運命
「レイチェル……!」
佐村はレイチェルちゃんを見る。だが、俺は佐村を突っ切るタイミングを伺えないでいた。
「佐村さん……こんなことをしてレイチェルさんがあなたのことを好きになるとでも?」
「ちっ! 先生までそういうことを言うのか! 水川はな、悪魔なんだよ! 俺はそれを倒そうとしているだけだ!」
「はっきり言ってあげる……あなたの方が悪魔よ! せいちゃんを殺したら、フィアンクス・ホールディングス社の総力を挙げてあなたを潰すわ!」
レイチェルちゃんはいよいよ怒りを爆発させた。この場には俺と佐村、レイチェルちゃん、北村先生しかいない。存分に怒りを爆発させられるのだろう。
「レイチェル! 目を覚ませ! お前は水川にたぶらかされてるだけだ! 今俺が水川を殺してやる、そうすればお前はすぐに俺を好きになるはずだ!!」
「……せいちゃん! こいつ人の話聞いてないよ! 今警察を呼ぶから、すぐにこいつはせいちゃんを殺そうとした罪で捕まるよ!」
早く佐村を突っ切って、レイチェルちゃんの元に行く。それだけができれば後は佐村から逃げるだけだ。
ところが。
「おっ……おああああああああああああああああああああ!!」
佐村が突然叫び出し、ナイフを突き立てて俺に突進してくる。
佐村の突然の叫びに俺は一瞬怯んでしまう。
……その一瞬の怯みが、明暗を分けてしまった。
ナイフは、まるでそこに吸い込まれるように俺の胸を突き刺した。
「がっ!! ぐあぁ……」
その刹那的、そして暴力的な痛みが襲う。
「せいちゃん!!」
レイチェルちゃんの叫びもむなしく、俺はその場にへたり込んでしまった。
「あーっはっはっはっは!! これで直に水川は死ぬ!! レイチェルも水川というしがらみから解放されて俺のことを好きになる!! ハッピーエンドだ!!」
佐村の中では俺が死んだら、レイチェルちゃんが佐村のことを好きになってハッピーエンドという算段なのだろう。
一方の俺は、バッドエンドどころかデッドエンドまっしぐらだ。
佐村は狂ったような笑いを上げる。
レイチェルちゃんが1人で俺のもとにやってくる。
「せいちゃん!! 大丈夫!?」
「ああ……俺は……大丈夫だ……」
「ほとんど心臓じゃない……このままじゃせいちゃん死んじゃうよ!!」
「レイ……チェルちゃん……ごめんな……こんなことでレイチェルちゃんの……運命を翻弄して……」
「翻弄されたつもりはないよ! むしろせいちゃんに翻弄されるなら本望だよ!」
意識は徐々に遠のいていく。レイチェルちゃんも徐々に霞んでいく。
「大丈夫……私が助けるよ! だからせいちゃんは話さないで! 血が出ちゃうよ!」
「もし……俺が……死んだら……」
俺はもし自分が死んだときにレイチェルちゃんにしてほしいことを話す。
「その……時は……俺のことは忘れろ……」
「何を言ってるの!? せいちゃんが死んでも私はせいちゃんのことを想い続ける、誰とも付き合わないよ!」
「俺に……構わず……レイチェルちゃんだけでも……しあ……わせに……」
ここで俺は限界を迎え、意識が途切れた。
人が死ぬ時というのは、まさにこういう感覚なのだろうか。
17年という短い生涯だったが、俺はレイチェルちゃんという恋人と共に歩めて、幸せだった。
「せいちゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!」
ついに刺されてしまった水川さんの運命やいかに!?




