黒い噂
「略奪愛」としていますがあの用語をどうしても使いたくなかったのです。
原田は噂にとても敏感だ。
男女の噂問わず、いろいろな噂にアンテナを張っている。
噂の真贋はともかく、こういう噂を拾ってくる能力には本当に感服する。
「黒い噂? 例えば?」
「その転校生は相当なイケメンだそうだ、顔までは見てなかったから実際どうかは知らないが」
「それだけが黒い噂なのか?」
「そうじゃない、その転校生は転校する前の高校じゃ略奪愛の達人と言われていたそうだ」
あくまで噂だ……
「特に彼女がいる男子の間でこの噂が有名になってるんだ、俺は彼女がいないから関係ないが水川に関しては気を付けたほうがいいかもしれないな」
「あくまで噂だろ? まるで歓迎されてないじゃないか」
「そうだよ! もしかしたらその転校生、いい子なのかもしれないよ?」
レイチェルちゃんは本当に優しい。俺にはヤンデレだけど。
「まあまあ、所詮噂だからな。事実じゃなくたって仕方ないところはあるぞ」
「確かに俺としても単なる噂であってほしい、レイチェルちゃんだって人の子だし略奪される可能性がないとも言えない」
「私がせいちゃん以外の男になびくと思う? 私とせいちゃんの15年以上の付き合いはその程度のものなのかしら?」
「冗談だよ、だが万が一ってこともあるだろ?」
「その万が一は絶対ないから安心しなさい? 何なら転校生の前で思い切りいちゃつく?」
「いつもいちゃついてるようなものだろ、朝から一緒に登校してる時点で」
それで俺とレイチェルちゃんの仲は周知のものになったようなものだ。
自惚れではないが美男美女カップルとしても有名になり、先生の間でも知らぬ者はいない。
「俺もこの噂が心配になるような彼女がほしいよ、水川がうらやましいぜ……」
「原田にも彼女ができるといいとは思ってる、だが生憎俺には女友達なんていないぞ?」
「私は?」
「レイチェルちゃんは女友達という域を超えて恋人だろ?」
「……あっ、もう30分も経っているのか……長々とごめんな、水川もレイチェルさんといちゃつきたいだろ?」
原田の言葉通り、確かに彼と話してから30分が経過していた。
高校から2人の家までそう遠くないとはいえ、下校時間なのに長居してもよくない。
……いちゃつきたいのは事実だがいつでもというわけではない。
「もう帰ろうよー、明日も早いし英気を養わないと!」
「そうだな」
30分話し込んでもまだ午前中だ。
今日のこの会話がいわば「フラグ」とならなければよかったのだが……
こちらの部分は3月31日に執筆しております。