心殺しの少女
心を殺すこと いくたびいくたび
ありすぎて
何も感じなくなってしまった
少女がいた。
ある朝、目覚めたら
心のなかに包丁が出来上がっていた。
それは 他人に近づくだけで
人の心を殺せる 優れ物だった。
人の心 刺すたびに
自分の心 少し感じる
そのために その少女は
たくさんの人混みのなか 彷徨って
どんどん心 殺していった。
たまに 強靭な 精神の持ち主が
はむかって 逆に刺そうとしてくるけど、
そんなの どうでもいいことだ。
真っ暗のなかから 取り出した包丁
パチンと音がして 人の心 刺して潰した。
その 強靭な 精神の持ち主は
二度と立ち上がれなくて
生きてるけど 死んでいて
空洞になって 遠くを見つめていた。
そのとき 少女は
とてもとても 自分の心を感じることができた。
生まれて初めて 幸福を感じた。
誰にもわからない。
少女のやったこと
誰にもわからない。
たまに 健全な 精神の持ち主
説教してくること あるけれど
きれいな空気 吸ったこと
生まれてこの方 ひとつもない
その少女には 響かない。
心を求めて 彷徨って。
自分で殺すしかなかった心
感じるために 彷徨って。