2.第5章 冬至の神事2
「どうして!どうしてなの! ねえコアトル! どうしてマヤウェルなの?」
エカリーは、コアトルに詰め寄った。
「今まで、王族の娘が選ばれた事は無いわ! 何で王族の娘が、神のいけにえになるの? そんな事、聞いた事がないわ。」
「毎日毎日、神々の為に世話をしている王族の娘が、いえマヤウェルが、何で、いけにえに選ばれるの?」
「僕だって、ビックリしているよ。王宮は今、王族の人間がいけにえに選ばれたことで、大騒ぎになっている。」
「シバルバ族の過去の資料や文献を、今卜占科が、必死で調べている!。」
「イサムナも、卜占をして状況を鑑定しているけど、答えは出てこないみたいだ。」
「コアトル!これから時間ある! 二人で、マヤウェルに会いに行きましょう!」
コアトルは武科長のカサスに状況を説明して、授業の後エカリーと共に、マヤウェルの家に向かった。
マヤウェルは暗黒神の御神託がくだった後、学校には来ていなかった。
コアトル達が思うほど、当の本人のマヤウェルは冷静で、いつもと変わらない元気な明るい少女のままだった。
ただ額にいけにえの印として、赤い星のアザが浮かび上がっていた。
ドゴン族の雷によって、出来たものだ。
赤く皮がむけていて、痛々しかった。
「国の代表として、冬至の神事の主役になれるなんて、光栄な事よ。特に今回は、王族から選出されたんだから、来年は豊作できっと良い年になるわよ。」
「私の命と引き換えに、シバルバ族に一年間の平和をもたらすわ!」
「マヤウェル。」
そう叫ぶとエカリーは、マヤウェルに抱き付いた。
目からあふれ出す涙を、ぬぐおうともしないで。
「ポポルは、ポポルは来ていないの。 あいつ、今日学校を休んだんだけど。」
コアトルが言った。
「ポポルはねぇ。 朝一番で、私に会いに来たの。いっぱいいっぱい話をして、さっき帰った所よ。」
「私、ポポルに言ったの。私が居なくなった後は、もう一回卜占科の術者に、ポポルの結婚相手を、みつけてもらってね、って。
ポポルは、何言っているんだ!って言ったけど、それ以上は、何も言わなかったわ。」
「私達シバルバ族は、神に仕える種族。神が決めた事は絶対。結婚相手だって、卜占の神からの御神託だし、何一つ自由なんかじゃないんだから。」
「私達の命なんて、神々の手の中よ。生かすも殺すも神々次第、私達はそれに従うだけ。 そんな種族なのよ。」
コアトルは、王族の頂点の王の子として、神事の一切を行っている自分達が、責められている様で複雑な感情に囚われてしまった。
コアトルは、凶事を司る暗黒神に対して、怒りの念を覚え始めた。




