2.第2章 剣士4-4
勇者ヴフは、ヤコック王に促されてピラミッドの祭壇を登って行った。
二人の後から、武科の衛兵達が続いた。
ピラミッドの頂上の祭壇に着くと、ヴフは、黒い大きな石板にくくり付けられた。
うやうやしく両手で、頭上に剣を捧げながら、コアトルが階段を登って行く。
その剣を、ヤコック王に渡した。
いつしか夕闇が迫り始め、黒い雲がとぐろを巻いて、ドクロの形と成っていた。
闇の中から、暗黒神が現れた。
そこに居合わせた何十万ものシバルバ族が、かたずを飲んだ。
「我らの創造主の神々に感謝の念を!!!。 証として、我らの勇者の心臓を与えん!!!。」
「我らに永遠の平和と豊かな実りを与えたまえ!!!。」
「シーバルバ! シーバルバ! シーバルバ!。」
その声に、観衆が同調した。
拳闘場は、大合唱となった。
シーバルバ! シーバルバ! シーバルバ!。
ヤコック王は、縛られているヴフに剣を持って近づいた。
そして、その首から下げているシバルバ石で出来た首飾りを引きちぎった。
シバルバ石の首飾りは、明白神が暗黒神の災いを受けないように、シバルバ族に与えたものと、考えられていた。
ヴフにワインを飲ませ、王盃を祭壇に叩き付けて割った。
ガシャーンン。
そして、もう一度大きく叫んだ。
「我らの勇者の心臓を与えん!!!。」
ヤコック王は、勇者ヴフの心臓を えぐり取った。
真赤な血しぶきが、真白いヤコック王の祭礼衣を染め上げた。
陶酔した観衆達の大合唱が響き渡った。
シーバルバ! シーバルバ! シーバルバ!
ヤコック王は、その心臓を天空に突上げた。
シーバルバ! シーバルバ! シーバルバ!
黒い雲が広がり、ポツリポツリと雨が降り出した。
そして、その心臓を祭壇の定位置に奉った。
勇者ヴフの首は、落とさなかった。
祭壇に十二個の心臓と、十一個の首が奉られた。
黒い雲がうごめき、一瞬暗黒神が舌なめずりをしたように見えた。
コアトルには、確かにそう見えた。
雨が大粒になってきた。
シーバルバ! シーバルバ! シーバルバ!
ヤコック王が閉会の宣言を行い、太鼓と角笛の音が響き渡った。
ドンドンドン!!!。 プオープオープオ―ーー。
暗黒神が集めてきた黒雲から、稲光が走り出した。
ピカッ。ピカピカッ。
どしゃ降りの雨になった。
何十万の人々は、蜘蛛の子を散らすように家路へ急いだ。
とっぷりと日は落ち、夏至の祭りは終わった。
激しい雨は拳闘場を洗い流し、血の川が出来上り、下の谷へと流れて行った。
さっきまでの興奮が嘘のように、シバルバ国は雨にむせび泣いていた。
着替えを終えたヤコック王の執務室に、イサムナとカサスがやって来た。
「ご苦労であった。無事夏至の祭りを終える事が出来た。二人のおかげだ。」
「勿体ないお言葉。ありがとうございます。」二人とも同時に、言葉が出た。
「祭りの後の卜占は、どうであった。」ヤコック王が尋ねた。
イサムナが答えた。「今年も大豊作。人々の生活は安泰と出ました。」
「そうか、良かった。」
「一時はどうなる事かと思ったが。」
三人の顔に、やっと笑顔が戻った。
勇者の心臓を、神の為に奉げる夏至の神事。
生贄を神に奉げる事は、よくある事ではあるが……。
人間の心臓とは……。
旧約聖書では、羊を生贄にしていました。
日本では、………。
よく神社やお寺さんに鹿がいます。
鹿が生贄の動物のようです
では冬至の神事とは?。
どんな神事なのか?。
孤高の種族シバルバ族は、他の種族とどう関わって行くのか?。
そしてコアトルの初恋の行方は?。
興味は尽きませんが、今はここまでで!!!。