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希望の配達人ホープ  作者: 舜火
1/1

〜希望をお届けします!〜

麻痺針が3発。

閃光弾が1発。

これだけか。

右に3体、左に2体。

もう少し装備を整えたかった。


草むらに隠れた少女は目の前で獲物を探すハイエナのような獰猛な動物を前にそいつらから逃げる算段を考えていた。

少女は覚悟を決め、草むらから飛び出す。

ハイエナのような獰猛な動物らはそれに気付き一斉に襲いかかってくる。


少女は銃を上空に向けて撃つ。

上空で閃光弾が破裂し、辺りを激しい光が照らされ動物たちは目を塞ぎ苦しそうにその場で悶えた。


少女は必死で走った。

走る先には大きな壁で囲まれた街があった。

少女はそこに逃げ込もうとしているのだ。


段々と街に近づいて行く。

もう少しもう少しだ。

まだ動物たちは悶え苦しんでいる。


すると2匹の動物が目が徐々に慣れてきたのか少し覚束ない状態で追いかけて来た。

少女は考えるな考えるな今は街を目指すんだと心の中で叫んでいた。

2匹の動物たちは徐々にスピードを上げて行く。


まずいこのままでは追いつかれる麻酔針を使うしかない。

少女は銃のダイヤルを回し、麻酔針に変えた。

そして後ろを向きながら銃の標準を動物に合わせる。


一呼吸を置いて少女は引き金を引いた。

すると麻酔針は片方の動物に当たった。

動物はその場で痙攣して倒れた。


少女はもう片方の動物を狙う。

落ち着け落ち着け再度標準を定めて少女は引き金を引いた。

しかし麻酔針は外れてしまった。


少女は焦る。

これでは次の標準を定める前にやられてしまう。

動物は少女の首を目がけて飛び掛かってくる。


ごめんねおばあちゃん。

ビーフシチュー届けられなかった。

その瞬間、銃声が鳴り響き少女を襲おうとした動物は血を流して倒れ込む。


「大丈夫かい?危ないところだったな!」

ライフルを持った40代くらいの中年の男性が手を振っている。

周りには同じくライフル銃を持った兵士が何人か立っていた。


兵士たちは動物たちが逃げるまでライフルを撃ち続けた。

動物たちは血を流しながら逃げていった。


男は少女に近づいてきた。

「ホープが何故こんな時間に外を出歩いている。もう日も落ちる頃だぞ。」


少女は平謝りをして感謝をする。

「すみません。助けてくださりありがとうございます。」


男は呆れた顔で話し始める。

「俺たちがたまたま見回りで通ったから良かったものの、普通なら死んでいたぞ。それにお前そんな装備で出歩くなんて自殺行為だぞ。ホープ初心者か?」


少女は頭を掻いて笑いながら話す。

「いやぁ〜。これでも5年ホープやってます。」


男は益々呆れた顔で話し始める。

「ならウォーカーの危険性だって分かっているだろう。」


少女は苦笑いで話し始める。

「実は依頼人の方があまりにも予算が無くて、装備が整えられなかったんですよ。それでこんな有様に。」


男は更に呆れた顔になっていく。

「依頼人はお前を殺す気だったのか?それに装備が少ないならウォーカーの活動が少ない昼間に出歩けよ。」


少女は謝りながら話す。

「実はサクロンから来たもので、その間に装備がほぼ無くなって。」


男は呆れ疲れたのか落ち着いた声になってきた。

「隣町ならまだしも2つ隣の町からね。君、年はいくつだ?」


少女はホッとした声で話す。

「16です。」


男はまた呆れ始めた。

「16の女の子にこれをさせた依頼人は人でなしだな。」


少女は少し怒った声で話す。

「私の悪口は良いですが、依頼人の悪口はやめてください。私から頼んで今回の配達をしたんです。」


男はびっくりした顔で話す。

「お前まさか聖人アリーシャか?貧しい困った金のない依頼人でも請け負うというホープ。」


少女はニコッと笑いながら話す。

「はいそうです。あまりその呼ばれ方好きではないですが、私がそのアリーシャです。」


男は凄いものを見たような顔で話す。

「本当にいたんだな。しかも少女だなんて。俺の名前はルドルフ。

「俺も兵士が非番の時はたまにホープやっているんだ。まあ簡単なものだがな。しかも聖人様が俺の娘と同い年とは凄いもんだ。」


アリーシャは兵士に守られながら街に入った。

アリーシャはルドルフたちに感謝をして、この街の役所を目指した。

アリーシャは役所に到着すると小さなモニター前に立った。


役所ではその街の住所録というものが記録されており、名前と顔認証で住所を特定することが出来る。

ホープたちが配達をしに来た時にほとんどは顔と名前くらいしか手かがりになるものがないからだ。

依頼人から渡された写真と名前を入力認証させた。


するとすぐに住所が特定された。

幸いにもそこまで遠くなかった。

早くこのビーフシチューを届けなくてはならない。


