをとりステップを踏んだり時に止まったり牽制しあう。

天空は伊達眼鏡をはずし鋭い眼光を放つ。それと同じくらい目が鋭くなる宗一。少年少女の個人は2分だが宗一は特にそこは問題視していなかった。二人を見た3人はただただ見ているしかないがこれはすごいことだけはわかった。

雛子は怖くなっていた。

(あの眼…小学生の頃の宗君だ…)

またあの時みたいに冷たい宗一に戻ってしまうかもしれないと思い見てても辛そうにしていた。

こっこもあの眼の宗一を見たら流石に冷やっとくる。

(こんなにすごいんだ…ソウ君…)

ケンちゃんは寸止めルールではあるが本当に当ててしまうのではないかと思いヒヤヒヤしていた。実際当たってしまうこともあり歯が欠ける選手もいるらしいのも知っているからなおさら緊張する。

(本当に一回戦目のソウっちだ…)

以前はその眼が薄れていくのを見ていたが今はそんな余裕も見せれない宗一がそこにいた。

宗一は天空との久々の組手で本当に余裕がなかった。しかしその動きは現役の中学生がみてもかなり上位に食い込むレベルの動きをしていた。均衡を破ったのはやはり現役で指導している天空だった。ギアを上げ一気に間合いを詰め軸がしっかりしている天空の技量による神速の中段突きは今の宗一には避けれなかった。

「エイィ!」

二人は同じ場所に戻りまた組手を始める。お互い有効を認めていた。

こっこは空手を知らないのでケンちゃんに聞く。

「今のどういうことなんですか?健吾君?」

「あれは有効っていって1ポイント天空先生のほうに入ったっす…多分」

ケンちゃんも中学生の組手を見たことがあるがその比ではないスピードだったので一瞬戸惑っていた。

「あんなの学校の派遣顧問でも見たことないっす…これ本当に俺らだけで見て良い試合なんすか?」

「わかんないけど…怖い…」

雛子はまだうろたえていた。

こっこは人の出せる素早さがここまですごいのかと驚いている。

「でもおかしいっす」

「なにが?」

疑問が浮かぶケンちゃんにこっこも疑問が浮かぶ。

「普通あの突きは身長が低い方が大きい相手に使う有効な手のはずっす。なんでなんだろう?」

「そういわれればかなり低く打ってたね」

雛子を置いて会話するこっことケンちゃん。


間合いを作りながら天空は思い出させようとしていた。大きい相手との戦い方や雰囲気や感覚を。中学同士でならばそこまで大差はないにしろ天空という驚異的な強者との闘い方を。これからのことを考えての天空なりのアドバイスであった。

宗一も何となく思い出してくる。自分が追い求めていた強者との闘い。ただそこにたどり着きたくてひたすら稽古をしていた自分を。今目の前にいるのは天空。それは疑いようのない頂の上の住人ではないかと。そして初めて本気の天空から取った有効はまさに天空のレベルにまで達していた自分の中段突きじゃないかと。忘れていた興奮が収束し宗一の冷静な気迫にみなぎる。その口からは笑みが込み上げていた。間合いは今宗一にとってちょうどいい。ならば今1ポイントでもとるならこれしかなかった。自分も中段突きに行こうと見せる。天空も宗一がそう来る可能性は考えていた。そしてたった一回のフェイントだった。天空は中段突きが来ると思いすぐに身を引こうとするがフェイントと気づいた時には遅く宗一の逆からの上段追い突きが天空ほどでなくてもそれに負けないスピードで当たっていた。

「エァイィ!」

二人はまた同じ場所に戻る。

「すげぇ…ソウっち…あんな動きできるなんて…しかも天空先生の中段突きのあとで自分も中段行くと見せかけ上に一発って…もうおれもわかんないっす…」

「一応ソウ君が1ポイントとったの?」

「多分そうみたいっすね」

お互いが認め合っているからこそ生まれる絆のような感覚を利用しての突きだった。

雛子は宗一が笑みをこぼすようになってほどなく理解する。この天空という人は本当に宗一の理解者だったのだと。そしてそれに捻くって答えを返した宗一。これは師弟の関係の闘いで危ないものではないと。

(がんばれ…宗君…)

いつのまにか見入っていた。あの宗一が笑みをこぼして戦うなど無いと思っていたからだ。自分の知らない宗一を引き出す天空に憧れと嫉妬を少し覚えた雛子。だがなにより宗一の本気の思いをぶつけれるのはこの人しかいないんだと悟る。それが男性であろうと女性であろうと。だったら自分はどうすればいいかを考える。想いを告げた自分が本当に彼の横に並ぶなら、宗一のことだから歩幅を合わせてはくれるけど本当の宗一はとても早く進めるのに自分に合わせて良いのかと。決断は早かった。

(遅くたっていい!宗君が歩幅をもし合わせてくれるなら教えてもらって同じスピードになれるよう努力すればいいんだ!今は遅いけど…でも…だから…今はまだ…帰ってきてほしい!)

