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プロローグ:不運な毎日 前編

初めは鬱展開ですが、途中からハッピーな展開になっていきます。

プロローグ終わるまで、耐えきれるかどうかです。


プロローグは2話分です。

行きたくない。




でも、もう出ないといけない

重い足を一歩前に。




自転車の空気入れが制服に引っかかって倒れ、むこうずね強打。


「う」

気分はますます重くなる。




昨日、確かに自転車に空気を入れた。

それに、いつもはきちんと片付けるのに、今日に限って、なぜ。




昨日のことを思い出す。


片付けようと思った時、母から声をかけられ、戸棚の食器を下した。

そうだ、それで忘れたんだ。




完全記憶があっても思い出そうとしなければ、意味がない。


忘れているわけではないのだが...。

記憶は取り出して、使おうとしなければ意味がない。




僕には「完全記憶」がある。

「記憶力がいい」というのは羨ましがられることではあるのだが


一方で「忘れることができない」ということは何度でも「トラウマのような風景が今起こっているかのように目の前に浮かぶ」ということ。




まさに自分、高坂 隆はそういう人間だ。




なぜか、いつも、悪い方向に転んでいるような気がする

不思議なほど。




きっと、気のせいだと言われるだろう。

それとも、完全記憶を持っているなんて、運がいいと言われるかもしれない。




でも、その能力もトラウマがリフレインする自分の人生では悪い方に転ぶ方が多い。

その中でも最もいやな記憶は「父が亡くなる瞬間」だ。


あの時




まだ幼かった自分は慣れない自転車でヨロヨロと車道に倒れかかる。

それを助け起こそうとした父は…。




その瞬間から記憶は固定された。

その時まで完全記憶を意識したことはなかった。


運が悪いと思ったことも。




あの時


ショックのあまり、しばらくして意識を失い

気づいたときには


自分を強く抱き寄せながら、すすり泣く母の姿が目の前にあった。




「あなたは何もわるくないのよ」




学校に行くようになった。


そして、ある時をきっかけに、いじめられるようになった。

テストの時、答を教えろと言われ、断ってからだ。




最悪だったのは理科室の記憶。




カーテンが閉まり、暗くなっていた理科室。




呼び出された自分が行くと、いきなり数人に押さえつけられ、スポンやパンツを脱がされ

マジックでいたずら描きされた。




暗かったが、何も見えなかったわけじゃない。

そこにはいつもイジメているやつだけじゃなく、他の奴もたくさんいた。

なぜか女子も。


女子は目を隠している。

しかし、なぜか、その奥から覗き込んでいる視線を感じた。


みんな、興奮して、笑うような表情をしていた。




その時、やつは言った。

「ゲームだからな」




そのあと、僕を撮影した写真が裏掲示板に上がった。

でも、誰かがすぐに削除したらしい。




画像は消えるけど

記憶は消えない。




そして今


高校に入った僕はまたいじめられている。




それは入学してから少し経ったとき。




全校集会で前席のやつが前の学生を蹴ってたのだ。

周りの人間は…見ないようにしてた。




その時何を思ったのだろう。


いじめられないように目立たないようにしていたはずなのに

つい


「やめろよ」




その声を聞いた二人。

そう二人だった。


一人は少しポッチャリしたタレ目、もう一人は整ってると言ってもいい顔立ち。

後で知ったが二人は付属上がりの知り合いだったらしい。




こちらを見て

「なんだお前」




そう、その日から始まった。

あの時、なぜ声をかけたのだろう。


彼を助けようなんてカッコいい話ではない。

彼の姿が自分に見えて、ただ、いやだったからだと思う。




あの後




いじめられていた奴はターゲットが変わったからか。

あまり、イジメられなくなった。






はじめは感謝の言葉を口にしていたけど、その内、離れていった。

巻き添えを食いたくなかったのかもしれない。


彼が悪いわけじゃない。




弱さとはそういうことだ

弱さは身体的とか、そういうことじゃない。


心の弱さだ。


心の強さが無ければ

抗おうという気持ちにはならない。




ともあれ、今の僕の立場は、そうなっているわけで積極的に学校に行きたい気持ちにはならない。




クラスメイトのほとんどは見ない振りだし、先生も明確な現場を押さえたとかでなければ何も言わない。

そもそも現場をおさえられたことなどない。


仮に見られても


「遊んでただけでーす」

で終わりだ。




僕のできることといえば、授業中以外はなるべく離れてることだけだった。




不登校というわけじゃない。

僕はこれから学校に行く。




「いってらっしゃい」


母さんだ。




「あの時」から僕たちはたった二人の家族になった。


僕までも失いたくないと思ってるのだろうか。

ちょっとしたことでも僕のことを気にかけている気がする。


だから、いじめられているなんて分かったら、どんなに悲しむかも、分かってるから。

母さんには気づかれないようにしないと...