アリーシャはその住所に急ぐ。

そして10分ほど歩くとその目的の家が見えた。

明かりが付いており、これから夕食の支度というところだろうか。


アリーシャはトントンとノックをする。

「すみません。ホープ配達人です!」


はーいと言って金髪の30代の女性が出迎える。

「ホープ配達人さん?旦那への配達かしら?」


アリーシャはニコッと笑いながら話す。

「いいえ。旦那様ではなく奥様宛てです。」


アリーシャはその女性に手紙を渡した。

するとその女性は涙を急に流してその場で泣き崩れた。

「お‥‥お母さん。」


アリーシャはリュックから真空パックを取り出す。

真空パックの空気を抜くと徐々に膨張して熱々のビーフシチューが入った鍋に変わった。

「依頼人からビーフシチューも届けてくださいとの依頼です。」


荷受人の女性は更に涙が止まらなくなった。

「でもお母さんはそんなそんなホープに頼めるほどお金なんて無いはずじゃ?」


アリーシャはリュックを背負い直した。

「ホープとは金のために配達をするんじゃないんです。人々の希望のために配達をするんです。」


荷受人の女性は笑顔になった。

「母は元気でしたか?」


アリーシャは笑顔で嘘を付いた。

「ええとても元気でした。」


2日前のこと。

ホープ受付所に60代の女性が1人必死で何かを訴えていた。

その女性は身体が弱く、時たま咳をしながらどうにか届けて欲しいと受付の人間に頼み込んでいた。


受付の人間はそんなお金では請け負ってくれるホープなんていないですよと追い返そうと説得していた。

女性はそこをどうにかどうにかと頼み込んでいる。

すると女性は胸を押さえて苦しそうにその場に倒れた。


受付の人間は警備の人間にこの女性を摘み出せと指示をする。

するとそこに待ってくださいと少女の声が聞こた。

「おばあちゃん、それをどこに届ければいいの?」


するとその女性は今にも息絶えそうな声で話す。

「大都市エンキドにいる娘アニータにこの手紙とビーフシチューを‥」

と必死にその少女に手渡す。


少女は分かりましたとだけその女性に言った。

「私がこの方の依頼を受けます!」


受付の人は仕方がないという顔をして話す。

「ホープ配達人アリーシャですね。この人は適正価格の3分の1しか払えていません。過酷な依頼です。」

「それでも良いですね?」


アリーシャは自信満々で話す。

「希望を届けるのが配達人の仕事です!その仕事受けます!」


その女性は蔓延の笑みを浮かべた。

「ありがとう。これも。」

と娘さんの若い頃の写真だろうかそれも手渡された。


するとその女性はそのまま息を引き取った。

「おばあちゃん!おばあちゃん!」

「必ず届けるからね。」


少女はこの依頼を了承。

装備品は少ないままエンキドを目指す。

受付や周りのホープたちは自殺行為だと少女を何度も説得した。


しかし少女は聞く耳を持たなかった。

ホープは希望の光だから。



アリーシャは金髪の女性に笑顔で話し始めた。

「すみません。私、あまりお金を持っていなくて。泊まらせてもらっても良いですか?」


女性はハッとした顔をした。

「そうですよね。もちろん恩人ですからどうぞ。」


アリーシャは金髪の女性の家族と食卓を囲みながらその女性の身の上話を聞いた。

「旦那はあの街で父が公務員として滞在していました。」

「しかし旦那の父は上に取り合って、このエンキドに移り住めるように根回ししたんです。」

「私は旦那と一緒に行けることを許されたのですが、私の母は許されず、母を置いていかざる得なかったのです。」


金髪の女性の旦那は悲しい顔をしながら話す。

「お前の母には悪いことをした。私と父はとにかくエンキドに行けば出世と幸福が待っていると思っていた。」

「父はここに来て、すぐに体調が悪くなって死んでしまった。もしあそこに残っていたらまだ父も居て、彼女の母を居て幸せになれたかもしれない。」


アリーシャは重たい空気だと感じ、話題を変えようとする。

「それにしてもおばあちゃんのビーフシチュー美味しいですね。」


金髪の女性は少し涙を流して話す。

「よく母が作ってくれました。私の1番好きな料理なんです。」


アリーシャは笑顔で話し始めた。

「こんな美味しいビーフシチューを。羨ましいです。」


金髪の女性は疑問な顔をしながら話す。

「それにしてもホープさん。やはり母はお金を工面出来なかったのでしょうか?お金が無いと言っていたので。」


「大丈夫ですよ。私はしばらくここで採集の仕事をしながらお金を稼ぎます。大都市なら採集仕事ならたくさんあると思いまして。」


女性の旦那が話し始める。

「なら私が良い案件を回すようにわたしから言おう。これでも公務員だからね。」


「ありがとうございます。」



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