告白が早すぎたというのは感じたがこれから宗一のことをさらに知れるチャンスはまだある。むしろ告白してさらに好きと言う気持ちが増す雛子。

こっこは思い出す。つい好奇心で母親の守りを破って人の町に出て遊んで寝ていたら年長の園児たちにかこまれて怖くて動けず引っ張られていじめられていた黒い子狐だった自分を年中ながら挑んで返り討ちにした園児のことを。その園児が最近になって死相が出ていると母親たちの会話で聞かされどうしても助けたくて見習いながらに母親や柱の宇迦之御魂神様に直々にお参りを何回もしてやっとその少年を見つけ話を聞き助けることができ満足していたがその少年にこんな一面があるとは。こっこは宗一の野生的なところに惹かれていた。周りではこういう気持ちを恋と呼んでいたと思い出す。自分はどちらかと言えば保護者的な目で見ていたが吹っ切れて初めて見た空手に本気の眼になり天空と組手をする宗一が本当に眩しく見入っていた。

「雛ちゃん。かっこいいね。ソウ君」

「うん」

お互いが同じ想いをするハメになるとは思わないしまだこっこの気持ちに気づかない雛子を傷つけたくもないこっこは身を引かなければいけないなと思うが何故かそう思うと胸が痛んだ。

そんなことを思っている間にどうやら宗一の集中力が切れかけなのか天空はどんどん有効を取っていく。

今ではまだ勝てないと悟ってしまうが消極的にもならず冷静に分析する。

相手は達人の域の人だ。小学生の頃からの対天空用の構えをとる。もうこれしか今はなかった。天空も気づく。それは上級者ならば誰もが使うカウンターだ。小学生の時は対天空用にと覚えた構えだったそれは少し腕を上げた状態で腹への蹴りを手で捌いてからの刻み突きカウンターだ。天空ほどの体格差があれば小学生の時は全然通用しなかったがイメージだけでは有効が取れていた。それが今の自分に重なり合う頃ではないかと思いとってみると以外にしっくりきていた。

天空は牽制する。しかしケンちゃんのスマホが鳴る。

「どうやら進化は次の機会のようですね」

「らしいですね…あー天空先生とやると色々浮かんでほんとに楽しいんすよ。小学生の頃から3分組手でよかったーこれならまだいけますかね?」

「よかったもなにもいいの一発もらってしまいましたしあのカウンターは諸刃ですよ?」

「えぇ、でも今はこれが限界だったんで。突きで来られたらとも思ったけど間合い考えたとき今の自分ならと思って」

「はっはっは、面白い子ですねー君は。その賭けには乗りたくないが師としてはやはり後の先などの感覚を研ぎ澄まさなくてはいけませんよ?あとやはり腕を上げるより腰を下げて動きながらフェイントに動じず突きにも対応して蹴りが来た時は両手で捌くのをお勧めします、あとステップをもっと不規則にですよ」

「そうでしたねーあーまだまだだぁーあっはっは!」


異様な空気は天空にとっては脅威だった。なにせ対峙していると魂から縛られているかの龍が殺気が込めてくるのだからたまったものではない。しかし龍は満足したのかまた収まっていた。

(魂に呼応するんですねぇ…これは一年待たないどころか武道を続けさせたら封印は早めに解いてしまうかもしれませんね…令嬢の魂が枷でこの状態…末恐ろしいがやはり面白くなりそうだ)

天空をも恐れさせる魂の持ち主へと強制的に成長しようとする宗一だが彼の力が龍だけではなくある力も封印されているので天空はまだ危険視はしていなかった。ただ花が蕾になって花咲く日を待ち遠しくなってしまい自分を抑えるのでいっぱいだった。

(しかしその場合あの力はどう影響するんでしょうねぇ…龍を抑えるだけの器にせねばなりませんし…十二神将を統べるものになるためにも力の制御を覚えてもらわねばならないし…少しあの人種に介入してもらったほうが手早いかもしれませんね)

一人考える天空。宗一は雛子とこっこたちに水分補給を無理やりさせられていた。

「宗君汗出し過ぎ!水分絶対必要だよ!?」

「そうだよソウ君。3分間でそんなんじゃ大会二試合しかでれないよ?!」

宗一は弁明する。

「いやその前に色々動いてっからね?それに先生のプレッシャーほんと危ないからさ」

健吾はやれやれと言い。

「両手に花っすねぇ…」

こっこの気持ちを知ってか知らずか適当に言うケンちゃん。

その日はもう7時半を回っており今日はもうお開きにしましょうと天空は宗一をみて判断して言った。

宗一も今のままでは天空にスタミナでも勝てないと理解しており全員帰路につく。雛ちゃんもこっこも帰り道同じらしいのでケンちゃんも念のために一緒に女子を送ろうと話し合ったが天空先生が車を出してくれるといったので甘んじる4人だった。

