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介護士の小話

ルパンみたいなお年寄りの話

作者: HOT-T

 ヤバイ介護職について話をしましたが今度は利用者について。

 いや、認知症なんだから仕方ないと思ったあなた!

 甘いですよ。


 お年寄りって確かに認知症になったら思いもよらぬ行動を取る事がありますが昔取った杵柄。

 意外なスキルを持ったりしているわけです。


 今回ご紹介するのは10年近く前にショートステイで出会った利用者さんです。

 初めてご利用される男性だったのですが前情報が『ルパンみたいな人です』だそうで皆頭の上にクエスチョンマークが浮かんでいました。

 しかも詳しい事は不明だそうで。


 まあ、前情報が全然アテにならないとかよくありますからね。

 とりえあず来てもらわないとわからないよねってなりました。

 というわけで当日お迎えしたのは腰が曲がった男性のお年寄り。

 大人しそうで穏やかなおじいさんでした。


 いつも通りの業務を行い昼過ぎ頃……


「あれ、Aさん居なくね?」


 フロアを探しますがいません。

 別区画に行くにはロックがあったりしますのでおかしいなと思って仕方なく防犯カメラをチェックしたところ……恐ろしいものが映っているではありませんか。


 何と腰が曲がったお爺さんだったAさんはきっちり腰を伸ばし何と扉のロックを普通に解除していました。

 しかも何故か職員の上着を身に着けています。

 そして別のカメラの映像ではその恰好で堂々と正面玄関から出ていったのです。

 

 もうね、驚きですよ。

 扉のロックに関しては職員が解除して出ていくのを遠めに見て番号を覚えていた様です。

 確信犯ですよ。確かにこりゃルパンだ。


 それでこの人、更に何がすごいかって言うとね……いつの間にか戻って来てるんですよ。

 施設脱走なんて無かったと言わんばかりに何食わぬ顔でおやつの時間にはフロアで椅子に座ってるんです。

 

 家族さんに電話して謝って警察呼ぼうかってなった時に


「あれ、テレビの前に居るのって……」


 です。

 ルパンというより引退した諜報員か何かだったんじゃないのかって思いました。

 

 結局、本人がとぼけるので外へ出た目的もなぜすぐに戻ってきたのかも不明。


「あれ、ワシなんかしちゃいました?」


 みたいなチートおじいさんでした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 暗証番号覚えるのはすごいですね。 なかなかできることじゃないよ。
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