第6話
次の日、軽い朝食をとって(お金ないからパン1個むなしい)ギルドへ。
年季の入ったレンガ造りの建物。
「ギルドはここか」
両開きの大きめの木製の扉を開く。
そういえば、約束してなかったけど誰かいるかな。
入って中を見回す。
えーと、正面がカウンターで手前が...あ、やっぱり酒場か。
この辺はお約束だよね。
やっぱり結構混んでるなあ。あの人だかりがあるのが依頼が貼ってあるところだろうな。
筋肉隆々にレザー系の鎧の奴が多い。
まあ、フルプレートメイルはいないよな。
って、いた。
壁役か。
でも、あんなんじゃ移動スピード出ないよなあ。
まあ、とりあえず入ろう。
「あ、きたきた。ヤッホー元気ぃ?」
入口から入るやいなや誰かが飛びついてきた。
「えっ!...えええー!」
ファベールだった、やっぱり…。
「今日はどうしたの?依頼をさがしに?」
「いや、ちょっと話ができればな、と。あと恥ずかしいんだけど、お金がなくなりそうだから、昨日言ってた分け前分もらえたらなって」
「そうかあ。もう少ししたら、みんな来るんじゃないかな。
で、話って何?...もしかして告白とか?」
「いやいやいや違うって」
大げさに否定すると明らかに不機嫌そうに頬を膨らませ
「そんな完璧に否定するかなあー」
「違うって!キライとか、そう言うことじゃなくて...可愛いと思うし…」
「え、可愛い?やっぱり告白?」
「いや違くて...って、話進まないよぉ。
いや、聞きたいことがあってさ。もしかして、当たり前のことで、みんな知ってるのかもしれないけど…。
ステイタスのことなんだけど、例えばレベルとか、普通、どのくらいなのかなあって...」
「私は今レベル12だよ。結構強い冒険者だとレベル30超えとか、もう、達人みたいな人になるとレベル50を下手すると超えるらしいよ。
あと、英雄みたいな人になると、レベル80とか…考えられないよねえ」
よかった、今のところ、この年では弱すぎず強すぎずみたいだ。
「レベルって上に行くと経験値がバカ高くなるらしいんだよね。だからさ、この辺りのモンスターじゃさ、いずれ頭打ちになるし、強い人ってのは旅する冒険者に多いみたいだね」
「あとさ、パラメータなんだけど、これって生まれた時にランダムに決まるの?」
「よくは知らないんだけど、そうみたいだね。はっきり言って、ものすごい差があるみたい。
羨ましいよね、はじめから高いパラメータとか」
「でもさレベルが上がるとパラメータもいじれるでしょ」
「あー、それ?それってレベル10毎でしょ。確かに大きく上げられるけどさ。
レベル10毎に1回ってことは頑張って30まであげても3回しかチャンスないんだよ。
し・か・も!
どれかに絞ってレベルを3回分15上げても始めからパラメータに恵まれてる人の高いパラメータとの比較だったら、やっと、勝てるかどうかってこともあるみたい。
それに上げちゃうともう修正できないから悩むのよねえ。
笑い話じゃないんだけど、どれに使うか決めきれずに、全くパラメータ変更せずにパラメータ変更権を溜めちゃって、悩みに悩んでるうちにモンスターにやられて死んじゃった人もいるみたい。
強さか生命力に振ってたらきっと死ななかったのにって言われたらしいよ」
気持ちは分かる。
「エリクサー最後まで使えない派」、「シューティングでスペシャル持ったままやられる派」だから。
さすがに、この前は死にたくなくて使ったけど…。
「でも、レベル12だったら、ファベールはもう使ったの?」
「あんな話したけど、あたしは悩まなかったよ。
だって盗賊だよ。速さ一択でしょ。攻撃にも罠解除にも効果あるし」
「え、でもさ。運とか上げてもいいんじゃないの。確かに運て言うのはさ。どんな効果あるのか未知なんだけど、罠回避とか敵に遭遇する確率減らすとか、なんか効果ありそうじゃない?」
ファベールはなんか、キョトンとした表情になった。
「何?運て?そんなパラメータ知らないけど」
え!ヤバ!!募穴?
「イヤイヤ、そうでなくて...。ちょっと運が悪いなって自分のこと思ってて、運もパラメータで変更できたらいいなと思って...」
「確かにねえ。昨日もあんなところでベヒーモスに会うし運悪いかも」
お、セーフ?ごまかせた?
あ、っぶね。気をつけないとな。
「あ、そういえば、そっちはレベルいくつ?」
「レベル11」
「頑張ってるじゃない」
「こっちのが低いのに?」
「だって私は冒険者だよ。そっちはハンターでしょ?それじゃ、あまりレベル上がらないでしょ。日常生活でもレベル上がることはあるけど、やっぱり強い敵を倒すのが一番だからね」
「なるほど」はいいけど言い訳が必要か。
「僕のブーメランて武器はね。上手くなるとすごい効率で狩れるんだよ」
なんて、まだ、狩したことないけど。
「そうかもね。昨日の腕前なら」
彼女は頬を染め、こっちをじっと見てくる。
あれ、なんでそんな視線を?
普通気づきそうなことでも、そんな目で見られたことがないから
ヴンダーはその意味に全く気づかない。