まず一番遠いケンちゃんを送る。

「これが毎日続くっすか?」

「いや一日置きに休みを入れながら彼に稽古をつけようとおもってますよ?」

「そうっすか!?了解っす。行けない日もあるのでその時はすみません」

「ケンちゃん、そんなに珍しいものじゃないし毎回来なくて大丈夫だよ?」

宗一が答えると。

「大会楽しみっす!学校の新聞に載るかもっすよ?」

「載せたら怒るぞ?ケンちゃん」

「3年の先輩は美奈目当てっすけど俺はソウっちを目当てで大会見に行くっす!」

「好きにしてくれ…」

「じゃまた明日!」

ケンちゃんの別れの挨拶にみんなも答えて次に雛ちゃんの家に行く。

「宗君!?空手お休みの時は絵のモデルになってくれないかな?!」

「は?え?モデル?」

「うん!道着姿で!」

「うーん…大会終わってからならいいかなー…ごめんね雛ちゃん、今は武道の為に道着を着たいんよ?」

「そっか…わかった!大会終わったら声またかけるね!また明日!」

「ありがとーまたねー」

「雛ちゃんまた明日会おうねー」

「レイラちゃんもまたねー」

雛子とも別れの挨拶をして宗一とこっこと天空になって天空がこっこに話し出す。

「レイラさんでしたね?確か…」

「あ…はいそうですけど?」

「君の眼に狂いはなかったよ、今度君の母に出会ったら天空が君をほめていたといってくれないかな?」

それはどういう意味かわからないこっこと宗一。

「母を知っているんですか?」

「多分君より知っているかもしれないね」

「それじゃ私のことも?」

「今日はいい日だ!久々に宗一君と組手ができて刺激になったよ、人って最高だな」

宗一も考えるが天空は園児の頃から変わりないのでよくわからないがこっこが人ではないことを知っていること理解だけはして問う。

「先生は何か知ってるんですか?」

「年をとれば色々知るものだよ人というものはね。ここで合ってたかな住所?」

カーナビで住所に到着したところは結構新しく見えるアパートだった。

こっこは化かされるのは嫌いなのであえて無視をして母親と連絡することを選んだ。

「ありがとうございました天空さんではまた、またねソウ君」

「じゃまたー」

こっことも別れ一人ジャージのポケットに入れたお守りを思い出し取り出す。何故かジャージになった時から安心感を得たのはこれのせいか?とみていると。

「そのお守りは大事にした方がいい気がしますね」

「先生って隠し事多いですよね」

「まあ大人の男はバレたくない秘密くらい何個か持ってるものさ、それはいつの時代も女性にバレてしまい怒られるのがお約束だがね」

「先生に怒る女性っているんですか?」

「長く生きれば女性の友の一人くらいはいるものだよ、まあ私の場合は気味悪がられるのがおちだけどね」

「なんか想像できそうですね」

「酷いなぁ、はっはっは!」

「まあいいですけどね。俺は」

そして小暮家に着き天空と別れる。

「次は水曜日で良いかな?」

「はいお願いします。なんか休みの間にやっておいた方がいいことありますか?」

「そうだね…できれば今度の大会の中学生がどんな試合をするか自分で研究しておいてほしい所です。動画でも投稿してくれてる人がいればいいんですが…身近な相手に聞いて対処法などを考えるというのも手ですよ?君はうちの道場から出るダークホースですから」

「そういうのって噛ませ犬が多いんですからいわないでください、フラグみたいなのが現実にあったら壊したいですね」

「違いない!お疲れ様でした」

「ありがとうございました」

天空と別れたあと鍵を開け一応内玄関に電気が灯っており靴を脱いで道着を洗濯機に入れる。

「一日で乾いてくれればいいんだが…最悪エアコンで乾かせばいいかおかんに連絡しとこ」

宗一「道着汗かいたから洗って干しとくわ」

スマホでメッセージを送り既読になり。

スタンプで了解と送られてきた。

8時を回っておりシャワーを浴びて8時半になり洗濯機の音が鳴り干していたらもう9時だった。少しネットを見て休憩して30分だけ勉強をする宗一。

すいません少年少女の個人は2分だったり1分30秒だったり調べたのですが自分の小説では2分にさせていただきます。混乱している方や現役の方には知識不足で申し訳ありません。

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