05.嵐(二)
──嵐(二)──
「聞いておるのか? 俺のエサよ」
角に挟まって動けない『何か』が『超弩級上から目線』で何かを言ってくるという現況。
ジラフはこめかみに怒りマークを浮かべた。それから、
「ボボッ」
といつものように機械に点火、僅かに浮き上がったかと思えば、グルンと縦方向に百八十度回転しライオンを地面に頭から落とした。
「ぐぅうぇぇへぇっ」
そんな間抜けな声を上げて、地面にのびたライオン。ひよこの輪を頭の上に飛ばして意識を失っている。
「お、おい。どうするんだそのライオンはよォ! わざわざ気絶なんかさせたら、起きた時めんどくさいだけだぞ?」
──ほかの敵のように飛来物にぶつけて、勝手に逃げるまで待てばよかった。
そう思っても、もう後の祭り。
なので、
「じゃあゲームをしよう、ミーツ」
「ゲーム?」
「これから、ゴルフっていうゲームなんだけど、クラブっていう棒でボールを打って、それを穴に入れるまでに打った回数をきそうんだ」
「じゃあそのクラブとボールは?」
ジラフは自らの首を浮かせて、これがクラブだと言い張る。そして、ボールはというと、
「そのライオン!?」
「穴は何処がいい? このライオンがどこにねぐらを置いてるのか分かればいいんだけど…………」
「多分こいつは、三連大岩のところのライオンだろうな。あの大岩は、ちょうど上が穴になってるんだぜ? そこを狙うしかねえな」
「そうだね。じゃあ僕が、そこにこのライオンを入れられたら、君でパターゴルフをしよう。逆に入れられなかったら君でパターゴルフをしよう。いい?」
「そうだな、俺の身体ってこんなにも丸いから、どこまででも転がっていきそう……っておい――」
「よかったよジラフ。それじゃあ交渉成立――」
「おぉぅい! 今、俺が乗りツッコミしてやってるんだぞ!? さらっと流してんじゃねえ!」
「じゃあ、続きをどうぞ?」
「できるかァッ!?」
閑話休題。
ジラフは首を一点だけ固定し、ぱっくりと割れた格好にする。まさに首の皮一枚つながったように、機械のネジ一つを軸に頭を回転させた。
「痛そうなクラブだな」
「ジラフのついばんだときの方がよっぽど痛いんですが、それについて何か申し開きはございますでしょうか?」
「おかげでくちばしの先が丸くなりました」
ジラフは三連大岩の方角を狙って、角度を細かく調整した。
そして、未だにのびて、地面うつ伏せで横になっているライオンのお尻に、頭を合わせて構える。このアドレスの位置から大きくテークバックする。
「ごめんねライオンくん。ぼくも命がかかってたんだ。僕を食べようとしたらどうなるか、身をもって知れ!」
機械的に加速した首上は、目にも留まらぬ速さで百八十度、ぐるんと高速回転すると、ジャストミートして勢いよく吹き飛んでいく。首が惰性でぐるんぐるん
その衝撃で目を覚ましたライオンは、お尻の痛みと、なぜ空中を舞っているのかという様々な謎が解けず、
「ガオオオォォ!?」
そう叫んで飛んで行った。
そこでできた疑問。
――ああ、これ入ったかどうかわからないや…………。
しかし、
「すごいなジラフ! 入ったんじゃないか!?」
というミーツの声と同時に何かから背中に衝撃が与えられ、けかけのように、攻撃からの脊髄反射でその何かを背中から叩き落すと、ライオン同様に打ち出した。その時、
「ふわっ」
――ふわっ?
ジラフは回転させた首先の頭に触れた感覚に違和感を覚えた。その違和感が何かわかったのは、ふわっとした感覚と同時に、
「ジィイラアァフウゥゥゥゥゥウウゥゥゥウ!?!?!?」
「あ」
――これじゃあパターゴルフじゃないじゃん…………。
またすぐライオン出てきますねこれは。