4.第4章 キチェ族の村へ1
「ガルル、ガウガウ。」
「ガルル、ガルル。」
コアトルは半眼になり、キチェ族達の声に意識を感応させた。
「…………。」
「ガルル、どうしてシバルバ族と、ガルル、マント族が一緒にいるんだ。」
「ガルル、理由はどうであれ、ガルル、こいつらは勝手にキチェ族の村に入り込み、仲間を切り裂いて殺した、ガルル。」
「ガウウ、こいつら二人を殺さなければ、ガウウ、気が済まない、ガウウ。」
「ガオ―ン、そうだ、ガオ―ン、そうだ。」
コアトルは、徐々に彼らの会話の内容を理解した。
「ガウウ、いいか二人を中心として、全員で左回りに回転する。」
「五回、回ったところで、5匹は上空、その他は地面から二人を攻撃する。」
「ガウウ、ここで一気に奴らの息の根を止める。」
一匹のひときわ大きいリーダーらしきキチェ族が言った。
「ガウ―――ン!。」
草原を震わす鳴声と共に、キチェ族全部が走り出した。
コアトルとマックを中心として回転運動を始めたキチェ族。
自分達の目の前の波立つ草原の穂を見ながら、マックが言った。
「キキキッ、まずい、これではどこから攻撃して来るか分からない。」
「さらに見詰めていたら、目が回り出す。」
「万事休すだ。」
ザザザザザ―――ッ。
1回2回3回、キチェ族が二人の周りを回った。
「ガウ、ガウ――ッ!。」
「止まれ、止まれ――っ!。」
「今すぐ止まれ――っ!。」
ザザザッ。
「ガウガウ、どうしたどうした、何があった。」
「ガウガウ、隊長どうしたのですか?。」
その声に反応して、キチェ族達は動きを止めた。
二人の周りの草原は、また静かになった。
「ガルル、ガルル、俺が出した指示ではない。」
「誰が叫んだんだ?。」
キチェ族達は互いに声を掛け合い、誰が叫んだのか探しあっていた。
「ガルル、ガウーン、ガウーン!」
「僕だ、僕が叫んだ、シバルバ族のコアトルだ!。」
キチェ族の輪の中心にいるコアトルがキチェ語で答えた。
キチェ族達は血だらけになり、剣を構えているそのシバルバ族の少年に目を向けた。
えっ、この少年がキチェ語を叫んだ?。




