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幻想魔界物語  作者: アル
3/9

少女魔王と巨大不明生物編


 魔界にある魔王城は、今日も今日で平和な昼下がりの時間が流れていた……のであったが……。

 「マナ様、巨大不明生物が出現しこの魔王城を目指しております」

 メイドであるラティアからの報告に、少女魔王ことマナ・イタクアは自身の玉座で「……はい?」と金色の目を点にしてしまう。

 「……巨大不明生物……?」

 「はい、巨大で不明な生物です」

 まるで異星人の言葉を聞いたかのように呆然となり首を傾げるマナに対し、ラティアは実際そこいらにありふれた単語であるかのように言う。

 「トーキヨー湾に出現し水蒸気爆発を起こした後、カーマタの町近くに上陸してこちらを目指していると……」

 この時にマナの頭に浮かんだ映像は、ラブカのような頭にエラを持った不気味で気持ち悪い生き物であった。

 「……それって……やばくない?」

 そして次には、恐竜めいた黒い巨体の生物が口から紫色のビームを吐いてこの王都を炎上させている図である。 この城には精鋭の戦士達もいるが、ぶっちゃけ勝てる気がしないには、彼らを過小評価してではなく仙人めいて霞でも食ってそうなその生物がヤバイ奴であろうからだ。

 「まぁ……放置もしては置けないのは間違いないかと」

 「と、とにかく市民の避難を急がせなさい! ただし、迂闊な攻撃は避ける事っ!!」

 どこか落ち着いた様子のメイドの様子を不審に感じながらも、とにかく魔王として指示を出した。 例え胸はなくとも魔王としての責任感はきちんと持っているのが、マナなのである。

 「だぁぁあああっ! 胸の大きさ関係ないでしょうがぁあああああああああっっっ!!!!!」



 王都へと向かう街道で二人の少女がポカンと口を開けて見下ろしているのは、巨大なくぼみであった。 しかも、それらは真っすぐに王都の方向へと続いている。

 「足跡だよねぇ、お姉ちゃん……?」

 自分達が十人以上は詰め込めそうだと考えながら少女の片方が言う。

 「うん……そう見えるねぇ……」

 十代後半に見える長い銀髪の少女がお姉ちゃんと呼んだのは、明らかに十歳程度に見える女の子であった。


 巨大不明生物襲来の報告に魔王城のバルコニーに跳び出したマナは、そこで目にしたものに唖然となった。 そこにいたのは、八十メートルはあろかというでっかい図体のイグアナと恐竜を足して二で割ったような生物だ。

 「……え~~と?……マグロ食ってる方?」

 マナの後ろに立つラティアは、「はい、マグロ食ってる方です」と当然の事のように言ってみせた。 確かに巨大不明生物という呼称も間違いではないが、普通は荒ぶる神の化身の方を示す名前であろうと、どこか釈然としない気持ちになる魔王様だ。

 すでに市民の避難は完了しているのでその点は安心しているが、気のせいかマグロ食ってる奴は極力建築物を破壊するのを避けているかのような動きを見せているように思えた。

 「……ここは私にお任せを……」

 直後に青いローブの女性が自分の真横に現れたのに、「どわっ!? え、エレナ?」と驚くマナ。 ”負の力を操る者”の彼女であればいきなりバルコニーに転移出来るのは知識ではあっても、やはりびっくりはしてしまうものである。

 「……さあ、いでよ! 異界に存在せし伝説の巨人っ!!」

 エレナが右手を掲げて叫んだ次の瞬間に、マグロ食ってる奴の前方に巨大な光の魔法陣が出現したのに、警戒の色を浮かべて立ちどまった。 その眼前で光はやがてヒトの形を取り始め、そして銀色の巨人の姿を現した。

 「あいぇぇえええっ!!? ネク〇ス!? じゃなくてノ〇!? 〇アなんでぇぇえええええっ!!!?」

 実際予想外の状況にパニックになる魔王と、まるで日常の光景という風に状況を見守っているメイドさんの前で、魔術師は「行きなさい!」と指示を出す。

 巨人はそれに応えるかのように頷いた後に、勢いよく地を蹴ってマグロ食ってる奴へ駆け出した。 体長が数倍はあるマグロ食ってる奴に対して怯んでる様子もない。

 巨人の右腕が赤く発光し、その腕で繰り出したパンチはあっさりと数倍の巨体を弾き飛ばす。 そして弾き飛ばされたマグロ食ってる奴はそのまま青空に輝く一条の星となったのであった……。

 「……ナンデヤネン……」

 あまりの非常識な光景に、思わずオーサカ・ワードになってしまうマナであった。

 「……あ! そういえば……」

 不意にラティアがさも大事な事を思い出したかのように手を叩いた。

 「テレビで視たのですが、某アイドルグループが某蒲田くんのデザイン元のラブカを生きたまま捕獲するという快挙を成し遂げたらしいですわ」

 従者の言葉の意味を理解するのに魔王が要した時間はジャスト十五秒だった。

 「そんなんどーでもいいでわぁぁぁああああああっっっ!!!!!!」



 とある民家の瓦屋根の上に青い髪の少女が立っていた、見た目の年齢はマナと同じくらいであるが、その胸部の大きさは実際彼女より遥かに大きい。

 彼女は周囲を見渡し、無関係な一般市民の被害が最小限度なのに安心した後に、遠くに見える魔王城を見据える。

 「やはりマグロ食ってるようなのじゃダメねぇ……まあ、次ね?」

 そして「くっくっくっく……」と実際不気味な笑いを浮かべ、直後のその姿を消した……。

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