年貢の納め時
「運命」と「それから」の間で時間があまりにも飛びすぎていたので、その間を補完する話を1話だけ追加することにしました。
一部Twitterでいただいた「運命」のコミカライズの要素を含んでいます。
「せいちゃん……せいちゃん……」
掴んだせいちゃんの手がどんどん冷たくなっていくのを感じる。
せいちゃんは目を開かない。
無理もない。ほとんど急所を刺されている。あまりにも痛々しい光景だ。
そして、そのせいちゃんを刺した張本人が。
「……ということだ、もう水川は直に死ぬ。ということはレイチェルは俺を好きになるしかない。成績第2位でお嬢様の良識を持ってるならそれぐらいわかるはずだろ?」
せいちゃんを刺したアイツは気持ち悪い顔をして私に詰め寄る。
「それに水川も自分が死んだら自分を忘れろと言っている、ならもう、俺を好きになるべきだ。俺は水川という悪魔を殺した。むしろレイチェルは俺を感謝すべきだ!」
「……ふざけてんじゃないわよ!! もう本当に許さない!! これでせいちゃんが死んだら、私はどんなことをしてでもあなたを……!!」
私はついに怒りを自分でも抑えられなくなってしまった。もはや私は高貴な蝶から、雌の野獣に成り下がってしまったのかもしれない。
「せいちゃんは私の大切な人よ!! それをあなたは殺した!! それだけでも死を以て償うべきよ!!」
「レイチェルさん、落ち着いてください! それに佐村さんもまさか本当に水川さんを刺すとは……! その罪の重さ、わかっているんですか!?」
「悪魔を殺すのは罪じゃないよなぁ? むしろ称えられるべきだよなぁ? 17年もの間お姫様を縛り付けた悪魔を殺した勇者としてなぁ!」
もうアイツは人の話を聞いていない。"悪魔を殺した勇者"になったと思い込んで自分に酔っている。
しかし、そんなアイツにも年貢の納め時が来たようだ。
4人ぐらいの重装備の警察官が次々に入ってきて、アイツを取り押さえる。
「そこの女子高校生に詰め寄っている男子高校生! 殺人もしくは殺人未遂の現行犯で逮捕する!」
「殺人!? 俺は殺人なんかしてない!! 俺は悪魔を殺してレイチェルを救っただけで、逮捕されるようなことは……!」
私はアイツがせいちゃんを殺すみたいなことを言った時点で「男子高校生が同級生を殺そうとしている」と通報していたのだが、通報してから5分で到着したようだ。
アイツに手錠をかけ、数人がかりでアイツを引っ張っていく。武器はせいちゃんに刺さったままでアイツの手に武器はないのだが、逮捕されまいと暴れている。
それと同時に、救急隊員もやってきた。
せいちゃんに刺さっているナイフを抜いた上で担架に乗せ、大急ぎで教室を後にする。私と北村先生も続く。
「これ、北村先生が……?」
「ええ、水川さんが刺された時点で通報しておいたんですよ。幸いここは病院が近いですからすぐ来れたんだと思いますよ」
「あ、ありがとうございます……!」
私と北村先生も救急車に乗り込む。救急隊員がなんとかせいちゃんの命を繋ごうと頑張っている。
病院に到着すると、せいちゃんはすぐに集中治療室に入り、私と北村先生は外でせいちゃんの無事を祈るしかできなかった。
お願い……せいちゃん、生きてて!
私1人だけ置いて、死なないで……!!




