第4話:
どういうつもりなんだろ。
...まさか、盗賊だから、なんか盗もうとしてるとか?
いやいや、金目のもの持ってないし…。
まあいいや。
また、会うとは限らないし。
考えを切り替える。
宿か。
また、記憶を探る。
彼、ヴンダーは今、一人のようだ。
故郷の村をモンスターの大群に襲われ、彼だけが逃げ延びた。
...ってムチャクチャ、ハードじゃないか。
とにかく、身一つでこの街にきて、宿に泊まってるらしい。
その宿に向かおう。
アケボノ亭というらしい。
「いらっしゃいませ…ああ、お帰り」
宿の女将さんはちょっとポッチャリの愛らしい人だった。
意味もなく、なんか食事が期待できそうな気がした。
「ご飯どうする?」
食事はとってきたことを伝え、部屋に向かおうとすると、声をかけられた。
「あれ、お客さん。なんか雰囲気変わったかしら」
「そう?あ、今日ね、ダンジョンでひどい目にあったから、そのせいかも」
「あらそう。それは大変だったのね。
じゃあ、今日は早めに寝たほうがいいわね。
おやすみなさい」
なんか歳のせいか、僕のことを自分の子供のように感じてるのかもしれない。
そのとき胸の奥がチクリとした。
母さん...どうしてるんだろう。
元の世界の僕はどうなったのか?
死んでしまったのだろうか?
もし、そうなら
父さんだけでなく僕もいなくなって
母さんは本当にたった一人になってしまった。
やっと安全と思われる場所に来たせいか
急にそんなことかが気になり始めた。
とにかく今は情報を集めるしかない。
帰れるとか考える前に、まず生き抜くことさえ、今はまだ難しい。
考えごとをしながら歩いてると、部屋の前に着いた。
ドアを開ける。
お金がないやつが泊まるところだから、そんなに豪華なところじゃないと思っていたけど
そんなに狭いわけじゃないし、何より清潔で心地良さそうな部屋だった。
「意外、と言っちゃいけないけど、いい部屋だなあ」
ベッドとテーブル、イス2脚。
お風呂と冷蔵庫は…あるわけないよな
ビジネスホテルじゃないし。
イスに座り記憶を辿る。
お金もあまり持っていないようだ。
宿代は1週間分を前払いしてるみたいだけど、この所持金で泊まれるのは最大1ヶ月くらい。
この世界が例のゲームだとすると、そもそも、元の世界の住人が構成した世界だから
とんでもない貨幣感覚ではない。
ヴンダーの買い物の記憶からすると、おそらくは
石貨が100円
銅貨1000円
銀貨1万円
金貨10万円
って感じだ。
所持金は金貨2枚と銀貨6枚。
この宿屋は1日銅貨6枚で泊まれるみたいだけど、食費とかもかかるし、やっぱり余裕はないよな。
お金がなくなる前になんとか稼がないと住むところもなくなるし、なにより飢え死にする。
最悪野宿するか?
ないない!
こんなとこで野宿したら、追いはぎかモンスターにやられる。
情報は今の所少ないけど、「冒険者、ギルド、モンスターで金を稼ぐ」というファンタジーの王道は使えるみたいだし、しばらくは、それで行くしかないだろう。