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幻想魔界物語  作者: アル
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少女魔王に宿敵?出現編


今日も平和な魔界にある魔王城では、メイドのラティアが主人である少女に報告をしていた。

 「……あの一見以来は特に大きな問題もなく……か。 まあ、いい事ね?」

 少女魔王には大きすぎる玉座で頷くと、「よっこいせ……」と立ち上がる。

 「マナ様……お年寄りみたいですねぇ……」

 従者の指摘に少し恥ずかしそうになりながらも、「放っておいて」と返した、その時であった……。

 「ところがぎっちょん! そうそう平和に話は進まないわよっ!!!!」

 不意に響いた実際生意気そうな少女の声に、マナがその発生源へと顔を向ければ、ラティアも振り返って主人の視線の先を見た。 二人から5~6メートル程離れた所に、いつの間にか一人の少女が腕を組んで立っていた。

 年齢はマナと同じくらいであろうか、美しい金髪の髪を持った少女が挑戦的な紅い瞳で二人の方を見据えている。

 「……”ところがぎっちょん”ってずいぶんと昔よね? SE〇Dだったっけ?」

 「いえ、確かダブ〇オーだったかと……」

 魔王とメイドが唖然とした様子のままそんな事を言い合うのに、「気にするのそこっ!!!?」と不審者の方が愕然となった。

 「……まぁ、いいわ……こないだのマグロ食ってる奴を暴れさせたのが私だと言っても、そんな呑気にしてられるかしらぁ?」

 その言葉には、流石にギョッとした表情になり思わず身構えてしまう。

 「あなた……」

 「まあ、でも安心していいわよ? 私だって無関係な市民への被害は最小限度にする主義だしね?」

 目的を果たすのに無関係な者を巻き込むなどは人間のする事であり魔族がする事ではない、少なくとも極力出さぬように努めるものだとこの少女は考えている。

 「それは結構な事ですが……大事なのはあなたの目的ですね?」

 ラティアが主人の少女を守るかのように前に立つ、武器こそ持っていないがその表情も振る舞いも実際戦士のそれであった。 しかし、不法侵入少女にはそんなメイドに怯む様子もなく「うふふふふ……」と笑ってさせえみせる。

 「目的? 決まっているわ、そこのチンチクリンに代わって私が魔王になるのよ!」

 そう言うと同時に少女の右腕から黒い光が発せられ、それが刃の形を成すと同時に赤い絨毯の敷かれた床を蹴って跳ぶ。

 「先手必勝とは……」

 だが、ラティアは慌てることなく自分の武器を出現させ、「分かりやすいっ!!」と迎え撃つ。 白い輝きを発する光の両剣で黒き光の刃を受け止めたのだ。

 「メイドにしてはいい反応が出来る!?」

 「ええ、これくらいわ!」

 後ろへ跳んだ少女にラティアはすかさず反撃をするが、少女もそれを回避するだけの反応はしてみせ、「それでも!」と再び斬り掛かる。

 「私も魔王になろうっていうのだからっ!!」

 「殺生は好みませんが、マナ様の敵というならっ!!」

 一回、二回とぶつかり合う光の武器は、金属音と同様の甲高い音を発した。

 「あんなマナイタ娘が魔王とかっ!!」

 「はぁ……確かにマナ様はつるぺったんのマナイタですが……?」

 予想しない言葉に、戦っている少女の、動くたびに揺れる胸部を思わず見やってしまう。 確かに主人である少女とは比較にならない大きさとは認めた。

 「……はい? つか、ラティアも認めないでよっ!!」

 更に何度か刃をぶつけ合った後に互いに一旦間合いを取ったのと、背後からそんな主人の声が聞こえたのは同時だ。

 「つまり! そういう事よっ!!!!」

 自分に切っ先を向けながら言われるのに、「……ドユコト?」と目を点にしてしまう少女マナイタ魔王様である。

 「だぁぁああああっ!! 少女と書いてマナイタとか読むなぁぁああああああああああっ!!!!!」

 マナのツッコミの叫びが合図だったかのように、今度はラティアから攻撃を仕掛けた。 数メートルの距離をひと跳びで移動し敵である少女斬り付ける動きは、実際舞めいた奇麗な体さばきである。