そう思ってる。


教科書を破られたり捨てられたりしたけど...


不幸中の幸いだろう。

僕の頭の中に全て入ってるから。




今、僕はカバンに何も入れずに学校に行ってる。


先生も僕の特殊能力を知ってるから、今は何も言わないけど、アルバイトの給料で中古の教科書を買おうと思ってる。




ちなみに上履きも捨てられたけど、それは安い靴を中古で探して履いてる。

先生はうちの経済状態を知ってるから、今のところはなにも言われない。




考え事をしながら歩いていたら学校に着いた。


「おはよう」

校門のところで僕に声をかけたのは葛西 七海だ。

彼女はクラスのアイドル的存在。


何だろう。


不思議とこういう子は可愛いだけじゃなく性格もいい気がする。

なに不自由なく育ったわけじゃないだろうけど、可愛いと性格が曲がってしまうようなことに会いにくいということなのかな。

もちろん絶対にというわけじゃないし、顔が可愛い子がみんな性格がいいわけじゃないんだろうけど。

性格がいい子っていうのはきっと育ちもいいんだろうなあ。


正直、羨ましい。


でも声をかけられるのは、うれしい反面、困るところでもある。




ほらきた。


「よお、楽しそうじゃん、高坂」

二人プラス1。


そう、いつもの彼らと...こういう言い方はどうかと思うけど


腰巾着だ。

彼らからすれば僕みたいなやつが可愛い女の子と話してるのは目障りなんだろう。




近づいてきた山崎(般若)は僕のコメカミを両拳で挟み、グリグリする。


猛烈な頭の痛さ。


その横で佐々木(タレ目)と樺山(腰巾着)は僕の方をニヤニヤしながら見てる。




「いい加減にしろよ」



「あ?!」

3人は声がした方を見る。

僕も見た。


声をかけたのは真行寺 哲也だ。


彼はたぶん、すごいいい奴だ。


男女とも彼を嫌う人など、ほとんどいない。

誰とでも気さくに話すし、聞いた話では不良グループも彼には一目置いてるそうだ。


イケメンで性格もいい。なんて完璧なんだ。



「チッ、カッコつけてるんじゃねえよ」


「じゃあ聞くけど、君は彼に何かされたのか?」


山崎はにやけながら言う。

「別にじゃれてるだけじゃねえか、ほっておけよ」


「そうはいかないな」


「フン、そうかよ。行くぞ!

またな、ゾウさん」




そう。

僕は「ゾウさん」と言われてる。


あの理科室の事件をどこから、誰から聞いたのだろう。

彼がゾウさんと言ってるのは「あの部分」のことだ。




彼はニヤニヤしながら去っていった。




「ありがとう」


「相変わらずだな、彼は」

去っていく姿を見ながら、真行寺が言う。


「高坂、君はひどい目に合ってるんだろう。中村先生に言って、問題にしたほうがいいんじゃないか?僕だってきちんと証言するよ」


「やめてくれ」

僕は大きな声を出した。


真行寺は僕を唖然とした顔で見てる。


「あ、ごめん。違うんだ」

事を大きくすると家族に、母さんがこの事を知ってしまう。

でも、そんなことは言えなかった。


「いや、ごめん。僕のことを思って言ってくれているのはわかるんだ。でも、もう少し、もう少し、ちょっとだけ考えてみたい」


「...分かった。でも、辛くなったら、いつでも言えよ」

真行寺は去っていった。




いい奴だなあ。いい奴すぎる。

あ、葛西が見てる。


真行寺を見て、ちょっと頬が赤くなってる。

やっぱりモテるなあ、真行寺は。




ホンワカしたところで


ふと

今日は楽しみにしてることがある事を思い出した。




そう。

今日はアレが来るんだ。

真っ暗な内容ですいません...はじめだけです。

残り1話。

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