2.第3章 コアトルの初恋4-4
職員室に入ると、卜占科の長であるイサムナが、コアトルを呼んだ。
「コアトル王子の卜占は、私が直々に見立てさせてもらおう。」
コアトルは一瞬緊張したが、「ありがとう、イサムナ。よろしく、お願いします。」 と答えた。
机の上には、すでにシバルバ曼荼羅図が広げられている。
そこかしこの机で、卜占科の術者が、生徒を前に卜占をしていた。
ジャッ! ジャッ! ジャッ!。
いつものように、九本の竹を両手でしごくと、パッと曼荼羅図の上に落とした。
イサムナは女子の名前が入った名簿と、曼荼羅図に落ちた竹を見比べながら、見立てを始めた。
「銀山の監督長官の娘、エマ。」
「…………………………。」
「武科の副長官の娘、ティア。」
「…………………………。」
コアトルは、焦った。
「仕立師の娘、エカリー。」
「エカリーを指名します。」
イサムナの目をじっと見つめて、コアトルは言った。
「エカリーを指名します。」
イサムナは、一瞬眉をひそめた。
「本当に良いのかコアトル。エカリーは、王族とはいえ仕立師の娘だぞ。」
「いいんです。エカリーを指名します。」
「そうか、わかった。向こうが指名しなければ、それまでだ。」
「教室に戻って、結果を待て。」
教室に戻ると、すでにポポルはいなかった。
カップルが成立した生徒は、拳闘場で行われている、お祭りに参加するのだ。
女子のクラスを見てみると、もう半数以上がいない。
エカリーも、いなかった。
「どうなるのかなぁ。」 深くため息をついた。
女子のクラスにエカリーが戻って来たが、こちらを見る事もなく、うつむいて席に座ってしまった。
窓の外、抜けるような青空の中、明白神が白い雲の帯を流していた。
術者が、教室に入って来た。
「コアトル。教室から出なさい。」
促されて教室を出ると、そこに立っていたのは、エカリーだった。
初めて面と向かって、エカリーと、目と目があった。
コアトルは真っ赤になって、やっとの思いで「やぁ。」とだけ伝えた。
「お互いの結婚相手が決定した。拳闘場に行って、お祭りを楽しみなさい。おめでとう!。コアトル王子!。」
二人は手をつないで、学校を出て拳闘場に向かった。
「ありがとう、エカリー。 僕を指名してくれて。」
「いいえ。こちらこそ、コアトル王子。」
コアトルの、つないだ手が、汗ばんだ。
嫌がられるかと思って手を放そうとしたが、エカリーがギュッとコアトルの手を放さなかった。
拳闘場では大人達が、沢山の屋台を出して、若い恋人達を祝っていた。
楽隊も出て、老若男女が拳闘場で踊ったり、ワインを飲んだり、美味しい食事をしていた。
拳闘場の真ん中で、ポポルがマヤウエルと、踊っているのが見えた。
二人は、その喧騒から離れて、拳闘場の隅のベンチに腰かけた。
何もしゃべらず、ただ黙って手をつないだまま、秋分のお祭りを見ていた。
少年コアトルの初恋は、実った。
でも波乱はこれから。
二人の愛は、成就するのか?。
ひと時の幸せで、終ってしまうのか?。
明白神は、二人を守ってくれるのか?。
興味は尽きませんが、今はここまでで。




