2.第3章 コアトルの初恋3
秋分の神事は、シバルバ族の若者達にとって、心ときめくお祭りであった。
16歳から19歳までの若者達を集めて、その結婚相手を決める神事だからだ。
卜占科の術者が、三人の候補を提示して、自分がその中の一人を選ぶ。
相手の方にも三人の候補が提示され、男女共に指名していたら、許嫁として決定される。
男子のクラスと、女子のクラスで、同時に別々の部屋で指名合戦が行われた。
秋分の神事の朝、ポポルは机に顔を埋めながら、自分の名前が呼ばれるのを待っていた。
「なあなあコアトル。俺の相手は、うまくマヤウエルになるかなあ?。」
自分の席でもないのにポポルは、コアトルの隣に座っている。
「どうだろう。候補を決めるのは卜占科の術者だから。」
「まずは、候補の三人の中にマヤウエルが、居るかだっ!。」
「居たとして……。俺は、マヤウエルを指名する。」
「それでだ!。今度は、マヤウエルに三人の候補が伝えられる!。」
「そこで!。マヤウエルが、俺を指名するかだ?。」
「そんなの、分からないよ……。」
コアトルは、自分の事で頭がいっぱいだった。
「きのう集団下校の時に、俺はマヤウエルを指名する!!って、伝えたんだ。」
「そしたら、マヤウエル!、ニコってしたんだ!。」
「これって、どう云う事だと思う?。なあコアトル!。」
「そんなの、わからないよ……。」
「コアトルは、エカリーに気持ちを伝えたのかっ?。どうなんだ?。」
「剣術の稽古があって、そんな時間はないよ。きのうも、カサスと夜まで稽古をしていたし。」
「次っ。ポポル。 職員室に来なさい。」いきなり、卜占科の術者に呼ばれた。
ポポルは、ビクッとして、小走りで教室を出て行った。
ふと女子のクラスを見ると、女子も教室を出たり入ったり、していた。
エカリーは、不安げに頬杖をついて、席に座っていた。
意気揚々として、ポポルが戻って来た。
「やったぜ!。マヤウエルを指名したぞ!。」
ポポルは身を乗り出して、女子のクラスからマヤウエルを探した。
マヤウエルがいない。
今、卜占中なのか。
さらに、身を乗り出すポポル。
と、ドアを開けてマヤウエルが、戻って来た。
窓越しに、ポポルを見るなり、右手を上にあげ、指先で丸を作った。
目を真ん丸にしながら、ポポルも右手を挙げ、指先で丸を作った。
嬉しさをどう表現したらいいか分からない様に、足をバタバタさせたり、上を向いたり、下を向いたり、腕をブンブン回したりしていた。
何度もマヤウエルに向けて、指先の丸を突き出していた。
「次っ。コアトル。 職員室に来なさい。」
術者の声が、コアトルを指名した。