 「マナイタであってもマナ様は立派な魔王であらせます!」

 「あんな! 私よりずっと貧相な胸で魔王なんてっ!!」

 両剣を棒術めいて回転させながらの斬撃を回避しながら言い返すと、「笑わせて!」と反撃するが、ラティアも横に跳んで回避する。

 「…………おーい……」

 その戦いを見守っていたマナがジト目で呟いていたのは、二人は気が付いていない。

 「マナ様の胸のなさを笑うとは……許せませんね!」

 「本当の事!」

 思いっきり振り下ろされた黒い刃を受け止めながら「……むぅ……そう言われてしまうと……」と少し弱気になるラティアに、「……いや、そこは言い返してよ……」とマナだ。

 「……まあ、いいわ」

 少女は不意に大きく後ろに跳び距離をとっても、ラティアもそれを追撃しなかった。

 

 城で働くメイド達が使う食堂は、百人以上が一度に使えるくらいに広い場所である。 昼とも夕方ともいえないこの時刻にその食堂にメイド達がチラホラといるのは、休憩でお茶と一緒に菓子類をつまむためである。

 「…………しっかし、あっちの世界は物騒よねぇ?」

 六人用の四角いテーブルに座っている三人のメイドの一人が言えば、「せやな~」「そうみたいね~」と相槌を打つ二人。

 話を振ったメイドの名は黒井リオンといい、後の二人は黒井ミオンと黒井シオンという名であった。 その苗字の示すとおりに姉妹であり、魔王城の”黒井三メイド”という二つ名でも呼ばれている。

 「やれ爆弾テロだのミサイルだのもんねぇ……」

 ミオンが呆れたように言えば、シオンも「まったくやで……」と溜息を吐く。

 「それに比べれば、魔界は平和でいいもんやで~」

 妹達の会話に長女であるリオンは、まったくその通りだと思いながら、皿に入った煎餅に手を伸ばしたのであった。


 「……もうお終いですか?」

 油断なく構ながら問うラティアに、侵入者の少女は「ええ、そうよ」と答えた。

 「今日は挨拶程度のつもりだったのよ?」

 そう言いながら黒い光の刃を消したのは、転移してこの場を去ろうというのだろうと分かったから、「待ちなさい!」とマナがそれを制す。

 「あら? 何かしら?」

 前に進み出たマナの堂々とした態度は、彼女がただ守られるだけの非力な女の子というわけではない事を分からせるに充分だった。 しかし、今自ら戦おうという雰囲気も感じられない。

「挨拶だって言うなら、せめて名前くらい言ってから帰りなさい!」

 少女は一瞬キョトンとした後で、「ああ。 そうね、うふふふふ!」と可笑しそうに笑いだしたのに、ムッとなる少女魔王であり、もう必要ないみたいでしょうというように光の両剣を消したメイド。

 「ええ、そうだったわね。 名乗りもしないで帰るのはいくらなんでも失礼だったわ」

 少女の表情からは邪悪なものは感じ取れず、どちらかといえば無邪気ないたずら少女という風だと思うラティアである。

 「私の名はリリカ。 リリカ・リアよっ!!」

 次の瞬間にリリカと名乗った少女の全身が眩い光を放ち、そして光が収まった後にはその姿は完全になくなっていた。

 数秒間の沈黙は、「ふぅ~」と小さく息を吐いたマナによって終わる。

 「よろしかったのですか?」

 「仕方ないわ、この程度の悪ふざけで捕まえたり……ましてや殺したりなんて出来ないでしょう?」

 人間の世界では反逆罪とかそんなものになろうが、魔王たるもの挑戦は堂々と受けて立ち打ち破ってみせろというのが、魔界の流儀である。 マナ個人も他者に対し限度を超えた迷惑をかけない限りは、今日のような事は個人的な喧嘩の範疇だと考えている。

 「まあ、そうですわね」

 穏やかに微笑みを浮かべながら主人に同意したラティアは、ではそろそろ夕食の準備を始めようかと思うのであった。


 そんなこんなで、多少の騒動もあったが魔王城の実際平和な一日は過ぎていくのであったとさ。

 

 

 


 

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