愛の日記
みんなに聞いて欲しいことがある。
例)とある教室に生徒が四人試験を受けている。四人の名前はA.B.C.D君でA君から順に横に一列で座り、一人一人背中に漢字を1文字張り付けていて他の三人の漢字を当てるというものだ。漢字はどんなものでも良いが、試験の難易度を考えて「数字の一から九」にしておこう。横や後ろを向くとカンニング扱いをされ必ず前を向いていなければならなく、試験監督が教室を徘徊しているため目を盗む隙もない。
ここで君達には、監督の目線を持ってもらいたい。
想像してみてくれ。
どうだろうか。四人が悩んでいる中、自分だけは答えを知っている。誰がどの漢字なのか、自分だけは全て把握している。
分かりづらいかな?じゃあ、人狼ゲーム。
村に潜む人狼を探して処刑するというあのゲームで、GMを勤めてみよう。
誰がどの役職で、誰が嘘をついていて、誰が騙されいるか。
一緒に遊んでいながら、その全てを把握しきっているのは自分のみ。正確には「プレイヤー」ではなく「ゲームマスター」であり一緒に遊んでいると言って良いのかは怪しいところだが、それは些細な問題だ。
必死に生き延びようとしているプレイヤー達を悠々と眺めているこの状況、その存在。
それが、この世界の神だ。
プレイヤーに配役をし、後は全てプレイヤーに任せ自分はゲームの進行、ゲームを見て楽しむだけ。
それが、この世界にも当てはまる。
この世界の神は、俺達人間に配役をする。例えば、「こいつは主人公」「こいつはヒロイン」「こいつはモブ」というように。
そして世界を作り出した。神は世界、すなわちこの物語に介入することは認められていないため魂への配役のみして後は眺めるのみ。キャラクターが出会うことの不可能な生まれ方をしてしまったらしばらくして世界を破壊。魂はそのまま、上手くいくまで何度も繰り返す。
俺達は、物語のキャラクターに過ぎない。
神にとってこの世界は実験に使うためのただのミニチュアセットで、俺達はただの遊び道具で。
飽きたら捨てられ、思い通りにいかなくては捨てられを繰り返す。
終わらない悲劇は延々と、永遠に続いていく。俺達が、人間がどれだけ足掻いても抗っても。結局それも物語として、実験として扱われてしまう。
奴らには心がない。躊躇いがない。意味がない。抵抗しても意味がない。
何度も消されて、その度に人々は皆記憶をなくし憎しみ悲しみを忘れ生きていくのだ。
そうしていつのまにか諦めかけた世界で。
たった一人、それでも諦めずに抗い続けた「主人公」がいた。
残酷なことに、神々は「主人公」を正義のヒーローと位置付けたらしい。彼はどんな残酷な運命にも抗い、立ち向かい続けた。魂が壊れるまで戦い続けた。
この世界は残酷だ。神の手一つで壊れ作られ、俺達は何度も殺されて。
俺達プレイヤーは、神には勝てない。それは何をしても、決して覆らないのだ。
さて、君には期待しているよ?彼が守ろうとしたこの世界を、今度は君の手で守って欲しい。彼を隣で見続けた君には、その義務があるのだから。
日記はここまで。では、健闘を祈る。