2.第2章 剣士3
決勝戦は、長身の剣士と太った剣士に決まった。
しばしの休憩の後、戦いは始まった。
もう二人とも、疲労の極限に来ている。
それぞれの村人達が、誉れ高き勇者を自分の村から出そうと、大声援をおくった。
ドドドドドドドドドー――――――――――――ンン!!!
開始の太鼓が鳴った!!!
早期に決着を付けようと思ったのか、長身が太っちょに剣を叩き付けた。
ガイ~~ン。ガイ~~ン。
力と力がぶつかり合い、互いの刃がしなった。
交わった刃がこすれて、刀の鍔と鍔が重なった。
力と力の勝負。
二人の顔と顔が近づいた時、太っちょが長身の足を、踏みつけた。
「あうっ!」
太っちょの剣を払いよけながら、長身が後ろに逃げた。
間合いを取って、歯をギリギリさせながら、太っちょを睨みつけた。
今度は、太っちょが剣を振った。
下半身が弱点とみて、剣を下から上へ切上げて来た。
ガンガンガン!。 続けざまに剣を突き上げる。
下からの攻撃に、態勢を取りづらい長身。
受身一方になって、どんどん後ろに下がって行ってしまった。
「大振りすぎる。疲れているせいか、リズムも一定になってる。長身の剣士の勝ちだ。」
コアトルは心の中でつぶやいた。
毎日剣の指南を受けているだけの事は有る。
勝者が、どちらなのか解った。
長身は剣を受けながらも、そのリズムを計った。
そして、太っちょの剣が下から突上げられようとした時、その剣を踏みつけた。
剣を踏み付けられて、前のめりになった太っちょの剣士。
長身の剣が飛んで来るのを恐れ、剣から手を放してしまった。
「あががが ヴァヴァヴァ。」尻餅を付きながら、後ろに逃げた。
長身の剣士が狙いを定めて、一直線!。
太っちょの腹から背へ、剣を貫いた。
今年の夏至の神事の勇者が決まった。
長身の剣士は、青山の農夫の息子ヴフだった。
青山の村人達から、大歓声が沸き起こった。
他の土地の村人達も、勇者ヴフを称える大歓声を送った。
ワ――――!!! ワ―――!!! ワ―――!!!
切り立った山々のシバルバ国に大歓声がこだました。
ヴフは、太った剣士の首と心臓を切り離し、それを持って祭壇の前にいるヤコック王に渡した。
ヤコック王はヴフを称え、ワインとパン、牛の生ハムを渡した。
永延続いた夏至の神事も終わりに近づいた。
日が傾き始め明白神は、いつしか天空から消えていた。